13.突然の二人きり。
「え? 何で突然?!」
帰り着いて玄関の扉を開けると、旅行にでも行きそうな大きな鞄を手に、両親揃って家を出ようとしていた。
「ママのお友達の家族に不幸があったらしくて、ずっと楽しみにしてた温泉に行けなくなっちゃったんだって。格安だったからキャンセルしても、お金戻ってこないらしくて、もったいなからって譲ってもらったのよ」
「そんなぁ、私とお姉ちゃんは留守番って事?」
納得いかないよ!
私達は学校で大人達だけ楽しい旅行なんて。
「いいじゃない、仲良し姉妹みずいらず、もう子供じゃないんだから二泊位留守番出来るでしょ?」
「そりゃできなくはないけど……」
「じゃあ、頼んだわよ。そうそう、康太くんち、またご両親出張中だから、お夕飯くらい面倒みてあげて。じゃあね!」
嬉しそうにパパと腕を組んで玄関を出ていくママ達の後ろ姿を茫然と見送る。
「はぁ……最悪」
パパとママの姿が消えた途端、お姉ちゃんから、どっかで様子を見てたんじゃないかって思うようなタイミングで電話が鳴った。
「はい」
『あ、柚子? パパとママ、旅行に出かけるって聞いた?』
「あぁ、お姉ちゃんか。うん、今聞かされて、もう出かけたよ」
『じゃあさ、あたしは彼氏んち泊まるから、家の事よろしくね』
耳を疑う一言に固まった。
え? その前にお姉ちゃん彼氏いたの??
「ちょっと待って、どう言う事?」
『どう言う事って、そう言う事! あんたもいい機会だし、もう少し康太と仲良くしたら? 毎晩のように遊びに来てるからって誰も家に居ないのは初めてでしょ? そろそろ幼馴染脱出したいんじゃないの?』
「そ、そんな! 私は別に康太なんか……」
『ハイハイ。ま、とにかくそう言う事だから。康太には女の子一人で留守番は心配だから、今日はうちに泊まってあげてって電話しといてあげたわよ』
……はい??
「待って待って?! 話についていけない……」
そう携帯に縋り付くように話していると『ピンポン』と呼び鈴がなる。
『おやおや? 早速康太来たんじゃない? さて、お邪魔虫は退散します〜』
そう言ってブツっと通話を切られてしまった。
ヤバイ……
さっきの変な空気のまんまウチにお泊まりなんて……
「柚子? 居んだろ? ドア開けろよ」
コンコンと玄関のドアをノックする康太の声が聞こえる。
「ちょっと待って! わたしは一人でも大丈夫だから」
もう、どうしたらいいのよ?!
「俺もそう思うけど、お前の姉ちゃんに頼まれたし」
「で、でも留守中に男の人を家にあげるなんて、パパとママにも怒られちゃうかも……」
「今更何言ってんだよ? 言っとくけどな、お前の父さんと母さんからもウチにいていいから柚子の事よろしくねって連絡きたぞ?」
あぁ、もう言い訳が思いつかない……
私は諦めて恐る恐るドアを開ける。
縮こまっている私を見て、康太がクスッと笑った。
「別に心配すんな。そういうんじゃないだろ、俺たち。小学校の頃みたく、テレビ見たりゲームやったり楽しく過ごそうぜ」
大きな手をわたしの頭にポンと置く。
「……うん」
そうは言ったって康太は何とも思ってなくても、私が意識しちゃうんだよ……
そんな風に簡単に私に触れるから……




