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11.難解な康太の気持ち。

「ね、今日の柚子、めっちゃ可愛いから、康太に見てもらおうよ!」

 突然の優の提案。

「え? いいよっ!」

 どんな顔して会ったらいいのよ。

 鏡の中の自分にすらまだ戸惑っているのに……


 優は突然窓を開ける。

「こーた! いるんでしょ? ちょっとこっち来てよ!」

「やだ! やめてよ優!!」

 窓から顔を出してる優を必死で止める。


「何の用だよ? うるせーな!」

 目の前の部屋の窓がガラッと開いて康太が顔をだした。


「一緒に買い物行かない? テストも終わって暇してるでしょ?」

「あのな、お前らと違ってこっちは午前中部活でがっつり運動したから眠いんだよ!」

 康太はわざとらしく大欠伸をかまして窓を閉めようと手をかける。


「なーんだ。せっかく生まれ変わった柚子を大公開しようと思ってたのに」

「何? 生まれ変わったって」

 私はどうしたらいいのか分からなくて、死角になっている場所でじっと二人の会話に耳を傾けていた。


「教えてほしい?」

「別に」

「あっそ! 柚子、可愛くなったのになぁ!」

 そう言い放った優は康太の返しを待たずにあっさりと窓を閉めた。


 そのあとわたしの部屋の窓をコツコツと叩いてくる音が聞こえるものの、私が開けようと立ち上がると優が怖い顔をして止めてくる。

「柚子。いつも一緒に居るのも微笑ましくていいけど、たまには引いてみるのも大事なんよ?」

「引くって言ったって康太は私の事幼馴染としか見てないんだから……」

「なんとなくなんだけど、康太のさっきの反応……わたしは二人が両想いになる可能性、なくは無い気もしてきたんだけどな」


『あの反応……』って会話聞いている限りじゃ、いつもの康太となんら変わりないと思うけど?

 結局『なくは無い』って、その表現、限りなく『無い』に近くない?

 それより、部活の後にこんな事で康太呼び出したらホント逆ギレされそうだし、こっち来ないでよかったよ。

 でも、ほんの少しだけ、見てもらいたかったかも……


「さ、気を取り直して出かけよ!」

 肩を落としていた私に気がついたのか、優がバシッと私の背中を叩く。

「そうだね」


 せっかく可愛くしてもらったのに外に出ないのはもったいないし。

 玄関でワンピースに似合う靴を探していると、優が『外で待ってるね』と一足先に出て行った。



「あれ? なに、待ち伏せ?」

「ちげーよ! あんな中途半端な所で窓閉められたら、気になって寝れねーだろが!」

「気になって……ねぇ。康太、これから予定ある?」

「予定あったらここにいねーよ」


 (優が外で誰かと話してる……?)


 選んだ靴を履き終えた時だった。

「ごめん柚子。ちょっとお姉ちゃんに頼まれてた用事思い出しちゃったから、康太に一緒に行ってもらって!!」

 突然ドアが開いたと思ったら逃げるように消えて行く。


「え? なに? どゆこと??」

 置き去りにされた私は、呆然とその場に立ち尽くした。


「……ったく、優のやつ何企んでんだ?」

 そうブツブツ呟く声が聞こえて再び玄関のドアが勢いよく開いた。


「こ、康太?」

「……柚子」


 康太は私をガッツリと見たまま無表情で固まっていた。


 その反応……どっち?

 いいの? 悪いの?


 解釈が難解すぎるっ!




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