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10.可愛くなるのに努力は必要!

「へー、その王子とまた逢えたんだ」

 今日は日曜日。

 優がファッション誌を大量に持って私の家に遊びにきた。


「うん。ホント泳いでる様もかっこ良くってさぁ……」

「それでセシリアちゃんは顔を赤くしちゃったのね?」

 片手で頬杖つきながら面白そうに私を見る優。


「女の子達にもキャーキャーいわれててさぁ。何者なんだろ、王子って」

「平松に名前呼ばれてたでしょ? 覚えてないの?」

 記憶の糸をゆっくりと辿り寄せてハッと気づく。


「東海林……。確か、東海林って言ってた」

「え? まさか、あの東海林先輩の弟が王子なの?! マジで?!」

 急に大声になった優の声に驚いて固まる私。


「……何、知ってるの? ってか東海林先輩の弟なの??」

 でもわかる気もする。

 あんな育ちの良さそうなイケメン、そうそう身近に生息してるわけないもの。

 お金持ちで家柄良くて、美人でなんでもできる東海林先輩の弟さんなら頷けるわ。


「そうだよー。学校でも格が違ういい男って、女子の間じゃかなり有名だよ? コレだから柚子は……幼馴染一筋なのもいいけど、もっとカッコいいイケメンだってうちの学校には一応いるんだから」

「別に、興味ないもん」



『ふぅ』とため息をついて優はファッション誌の表紙をバンバンと叩く。


「康太が東海林先輩に取られちゃっても、ワンチャン王子とだって仲良しになれるかもよ? 拾えるチャンスは全て拾っとけってんだ! とにかく女子力をアップすべし!」

「不吉な事言わないでよ……。王子だって私の事絶対女子だっていう目じゃ見てないもん」

 死んだ猫ですからね、王子にとって私は。


「だーかーらー、これからたっぷり勉強するんでしょ? とりあえず第一段階として、本命の康太とプール行くまでに、もう少し女らしさを見せられるようにしなきゃだよ」

「本命って……私には康太以外考えられないし。……努力しなきゃいけない事は、分かってるわよ……」

 あぁ、気が乗らないなぁ。

 女の子らしくしたところでこの胸じゃなぁ。


 今までだって、実は密かに色々挑戦したこともあった。

 でも、服は可愛いと思っても貧乳が着るととてつもなく貧相になるし、どれだけ顔をメイクでいじったところで下を見れば背伸びした小学生かい?って自分で突っ込みたくなっちゃうし。

 ブラである程度盛れたとしても、全く谷間も作れないし……どんなに頑張ったって限界があるわ。


「大して変わんないと思うよ……?」

 そりゃ本音は変われるもんなら変わりたいよ?

 けどそう簡単に行かないのは分かってる。


 土台がまずマイナスからのスタートなんだから……


「いいから、とりあえず今日は私に任しといてよ!」

 優が生き生きとした顔で私を見た。

(ま、たまには優のおもちゃになってやるのもいいか)

 そんな諦めの気持ちで私を『ハイハイ』と頷いた。


 ◇◆◇◆


「やー! 可愛くなったじゃん!!」

 優が私の顔の前にハイっと鏡を向けた。


「え……? これ、私?!」

 予想以上の出来に自分の顔でも見惚れてしまう。


「あたしさ、ずっと思ってたんだよね。柚子はさ、元々肌は綺麗だし、ちょっと目元とか口元ハッキリさせるだけでだいぶ変わるんじゃないかなってさー」

 うふふと満足そうに優が笑った。


「そういえば去年クリスマスとかお正月も、私結構ゴテゴテにメイクしてたけど、今日はホント自然……」

 馬鹿みたいに自分の顔から目が離せない。


「ヘアメイクもさ、いつも後ろでテキトーに縛ってんでしょ? ちゃんとアイロンで寝癖直して下すだけでお嬢じゃん?」

『だって面倒なんだもん……』そう言いかけたけどやめといた。

 卑屈になってた日々も、結局自分の怠慢さが影響してたって身に染みたからだ。


「ちょっとの事だし、学校にさすがにアイメイクは厳しいかもだけど、眉整えたり、ビューラーでまつげ上げたりするだけっだって全然違うと思うよ?」

「私に出来るかな……」

 知識も技術もまともな道具すら無いのに維持していけるのか自信がない。


「そのビューラー使わないからあげるよ。アイロンも私今使ってないからしばらく貸してあげる。あと、色付きリップも康太がチューしたくなっちゃうようなプルプルの柚子に似合いそうなやつ、これから買いに行こう!」

「ち、ちゅー?! そんな私達まだ……」

「バカね、そこは大袈裟に言っただけだよ」

 呆れ顔で優が笑いを堪えている。


 なんか、ちょっとの事なのに別人になったみたいで……物凄くテンション上がる!


「それとー、この服! 可愛いでしょ!」

 ひらりと白いワンピースが私の目の前に舞う。


「これ気に入って買ったんだけどサイズ小さくて。ダイエットして着ようって決意してたんだけど……結局誘惑に負けてあたしには無理だって分かったから、よかったら柚子、着てくれない?」

 優がパチっとウインクした。


 早速着てみると胸元に大きめのレースがあしらわれていて、びっくりするくらい自然に貧乳がごまかせている。

 変なダボつきもなくて……

「なんか……お姫様みたい……」

「自分で言うかっ!」


 嬉しくて嬉しくて……

 何度も優の前でスカートの裾をひらひらさせながらくるりと回って見せた。


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