プロローグ
ロボットものの近未来戦記が書きたかったんです。。
あるとき、世界でいざこざが起きた。
そのいざこざの細部まで知る者はもう今となってはいないが、それによって全世界は二つの派に分かれた。
それぞれをここでは地底派と空挺派として話を進めよう。
彼らの意見の食い違いはやがて議論だけでは解決できないようになってきた。
そうして、いとも容易く、戦争は始まった。
その戦争の名をアトロポス戦争という。俗に、聖戦アトロポスと名づけられる、大規模な戦争である。
世界を二分した戦いなど、これまでに発生したことはなかった。
つまり異常極まりない事態であることに、なんの異論もつけられない。
アトロポス聖戦の際、活躍した戦闘機。その名をグラオス。――名に意味はない。ただそれを発明した者の名がつけられているというだけだ。
グラオスは地底軍をぐちゃぐちゃに壊滅させ、空挺軍の勝利を確実なものとさせた。
一つ、また一つと地底軍の要地は攻略されてゆく。
やがて残った都市は、地表には確認できなくなった。要害は全て空挺軍の拠点となった。
残るべきはそう、地下である。
地底軍最大にして最後の砦、アンダーポリスは、空挺軍には認知できない場所にひっそりと存在していた。今、地底人の全人口はそこに集中している。
だが、もはや地底軍になす術はなかった。
せめて、空挺軍が操るあのグラオスさえあれば――
人々は願った。空挺軍と対等にわたりあえるようになれば、あるいは……
元々、好戦的な彼らは戦争の勝利を願ってやまなかった。
そのため、アンダーポリスでは新型グラオスの開発が急ピッチで行われていた。科学の髄をこらせば、地下世界を作り上げた彼らに不可能はないように思えた。
願いはついに、現実のものとなった。
空挺派の人間であるゴンヴェリンが空挺軍を裏切り、グラオスの製造図面を地底王に捧げたのだった。
新型グラオスはとうとう地底人のものとなった。
ただあまりにも改良を施しすぎたためか、とてもではないが、人間に操縦できる代物ではなかった。
簡単に音速を超え、自ら発射した光線を追い抜いてしまう。
科学者や技術者達は新型グラオスを『失敗作』とし、旧型グラオスをまた新たに作り直した。
それはようやく、人間が操れる戦闘機となった。
――時機到来す。
王は都市にふれをまわし、全国民へ募兵の意思を通達した。
――アンダーポリスは『乗り手』を求めている。
救国の英傑らよ、時は満ちたり。
集えや、集え!
我と思わんものは――!!
……聖戦の幕開けである。