第6話 白き翼の来訪者
リリイの特訓の行方は…?
特訓が始まってから3日が経過した。魔術、体力面での成長はあるが「サタナの秘術」、この力についての進展はない。
サナティエルとの魔術授業は実践編へと移り、俺も念願の魔術が使えるようになった!
飛行魔術をはじめ、攻撃魔術も少しずつ覚えてきた。
今はネベルとの空中を含む鬼ごっこを終え、朝食を摂っている。
悪魔の食事は面白い。浮遊魔術を使って食べ物をふよふよ浮かせて、それをスプーンやらフォークで捉えて口に運ぶ。
俺はまだ浮遊魔術は習ってないから出来ないが。
「どう?この3日間の特訓は?」
唐突にリリンが尋ねてくる。
「戦闘訓練中にリリンの胸が揺れないのが気にな
る」
そう、揺れないのだ。
「魔術で固定してるのよ。揺れると痛いし。何?
揺らして欲しいの?」
「その方向で頼む」
初めて会った日に見たあの胸…揺れないなんて…勿体ない!
「相棒!俺も同じ意見だぜ!」
ネベルが声高に同調する。
「誰が相棒だ!」
「リリイさんが…ネベルさんの影響で変態さん
に…」
「サナティエル、変態が感染るわ。聞いちゃ
ダメよ」
そう言ってメフィストさんがサナティエルの耳を塞ぐ。
失礼な!俺をネベルと同類にしてもらっては困る。
あの変態、昨日は「吸血鬼は夜行性だ」とかなんとか抜かして俺のベッドに入って来た。絶対に頭がおかしい。
「リリイ、今日から能力覚醒訓練にメフィスト参戦
よ。今まで以上に苦しいだろうけど頑張って」
「あっはい…え?」
ー能力覚醒訓練ー
リリンから貰った、魔剣アウローラ。この剣は魔術を斬り、斬った魔術を吸収することが出来る。
その特性を生かし、特訓内容はバフォメットさんが打ち出した魔術攻撃を斬りながら進むという風に変わった。
「うぉぉぉぉぉぉぉぉ!死ぬ!死ぬ!死ぬぅ!」
大量の魔力の塊を全て斬るなんて剣術初心者の俺には不可能だ。斬り損ねた攻撃は俺の体に傷を残していく。
メフィストさんが回復魔術で傷を治してくれるが…
この訓練において止まることは許されない。ひたすら攻撃に向かって進まなければならない。
痛みに耐えながら進む。怖い!つらい…!叫んで己を奮い起たせるしかない。
俺に宿る力よ…頼むから早く目覚めてくれ…宿主の心が折れそうだぞ!?
5m程進んだ所で休憩になった。俺は地面へと倒れ込む。
会話で休憩時間を伸ばそうと試みる。
「バフォメットさんって歴代魔王に仕えてきたん
ですよね?『サタナの秘術』ってどんな能力なん
ですか?」
そもそもこれを知らなきゃこの特訓意味ない気がするが…
「『サタナの秘術』とは、初代魔王サタナ様が編み
出し、様々な理由で世に公表してこなかった力で
す」
「全容までは分かりませんが、4種類程、拝見した
ことがございます」
成る程。何種類もあるのか。その4種類について聞きたいが…それよりもずっと気になっていた事がある!
「メフィストさんにも質問良いですか?」
「?」
「メフィストさんのその服装って…」
悪魔が着る服は翼を広げる邪魔にならないように翼の部分が開いている。
メフィストさんのミニスカメイド服は背中が「ガバッ」っと開いていて…露出面積が広くて…どこに目を向ければ良いのやら…
俺達が生活している領主の館にもメイド服の使用人はたくさんいるが、こんなに大胆じゃない。
「これはお嬢様の趣味です」
若干呆れ気味に言う。
リリンの趣味だったのか!良い趣味だぜ!
そろそろ訓練が再開する、と思った時、
「メフィスト…気付きましたか?」
「ええ、彼方も気付いた様です」
「えっ?なんです…うぉぉぉ!」
疑問を口にしようとした瞬間、バフォメットさんに抱えられ、そのまま空へと運ばれる。
「リリイ様、天使でございます」
天使!?
授業で聞いたぞ!創聖神の下僕で悪魔の敵…
その天使がなぜ魔界に!?
見てみると、森の中を高速移動する影が3つ見える。
「取り敢えず追いましょう。メフィストはサポートを
お願いします」
「了解」
そう言うと、メフィストさんは何処からかスナイパーライフルを取り出して射撃態勢に入る。
「???」
急に出てきた近代兵器に驚きが止まらない。取り敢えず追うだけじゃ…どう見ても暗殺する気なんですけど!?
「行きますぞ!」
俺を脇に抱えたまま、バフォメットさんは天使を追う。
おいおい…急展開に頭と体が追いつかない…!
次回 天使との戦闘!
今回は悪魔の生活についてちょろっと出してみました。