異世界転生志願者は満員で、長蛇の列です。 人手が足りません。 つきましては転生候補者から、人材を獲得しようと思います。
異世界転生候補者が神様に懇願された。
人手が足りないので運営側に就いて欲しいと。
頼られることに飢えていた主人公は即決。
異世界転生しても過去の二の舞があり得た。
神様の配下になる機会なんてそうそう無い。
得がたい主君を得た主人公は奮起する。
『女神の執事』という職業を発現させた。
神様は『女神様』だった。
そして、背丈の低い童女のごとき『姫君』だ。
保護欲を掻き立てられた主人公。
御守りするべく奮闘する執事物語。
その一方で、甘やかされて腑抜けた女神様。
立身出世の思いは何処に行ったのか。
スローライフに落ちついた駄女神は語る。
私の未来は、どうなるのだろうと。
激甘執事のお世話から抜け出せるかの思案に暮れていたのだった。
かみつた
神様は伝えたい────。
異世界転生志願者は満員で、長蛇の列です。
人手が足りません。
つきましては転生候補者から、人材を獲得しようと思います。
神様世界は超過酷です。
いつ頃から蔓延したかは把握が出来ては居ませんが。
各世界から、異世界転生志願者が増えました。
無念極まる魂の救済策として、安寧と希望の心遣いとして『異世界転生計画』が提案されたのです。
初めの頃は、疎らに志願者が来るという寂しい光景でした。
地球世界の異世界転生志願者に、異世界転生世界から故郷に転移する『自在転移』という権能を与えたのが失敗だったと思います。
その権能の対象者が日本人でした。
瞬く間に、日本に『異世界転生物語』が流行しました。
転移した対象者があれこれ自慢したそうです。
死んだ先には、楽園があったとか尾ヒレが付いて拡散。
最初こそはホラ話で済まされていたようですが。
実際に行動を起こした自殺志願者が増え、現在に至るわけです。
私たちは、自殺や他殺とかで選別はしません。
魂の仕分けする時点で、おおよその転生先が選定されます。
異世界転生志願者が望む世界観でなければ、長続きしないと検証されてきたからです。
のんびりな方には、スローライフを。
激しい方には、争乱の世界を。
欲深な方には、下剋上を望める世界を。
ある程度の趣旨に沿った世界を提供してはいます。
各地に志願者を拡散させるために、神様職安所が出来ました。
神様による異世界転生志願者の案内所です。
人間世界の職業案内所に当たります。
転生志願者の方には、個室での個別対応しているので、仕分け業務だとはバレていません。
大変なことに年々と異世界転生志願者が増加して、うなぎ登りするという恐ろしい現象になりました。
創造級の神様たちは、毎日あくせくと世界創造に励み。
精霊級の神様たちは、世界に原始属性を付着させます。
文明級の神様たちは、世界に文化の種を植えつけます。
生命級の神様たちは、世界に生物の放牧を始めます。
信仰級の神様たちは、世界に理と派閥を教えます。
転生級の神様たちは、世界に転生志願者を入植させます。
管理級の神様たちは、世界の運営管理を委任されます。
この7日周期で、世界は生産されているのです。
『月火水金土日』という設定は、ここから来ていますね。
『日が休養日』という設定なのですが。
委任される最下級の神様は日曜日でも出勤です。
過酷な労働環境で揉まれて、技能を開花させます。
この管理教育を経て、神様の資質を鍛える習わしですね。
タリン───。
呼ばれたようなので、お仕事をしてきますね。
私は転生級の神様です。
名前、性別、年齢などは禁則事項です。
親しくなれる機会がありましたら、その時に────。
突然ですが、貴方は死にました。
不幸なことに、貴方は倒れて───────。
この辺りはテンプレなので割愛します。
説明しないとわからない方にはそうしますが。
貴方は、地球の日本人ですよね?
これから私が語る先も見えているかと思います。
なので、貴方がどうしたいかを即刻聞き出します。
貴方が求める権能は何ですか?
魔物を屠れる破壊力である『神器』ですか?
他者を超越した無比なる『権能』ですか?
本来なら、貴方が選べる選択肢は2つです。
ですが、貴方には特別に第3の選択肢を与えます。
神様世界側に就いて、配属してください!
懇願するかのように、神様がお願いしてきた。
容姿は真っ白な輪郭でぼやけて見えないが、涙ぐましい。
異世界転生したくて死んだつもりは無い。
生きてた世界に疲れて自殺したようなものだ。
生き甲斐や夢はあったが、どれも両手から零れて行った。
無駄に過ごした日々と、無益に捧げた人生だ。
誰彼かに請われるのは感覚に新しい。
現在直面してるのは明確な分岐点だろう。
異世界転生しても、暮らしに馴染めるかは未知だ。
むしろ、再度孤独感に包まれる可能性は高い。
躊躇うことはない。
請われたということは、則ち…必要とされているのだ。
神様世界側の末端として生きてみるのは神命だろう。
「自分で良ければ、神様を支えます!」
何も知らない神様だけど、神様の力添えになるなら。
目的意識が希薄な自分が消える。
相手は神様である。
得難い主君と言えるだろう。
生まれは日本で、主君と呼べる対象は居なかった。
皇族に一定の感謝はあったが、君主とは呼べない。
日本の象徴という偶像的崇拝に近い。
親身になり誇れるかが、主君と謳い支えようと奮起させる方だ。
敬愛すべく、執事のようになり鍛える目標が出来た。
『即決されるとか思いませんでした。貴方は、ずいぶんと気前が良いひとなのですね』
「そうでしょうか。請われたのが私の担当される神様であったからこその結果なのでは?」
『懇願する神様に幻滅されたとか思いませんでしたか?』
「思いません。確かに困惑しましたが、神様への忠誠心が芽生えたことに驚いたくらいですよ」
『芽生えた?』
「ええ。こう、不意に自覚したような心持ちですね。不思議な感覚でしたが、神様を見ていると何故か落ちつきます」
(本来は転生者だったから、変異したのかしら。彼のステータスを開示…………っ。私専属で権能が発現しちゃったぁ~~!?)
彼が私を見て落ちつきます発言の理由。
『女神の執事』という固有職業が発現している。
一応は、私専属の権能だと思う。
他の女神にも付与するかは判らないから、慎重に。
彼が有能か見極めないとだし、権能での忠誠心補正な感じが。
他の女神にも配属された従者はいるけどね。
『女神の執事』かどうかは不明。
そもそも、このレア職業は話題が無い。
私も、今日初めて知ったくらいのレアケースだったりする。
そして、私専属という配属者は初めてなのだ。
人手が足りない領域に最優先で配属されるので、転生級の神様くらいだと従者にはならない。
なので、神様階級とは別の神様ステーテスが配属の従者数。
忠誠心で結ばれた配属者は、従属神として見なされる。
周知されてるのか、秘匿させなきゃいけないのか。
思いがけないハプニングで、私専属の配属者が出来た。
仮状態とは言え、主従関係となった。
彼は主君として忠誠心を捧げてくれるけど。
私はそれに応えてはいない。
私の姿見で幻滅される可能性がある。
妨害フィルターで、転生志願者からは見えない状態だからこそ。理知的な神様っぽく振る舞えているのである。
仮契約のままが安全策だとは思うけどね。
この状態だと、他の女神に惹かれて剥奪される可能性も捨てきれない。
神様世界は、階級社会の縦の構図。
仮契約状態での放置は、上位の神様への貢物と判断される。
上位の神様は、有能な配属者を持つ下位の神様を妬む。
そのような視線にさらされても、下位の神様は従者を慈しんでいる場面を散見する。
それほどまでに、貴重な対象なのだろう。
得難い人材なのは解る。
私が次の領域に進むための助成になるかも知れない。
転生級の神様だけど、私はその成り立てのようなものだ。
管理級の神様生活という下積み時代から解放されて、転生級の神様に昇格したばかり。
神様世界だと、社会人の成り立てのようなものかな。
『貴方は、私専属となることに憂いはありませんか?』
「私は神様から懇願されたその時から、神様を見初めています。二心するなどと、もっての他。忠誠の証をここに!」
彼は、自身の手首に噛みついて血を出させようとした。
けれども血は出てこない。
魂が象っただけの写し見なのだ。
精神体とでも言えばよいのか。
「主君に捧げる血判が────。ここは、物質世界ではないのですか?」
『貴方は、まだ魂だけの存在です。従者として制式に過程を経て律すれば、肉体の保持も可能になるでしょう』
「試験なのですか?」
『試験ではありませんね。型焼きのようなものです。貴方はその時に自分が望む容姿を心強く思い描いてください。魂に刻まれる肉体の記憶が烙印されますよ』
「ら…烙印……ですか?」
『人間の肉体は、魂に刻まれる記憶を補正して形成されます。遺伝子という設定で人間世界は信じているようですが。産まれる時に、赤子が思い描いていた形が原型です。烙印と呼ばれるだけあって、非常に熱い感覚が襲いますが、一過性のモノです。律すれば、涼し…という痛みです』
「ふふふふふっ。そうですか。それならば、その痛みこそ神様に捧げる忠誠の証としましょう!」
本気ですね、彼は。
擬物の忠誠心ではないのは明白です。
彼が儀式を終えた後に、私も本質を見せなくては。
幻滅される予感がしますが。
彼が見据えてる主君像は、背が高い、麗しき女王様のような女神様な感じでしょうか。
騎士のように、主君と仰ぎ見込まれてる感覚でしたし。
頼り無さげな本質は、女神には見えない風体でしょう。
理知的に振る舞えてきましたが、そろそろ限界です。
お仕事モードと割りきれば演じられますが。
ところどころボロが出てますからね。
終始、このモードのまま固定するのは疲れます。
型焼き───か。
気分的にはタコ焼きか、鯛焼きのようなモノか。
余計なことは考えずに、主君を立てるための容姿を思い描く。
騎士よりも執事だろうか。
戦う執事とは、バトラーなる呼ばれ方をする。
バトルから、バトラーなのかと短絡化したものだが。
格好いい前例は幾つか記憶にある。
騎士であり、執事でもある2つの融合は理想だった。
細身で背筋が伸びて礼儀正しくあり、屈強な心身。
神様が男性なら、後方で控え。
神様が女性なら、前方で御守りすればいい。
運ばれた先の天井を見上げる。
黒い板のようなモノが見えるが、鉄板焼きだなあれは。
あれが型焼き装置か。
下にも同じ鉄板が添えられている。
ここを通れというのか。
まさしく姿焼き────。
騎士と執事の理想像を抱き、自分は焼かれた。
ジュッ……っと、熱さが伝わる。
この痛みは、まさしく『愛』であり、証となった。
眼を固く瞑り、神様との拝謁を待ち望む。
次に見開くのは、神様と心に決めていた。
カツコツと、こちら足音が近付いてくる。
さわさわと、自分を撫でてきた。
こそばゆさはあれど、主君が嗜んでおられる。
ここはお気に召されるまま、存分に堪能されてください。
『眼を見開いてください。貴方が仕える主君の姿見です』
主君の姿見を見るために、眼を開いた。
其処には、麗しき姿をされた可憐な姫君がいた。
「神様は、女神様でしたか」
『幻滅したでしょう? 私は神様だけど、まだまだ若いので見目がチンチクリンとも言える童女。貴方が思い描いた理想像には、程遠いはずです。これでも私が貴方の主君になれますか?』
「自分の理想像は、きっと女神様の未来像なのでしょう。女神様を護る盾にすら覚束無い身の上ですが、この忠義は永遠に女神様に捧げます。私の姫君!」
彼は頑なに態度を変えないとゆう頑固者だった。
融通が利かないのはお互いさまだろう。
私は、彼に逃げ道を与えている。
彼に後悔が残らないように与えてはいるけど、逃すつもりはない。
これは女神である私への言い訳に過ぎない。
逃げてほしいけど、逃がすつもりがないという迷いだ。
『面白いね。私の本質を見た後でも、揺るがないとか。私の女神としての力は弱いわ。ヒヨコが殻を破ったばかりの雛。仮初の姿見は大人びられるけど、本質は子供のまま。大人になるには、資質を鍛え上げ、修養、研鑽という難関が付いて回る。苦労するし、させられるけど、それを含めても私と契約するの?』
「言ったはずですよ。自分は見初められたのだと、あの時、あの場所で。出逢えたことこそ、自分の神命だと」
『強情だなぁ。お互いに苦労すると知った上で交わす契約だよ。きっと、貴方は後悔する。選択肢がまだあったことにね』
「その言葉は御返しします。きっと姫君は、自分と契約されたことを幸せに感じられる日が来るのですよ」
『そうなればいいね────』
主従契約は、対象者への証。
何を捧げ、何を与えるモノなのか。
その誓いから何年かは過ぎた。
私は気ままに転生案内をしている。
特別に、何かが変わったということはない。
異世界転生志願者が来ることに、機械的に振り分けしている。
年に数回は、懇願してみるものも『当たり』は引けてない。
配属者になるという奇特な人材は、そうそう居ない。
渡来してくるのは、異世界転生志願者たちなのだ。
わざわざ自作自演の自殺による大胆な実践を経て、異世界転生志願者になりに来る行動力がある人種と言っても過言じゃない。
現地の若者の自殺率は向上している。
政治が不安定という主観より、現地の周囲環境に絶望した果てというなんともやりきれなさの顕れだった。
新天地で揺るぎない権能を携えて、未練を解消したいと願うのは解らなくはない。
神様世界にも、似たような範例はある。
神様稼業を見限って、異世界に降臨して『土着神』になる。
地球の神様は、その範例が多いメッカだったりするよ。
『土着神』になってる神様は、神様世界でのストライキを起こした派閥のようなものだ。
労働改善とか、組織的な見直しとかかな。
上位の神様たちが次々と降臨するものだから、地球担当の管理級の神様たちの心労はかなりキテる。
普通は、ひとつの担当区域に1人の管理級の神様が配置される。
でも、かなり上位の神様たちが集う区域は例外だ。
生まれて間もないヒヨコの神様で、元上位である神様たちを管理出来るはずも無いのだから。
管理が出来ないから、監視するのが関の山。
次々と、配置される。
荒波に揉まれるヒヨコたちの下積み時代は想像を絶する。
『土着神』に取り込まれて強制配属されたり、神様世界とのパイプ役という伝書鳩のような扱いをされたりと悲喜こもごも。
世知辛いね。
私も下積み時代は過酷だったよ。
地球の担当じゃなかったのは幸運だったかな。
神様世界を見限ってまで『土着神』として転生したのに。
その新天地で、更に派閥争いで戦争する『神様戦争』が酷い。
日本に伝わる『国津神』と『天津神』の戦いだね。
先に派閥を拡げてたのは『国津神』の神様たちだったけど、後追いで転生してきた『天津神』の神様たちが勝利した。
『土着神』界隈で、派閥によるしのぎ合いは白熱している。
神様世界にも、派閥はあるけど理知的なので顕在化は控えめ。
水面下でブイブイしてるのはお約束事項だね。
そんなやりとりの背景はあるけど、私に影響は無いと思う。
派閥に取り込まれる価値すらない現状なのである。
マイナー過ぎる神様は、名も無い神様なのだ。
転生級の神様な私だけど、肩書きとしての神様格はまだ無いね。
努力も修養も研鑽すらも遠退いている。
私の成長率はヘタれていた。
私専属の『女神の執事』は勤勉ではあったが。
彼は彼なりに懸命に努力してはいるが、結実に至るには程遠い。
私の専属なのである。
私からの補正力が低いので、彼への恩恵がさほど無い。
主君たる神様の努力が、配属者たちの恩恵として働く。
共生関係であり、共依存関係でもある。
彼のために私が努力する気持ちはあるよ。
私の目標が、次の神様階級の昇格にあるのだし。
だけど、ね。
この環境に馴れきると、どうにも府抜けてしまう。
『女神の執事』という職業。
端的に言って、私の身の回りの世話役だった。
私は残念な生活をしていても、彼が処理するのだ。
私の粗相を彼が効率よくお仕事する。
なので、私の体験から把握した効果は周知されたくない類い。
『女神の執事』という性質は、堕落だと。
駄女神システムとか、ないよこんなの。
手放すつもりがなくなるくらいの心地好さが絶妙だね。
私を想って忠義を尽くすほど、私は籠絡していく。
ダメな方に、まっしぐらだった。
こんな愉快な設定したのは、文明級の神様だろうか。
私は今日も殺伐とした神様職安所で、流れ来る異世界転生志願者を仕分けしていた。
いったい誰が『異世界転生』を発言したのだろう、と。
始めは、異世界転生ではなくて。
その世界の過去や未来が『異世界転移の定義』だったし。
異世界転生が定着して30余年にはなる。
でも、その流行の周期は遥か以前からあるのだろうと思った。
今回は、たまたまその周期に出会したんじゃないかな。
説明文章なので、お仕事モードを発動!
神様の年齢は果てしなく長い─────。
10億年くらいが、人間換算での1歳くらいですね。
私は幼いから、120億年くらいの神様歴です。
地球の生誕時間と釣り合ってないとか思ったことでしょう。
話の大本からして違うのです。
『地球』という異世界なのですから。
星の海と呼ばれる銀河の宇宙は、ただの背景ですね。
人間世界の設定は、管理級の神様の設定でその様に改竄されているだけです。
『地球』という世界は原初から存在しています。
その時代その時代の呼び方で、読み方が変遷しています。
ガイア、エリシュオン、エデン、ティア、テラなど余多の読み方はされていますが、全ては地球のことです。
時間旅行が出来るなら、各時代に訪れて見るとよいでしょう。
神様世界の運営側は、時間の流れが違うのです。
ゆったりしているのは、現地時間に合わせたら、運営管理が機能しないという側面もあります。
現地時間から見ると、瞬く間に時代が変遷してるかのように感じるのでしょうね。
神様世界の運営側は、普通に時間経過してるだけですが。
世界の原型は一枚の星海図という地図絵でした。
原初の創造級の神様が、数多くの神様に領地を分け与えるために切り崩したと伝えられています。
その世界を何万分にも分割して、パズルピースにしました。
『地球』という世界は、その一欠片のピースです。
嵌められピースは、その大本世界の背景が投影されます。
彼が生きた世界は『地球』を中心とした異世界です。
太陽系銀河に行けるのは、現在の管理級の神様の設定です。
神様生に変化をもたらすのは、流行です。
長い時間の中で生きているので時間感覚を忘れます。
時の流れが体感しにくくなります。
感情が乏しくならないように、時折イベントが起きる配慮。
それが、今回の騒動なのです。
そんな神様生を知るには、神様とはの説明が必要です。
それでは、神様階級の説明していきしましょう。
原初級の神様。
原初から生きる神様たちが『至高天』という格付け。
「最高神」とも呼べる存在です。
隠居したご意見番な方たちですね。
諸国漫遊する悠々自適な生活をされています。
凄い方たちですけど、派閥には一切関心がありません。
縛られる生き方から解脱しているので、自由です。
創造級の神様。
月曜日の象徴とされる。
「アース・クリエイティブ」という権能を保有。
惑星や箱庭世界を製造する高度なスキルです。
『1級神』という格付けです。
天地創造という世界の枠を造れる神様です。
建築家のようなものです。
派閥争いの主導権を握る盟主ですね。
精霊級の神様。
火曜日の象徴とされる。
「エレメンタル・クラフト」という権能を保有。
空・火・水・木・金・土という6属性の精霊を操作。
『2級神』という格付けです。
属性付与という世界の根源を浸透させる神様です。
気象や現象の風土の概念固定化です。
庭師のようなものかと。
派閥争いでの補佐役でしょうか。
文明級の神様。
水曜日の象徴とされる。
「カウンター・アクト」という権能を保有。
起動式の展開スキルで、条件を満たせば発動します。
『3級神』という格付けです。
文化の種という世界特有のイベントを仕込む神様です。
手配師のような感覚でしょうか。
派閥争いの火種です。
文化圏の拡充は、神様世界でも重宝されます。
生命級の神様。
木曜日の象徴とされる。
「ライブ・リサーチャー」という権能を保有。
生産系統のスキルで、生命体の産出を促します。
『4級神』という格付けです。
生物の放牧という世界特有の種族を繁殖させる神様です。
生態管理士になりますね。
品種交配させて、新しい種族を開発しています。
派閥争いに加担する気がありませんね。
研究職の神様たちなので。
信仰級の神様。
金曜日の象徴とされる。
「リリジョン・パーティクル」という権能を保有。
洗脳系統のスキルで、宗教を定義して伝播させます。
『5級神』という格付けです。
法律や掟という世界の理と教義を理解させる神様です。
哲学者のような博識さが求められます。
派閥争いの構成員です。
先導することが好きなお祭り感覚な神様です。
信仰心が神様の原動力と吹聴してます。
転生級の神様。
土曜日の象徴とされる。
「サーチ・リソース」という権能を保有。
探索系統の鑑定スキルで、対象の履歴を識別します。
『6級神』という格付けです。
異世界転生志願者の入植を担当している神様です。
さながら入国管理官ですね。
派閥争いを見ている階層です。
仕分け業務に精通するのがお仕事です。
管理級の神様。
日曜日の象徴とされる。
「オーダー・メイド」という権能を保有。
担当の管理世界限定で、設定の改竄が出来ます。
『7級神』という格付けです。
担当された区域の管理を委任された神様です。
神様稼業の下積み時代になります。
多忙を極めているため、余裕はありません。
従者級の神様。
何かしらの権能を発現します。
無能かも知れなかったりと、アタリ・ハズレの格差が出ます。
『8級神』という格付け相当です。
神様に選定された配属者の立場。
あくまでも形式に沿っただけなので、神様に非ず。
これが、階級による神様ランクの分類です。
階級が上の神様の権威が絶対です。
その階級差には絶対服従権はありませんが、長いモノに巻かれる方が賢明ですね。
次は、肩書きの説明に移ります。
肩書きとは、『二つ名』です。
功績の度合いで、上位の神様から授与されたり。
努力の末に獲得した『神器』による称号だったりします。
『神器』とは、無限に湧くような代物ではありません。
「原初級の神様」が製造した試作品ですよ。
広大な星海図の何処かに散在します。
異世界転生志願者に渡す『神器』は、二級から三級品質です。
神様も資質を高めるために、休職して地方遠征に出ます。
目的は、ズバリ『神器狩り』です。
何処かに眠るという、特級から一級品質を求めて放浪します。
過酷な旅だと聞かされています。
派閥で行動すれば、難易度はかなり下がると聞きました。
不要な神器を奉納して、功績値に変換します。
荒稼ぎできる唯一無二の方法ですが、私では無理ですね。
バリバリの縦社会ですよ。
成り上がるのは、功績を荒稼ぎしないと厳しいです。
普通に稼いでも昇格するのは困難の道のりかな。
派閥に属して、コネ上がりの方がスピードコースです。
立身出世と昇格は別物です。
功績を求めるのは、資質の向上のためです。
昇格するためには、心・技・体の適性検査があります。
別物だけど、密接な繋がりですね。
資質が高くないと、適性検査が厳しくなります。
神様背景の理解が及びましたか?
私が自堕落生活している限り、立身出世は無理です。
彼の頑張りに依存している現状に、申し訳無さで頭が下がる思いです。
馴れきる前に自覚出来れば、私は律することも出来たかも知れません。
甘やかされ慣れてしまうと、私自身の外郭は吹き飛びました。
「女神様」として称えられていれば、抵抗も出来たかも。
「姫君」と持て囃されてからは、転げ落ちるかのようにふやけていったのです。
普通感覚の娘さんは一度甘やかされたら、蕩けます。
あまい、あまぁ~ぃ、シロップ漬けにされた生活は天国でしたとも。
ふわふわで、ほわほわという…安らぎに満ちすぎた時間です。
何もしなくても、彼が用意する流れに添うだけという充足感。
スローライフな神様生活を満喫してる現状で、満足してるのがなんとも言えませんね。
私の向上心は何処に行ったのだろう。
無名の身の上ですが、私生活では名前が必要です。
最初の頃は、猫かぶりして砕けた感じのフランクな女神様を演じてました。
童女という立場さえも利用して。
ぬるま湯に浸かりっぱなしだと、それさえも面倒になってしまったんです。
彼の名前を『クロード』と仮定した。
「苦労してるひと」こと、苦労人から語呂を取った。
名付けの由来を聞かれなければ、格好いいのだろうね。
私が『クロード』と命名したとき、彼は歓び泣いていた。
─────うん。
罪悪感が募ったのは言うまでもないね。
クロードに名前の由来を聞かれた時は、絶対に誤魔化そう。
そんなクロードは、私を「女神様」か「姫君」と呼ぶ。
執事的には正しいのかも知れないけど、疎外感が出てきている。
私も名前で呼んで欲しくなった。
神様の真名は、信頼の証。
他者には、教えてはいけないのが習わしだ。
それを告げるのは『婚姻』と同義語でもある。
この先に他の神様と懇意になり、結ばれる展開が期待できる道筋が示されてるという怒涛のイベントはありえないと思う。
男神は、数だけ見れば多いけどね。
この童女のごとき若葉で、満足して貰えるかなぁ。
既にクロードに籠絡されてるので、心情的には問題が無い。
神様世界での世間体を気にしているだけだね。
既に、神命的な出逢い方をしている。
きっかけは、私から。
言葉を伝えたのは、私からだ。
この先の言葉を紡ぐのも、私から掛けるのが私の矜持だろう。
神様は伝えたい─────。
貴方の姫君は大層ご立腹です。
愛情が足りません。
つきましては固有名称から、名前呼びを希望しようと思います。
神様世界の異世界管理運営側に就職しました。
神様は、可憐さ溢れる姫君だったのです。
思い余って、お世話しまくりました。
主人公の頑張りと反比例して、女神は堕落。
女神様の立身出世は成功するのだろうか。