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異世界は夢で現実と交わる  作者: 蟹座
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トランス

異世界要素スタートです。

・・・死ぬかと思った。仮に俺が女だとしたらまず完全に逮捕だ、男でもアウトだけど。先ほどまでオカルト部員達にもみくちゃにされた俺はぶつぶつと文句を言いながら家に帰ってきた。なんかもう疲れてきたな。連日の身を焼くような猛暑と毎日毎日飽きもせず続く耳障りなミンミンゼミの合唱も加わり酷く疲労していた。今日は早く寝よう。そして案の定驚くほど早く眠りにつけた。



悪い目覚めというのは、半ば強制的に目が覚めるときがほとんどであるため目が覚めても目がさえるまでの時間が長くなってしまう。逆にいい目覚めは目が覚めるてから目がさえる時間は比較的短い。そのことを踏まえるとここ最近は暑さで起こされていたため、悪い目覚めだった。だが今日に関しては暑さに叩き起こされた訳ではなく、自分の力で目覚めるといういい目覚めの仕方だった。しかし目がすぐにさえた理由はいい目覚めをしたからというだけではなかった。目がさえた理由は、俺が全く知らない部屋にいたからである。

部屋の間取りは元の部屋とは違いまるで病院の個室のようだし、薄汚れた布団で寝ていたはずなのに新品同様の真っ白なベットになってるし、何もかもが違っていた。そんな感じできょろきょろと辺りを見渡していると、ドアの向こうから足音が聞こえてきた。少し身構える形でドアの方に注目する。足音と部屋との距離が小さくなるのに反比例するように俺の心臓の音が大きくなるのがわかる。そしてドアが開き、そこに立っていたのは一人の女性だった。女性というよりも少女に近い外見の彼女は、ゴールドブラウンの髪をポニーテールでまとめており、二重で茶色の瞳を持っており、全体的に柔らかい印象を抱くような美少女だった。しかしその顔よりも気になったのがその服装であった。いかにもと言ってしまっては失礼だが、異世界風という服装をしていた。例えるならばRPGでいう弓使いのような恰好だった。(露出度は高くはないが)弓使いのようだと言ったが、実際に彼女は大きな弓を背負っているため本当にそうなのであろう。そうゆう風に観察していると、目が合ってしまった。互いに少し固まっていたが、少女が「よかった~意識がもどって」と言って近づいてきた。意識?何の話だろうか確かに先ほどまで寝ていたが。

「全く、私が運良くパトロールに来てなかったら本当に危なかったからね。肝試しか何か知らないけど、この時期の国立公園は魔物が発生しやすいから立ち入り禁止だって言われてるでしょ」

全く話が見えてこない何の話をしているんだ?

「ええっと、大丈夫?ボーッとしてるけど。もしかしてスライムに窒息死寸前にされた後遺症?うーんやっぱり大人よりも女の子の方が脳に行くダメージが大きいって聞くし・・・」

そう言いながら部屋から出て行ってしまった。・・・スライム?まさか昨日の夢と繋がっているのか?それにしてもこの会話にもどこか違和感が・・・ん?女の子?誰のことを言っているんだ?そう思い辺りを改めて調べるために歩き回ったがやはりこの部屋には俺以外の人間がいる気配はない。が、窓ガラスを見たときに見えた反射されたこの部屋には俺の姿も見当たらなかった。正確には窓ガラスが映し出しているこの部屋には20歳の青年男性はおらず、10代半ば位の少女が一人、目を丸くして窓ガラスの方を見て突っ立ていると言った方が正しい。窓ガラスに近づくとその少女も近づく、俺が手を挙げるとあちらも手を挙げる。おそるおそる自分の身体の方に目を向ける。・・・俺の身体は男性的なフォルムではなく、女性的なフォルムになっていた。すぐさま顔を見上げる。すると窓ガラスに映る引きつった顔の少女と目が合った。

「・・・・えええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!?」

脳が今の状況を理解したと同時に大声を出してしまった。もちろんその声も聞きなれた声ではなかった。

「なんで?え?」

再度確認するが、やはり窓ガラスには少女の姿が映っている。その姿は髪は伸びてセミショートになり、一重だった目がぱっちりとした二重になっており、可愛らしい見た目をしていて元々の俺の顔の原型はなかった。無理やり共通点を探すならば、黒色の髪の毛とダークブラウンの瞳の色、昨日寝るときに着ていた服ぐらいだった。

「いやいや、これ完全に女じゃん。俺要素ないじゃん。声も顔も。解決するかは置いといて。と、とりあえずさっきの女性に相談しよう」

ぶつぶつと自分に言い聞かせるように言いながら、ベットに戻ろうとする。ベットに戻るために後ろを向いたときに、先ほどの少女が既にいることに気づいた。しかしその顔は悲しげ、というよりも哀れみの表情だった。

「あ、あの、えーといつからそこに?」

「叫び声が聞こえて、何事かと思って走って来てみたら、窓ガラスをじっと見つめて、ぶつぶつと独り言をしている姿が見えて・・・」

ほとんど初めの方から見られてた!全く気付かなかったし、確かに客観的にさっきの行動を見てみるとかなりの奇行だ。

「い、いやこれには訳があって。えと、なんというか自分が本当に自分なのかを確認してたというか」

いやいや我ながらこの言い方完全にダメだろ、完全に頭おかしい人じゃねーか。落ち着け、今の状況を簡潔に分かりやすく伝えよう。そうすれば大丈夫だ。一言だ、正しく言おう。せーの。

「俺は男だったのに目が覚めたら女になってました」

「うぅやっぱり頭が、ごめんね私がもう少し早く駆けつけていれば・・・」

うん、そうなるだろうね。

「いや、大丈夫です・・・たぶん。いろんなことがおこってパニックになっているだけです」

「パニックって、スライムに襲われる前にも何かあったの?」

やっとまともに会話ができそうでよかった。

「ええっと、まず最近変な夢を見るようになりまして・・・ん?でもスライムは夢の中の話だったし、え、じゃあここは夢の中?」

「うぅ・・・うちは外科だけだから精神科はないの、ごめんなさい」

「・・・」

なんだかもうどうしようもなくないかこれ



「えーと、まとめるとあなたは元々別の場所にいたのに気が付いたら国立公園にいて、そこでスライムに襲われたところを渡しに運ばれて今に至ると、そういうわけね」

「まぁ、そういう事になるんですかね」

なんとか話をまとめる事ができた。

「でも、にわかに信じられないというか、まぁ異世界からやってくる人間はごく稀にいるけど、それが原因で性別が変わったなんて聞いて事がないし」

「えと異世界から来る人間は他にもいるんですか?」

「滅多に無いけれど、私も何回か見たことはあるよ」

「そうなのか。じゃあその人達は今何を?」

「今は元の世界に戻って、そこで生活しているはず。ゲートって呼ばれている魔法装置を使って元の世界に戻っているの」

ゲート、魔法、ますます現実味がないな。そもそもこれ自体が夢の中の話かも知れないが。すると思い出したかのように少女は言った。

「あなたも異世界から来たのなら、許可を貰いに行きましょ」そして俺の手を引く。

「あーそういえばまだ名前を聞いてなかったかな。私の名前はアルカッシュ。アルカって呼んで。あなたの名前は?」

「あ、俺は源野 実行って言います」

そう言って俺はアルカと共に部屋の外へ出た。人がいなくなった部屋には、朝の暖かい光が差し込んでいた。

連続で投稿できました。おそらく二度とこんなことはできないと思います。

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