噛みあわない会話
自分の部屋に戻り一息つく。
千恵がねぇ。
そういえば、山田と千恵の事でいっぱいで考えていなかったけど、私も康太と一緒に花火大会に行くのか。山田いい奴じゃん。
楽しみになってきたぞ。
夕飯を食べ終え、風呂に入り寛いでいたところに
”コンコン”窓がなった。
珍しいな、大和からなんて。
「何?」
まだ機嫌悪いぞオーラをだしてみた。
「今日、光芳呼んだんだ。」
(光芳???あっ山田のことか!)
「ああ、話があるっていうからな。」
だから何だ?
「付き合うのか?」
大和が言った。
(随分と単刀直入だな。どうだろ?上手くいくか?相手は千恵だからなぁ)
「あいつ次第じゃないか?それより、お前知ってたのか?」
「いや、全然分からなかったよ。ってお前あいつ次第って何だよ。」
大和はいつになく真剣な顔をしていた。
「あいつ、はっきりしないんだよ。遠まわしな事しないで”好きだ”っていえばいいのに。」
「それで、お前はどうするんだよ。」
(な・なんでそんなに怒った顔してるんだ?)
「どうするって、そういや来週の花火大会にお前らと千恵誘って行きたいって、言うから取りあえず行ってみないとな。」
「あー。何でそんなとこに俺が行かなきゃいけないんだよ。そんなに行きたきゃ、2人で行けばいいじゃねえか。」
「言ったよ。2人の方が良いって。でもあいつが皆で行きたいって言うんだからしょうがないだろ!」
なんなんだよ大和の奴。やけにムキになってないか?
「お前って結構残酷だな」
小さな声だった。
「残酷って。そんなつもりじゃぁ」
だから、2人の方が良いって言ったって言ったじゃないか。
「だいちっから、お前は・・・」
そう言うと大和は夜空を見上げた。
「お前は?」
「もういいよ。お前の気持ちは分かったから。俺から健太と康太には言っておくよ。」
「何が分かったんだよ。それに健太と康太にはあいつが言うんじゃないか?」
今一どころか今十くらい話が噛みあわないような・・・
も、もしかしてこいつも千恵の事好きなのか?良く考えてみたら、大和と千恵のコンビネーションはバッチリだもんな。特に私をからかう時なんかは。
なるほどねー。今日2つ目のパズルが解けたかも!私って天才かしら。
「大和も大変だな」
ライバル登場ってな。
「一番お前に言われたくないんだけど。」
失礼な奴だ。
「ライバル登場だけど、頑張れ。」
山田にも応援するっぽい事言ったけど。2人とも頑張れってことで。
「頑張っていいのか?」
やけに真顔で言ってきた。
「いいんじゃない?」
「俺、本気だぞ。」
「勝ち目は薄そうだけどね。でもまあ向こうは幼馴染としてのハンデがあるから大和には不利だもんね。」
「ん、んっ?」
大和は首を傾げた。
「ん?って?」
「ちょっと待ておかしくないか?なんで幼馴染が不利なんだ?」
「だって、千恵と山田は幼馴染だって言ってたぞ。お前も知らなかったのか?」
「だーっ」
訳のわからない言葉を言って頭を抱えだした大和。
「ち、違うからそれ。お前の勘違いだから。っていうか冗談だよ。」
大和の乾いた笑いが聞こえた。
「そっかぁ?なんか怪しいけどな。」
何が勘違いなんだ?冗談???
「怪しくなんか無いって。それよりか、やっぱ幼馴染って有利なんかなぁ?」
「やっぱ気にしてるんじゃん。極一般的には多いんじゃないの。それに・・・」
「それに?」
「正直いうと、大和はいつも一緒だったから、違う人といるのをみたら少し寂しいかもな。」
こんな事を言うのは癪だけどこれは本音だ。
「それって、友達として?」
「もちろん、と」
言いかけた私の言葉を大和は遮った。
「あー、悪い自分で聞いといてなんだけど、いいから、その先梓が言わなくても。約束しただろ。ずーっと俺たちは仲間だって。」
そういって右手をストレートパンチと突き出した。
「そうだな。仲間だな。」
といって私も大和宛ら右手を突き出し自分の拳と大和の拳を合わせた。
その後、他愛もない会話をして窓を閉めた。
大和との会話は腑に落ちないものだけど、大和に煙にまかれるれるのはいつもの事だしー。
大和、本当は千恵に気があるんじゃないのかな?私に弱みを見せたくなくて誤魔化したのかもしれないな。
ベットに横になって目を瞑った。
その瞬間、昼間山田が引っ付いた時、目があった健太の顔が浮かんだ。
正直忘れていたのだが、フラッシュバックのように浮かぶ健太の顔。
目を見開いて、固まっていたような。
どうして、健太があんな顔をしたのかわからない。
健太にだって、大和にだって抱きついた事はあるんだし。
さっきの山田のように、中学1年の時、3年メインの試合に出させて貰って初めてヒットを打った時だったり、先輩達の試合に初めてリリーフで出た時とか嬉しかった時は思わず抱きついたりしたじゃないか。それと同じだろ、仲間なんだから。
自分でもどうして健太の顔が浮かんだのかは解らなかった。
でもほんの少しだけ、胸がキュンと鳴った。
きっと、康太と似ているからかなぁ。
そんな事を思いながら眠りについた。