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結果発表

「それにしても、まさか梓が追試に通るとは思わなかったよ。」

里美だけでなく、千恵までもが大きく頷いた。


私だって、そう思いはしたけれど。

でもちょっとは自信あったんだよね。


「格好いいだけじゃなくて、勉強も出来るなんて。これで運動も出来るなんて言ったら相当な人だね。」

カナエはいささか興奮気味だ。


「だって、この梓を短期間で追試通すなんて、学校の先生だってお手上げ状態のこの梓をだよ。」

みんな好き勝手に言い放題だ。

本当に当たっているだけに何も言えない。


でもこれで心起きなく部活が出来るんだからマジ御礼の一つもしなくちゃだよな。

そういえば、家庭教師は追試までの間だったんだっけ。

取り合えず報告だけはしなくちゃだよな。


隣を千恵が歩いている。

先日、千恵のおばあちゃんの具合が悪くなってしまったのだが、幸いにも回復して今は落着いたらしい。とは言っても季節の変わり目、気温の差の激しい今の季節は引き続き注意が必要なのらしいが。

取りあえず一安心なのかな。

今日から4日は親戚の人が付き合うらしく、久しぶりに千恵のお母さんが帰ってくるので、あの嫌味な従兄弟の登場はお休みらしい。

朝から山田もテンション高かったからな。


「梓、ぼーっとしてないで、早く鍵だしなって。待ってんだから。」

千恵に言われていつの間にか部室の前に来ていたことに気づいた。


「おう、悪い。」

カチャリと鍵を開け、一歩踏み入れて気合を入れる。

この後待っている私だけのスペシャルメニューの為に。


相変わらず野球部は素早い事で、もうランニングをしている。

直ぐにあいつの背中を見つけ、一人にやけてみたりして。

やっぱいいよな。初めから出れるのは。

追試漬けだった私は久しぶりの感覚だった。

十分ソフトをいや違うな、スペシャルメニューを堪能した。

全てが終わり何とも言えぬ爽快感だ。


そこに水差さす一言を言った奴1名。


「そういえば、通知表どうだった?」

誰だかわからなかったが背中でそう声が聞えた。

そう言うことを言う奴は良かった奴に決まっている。

全く嫌味な奴だ。って相手はあいつだ。

後ろを振り向くとやっぱり大和だった。


「別に、お前に言うほどのもんでもねえって。」

思いっきり睨んでやった。


「どうせ、いつものだろ。お前好きもんな走るの。通知表まで走ってるんだろ?1,2,1,2、って!で最後に5(go−)って体育で締めるんだよな。」

大和の言葉に思わず拳を握り締めた。


「ある意味凄いな。」

康太が笑い始めた。


ますます拳に力が入る私。


「俺も似たようなもんだぞ。」

健太がそう言った。


「そうか、仲間か!」

何だか嬉しくなったのに


3,4,3,4だけどな

と康太が呟いた。


えらい違いだよ!


ここまで聞いて千恵が堪えきれずに噴出した。

千恵それも失礼だから。

千恵の隣を歩く山田が千恵の頭に手を乗せて私の顔を伺った。

思わず首をすくめて笑ってみせた。

山田は


「いいじゃん体育は良かったんだろ?俺なんて全部が平凡な数字だよ。」

とフォローになっていない一言を。

みんなが黙った瞬間だった。


でもまあ、これで夏休みなわけだし。

学校で康太の顔を見れなくなるのは寂しいのだが、部活で会えるしな。

健太と大和と何かの話で盛り上がっている、康太を横目でちらりと盗み見た。


それにしても花井先生私をいじめすぎじゃないのか?肩甲骨まで悲鳴を上げている梓だった。



その後、家に着いて。

母さんに通知表を要求される。

「またなのね。」

渡された通知表を見て小さく呟いた。

そして、ジャッジャジャーンと返ってきた追試のテスト用紙をひらひらさせた。


母さんは、さっきの顔は何処へやら急に顔が変わり


「これ梓のテストなの?」

とこれまた疑いの眼差しで――


「当たり前だろ!」

思わず大声を上げた。一体何なんだよ。一人むっとしている私をさておき


「本格的にお願いしなくちゃだわ。」

と嬉しそうな顔をした。


嫌な予感が……


「もしかして。」


「あら、梓、分かってるじゃない!週2くらいでお願いしようかしら。   家庭教師♪」

なんだその間は。


「それはちょっと……」


「あら、梓に拒否権はないのよ。あるんだったら陸君のほうかしら。」

パタパタとスリッパの音を響かせながら、母さんは消えていった。


マジですか!?


断って欲しい切にそう思う梓だった。











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