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「そういえば、母さん陸君にいくら報酬だしてるの?」

ほんの好奇心だった。

だって気になるだろ、こんなに毎日うちに通って。

相当もらってんじゃないの?って思ってた。


「それが、夕飯頂いてるからいいです。って聞かないのよ、流石にそれは気が引けたから何度も言ったらやっと、”梓ちゃんの追試が終わってから考えます”っていうのよ。」

とちょっと遠い目をした。


すると兄貴が

「やっぱ、あれかなぁ」

とぽつりと言った。


母さんも

「私もそうだと思うんだ。」

と。


ちょっと待った全然意味わからないから。

2人の会話は全く私には理解が出来なくて。

そんな私の顔をみて兄貴が話しだした。


「あいつさぁ妹がいたんだよ。」

と。


妹がいた?過去系?


「そう、妹。お前の1つ下でアユちゃんって言ってさ。お前とも何度か遊んだんだけど覚えてないか?お前みたいにショートカットでお転婆な女の子。」


そういわれてみたらいたような気がする。

とっても気の合う女の子が。


「何となく。」


確か幼稚園くらいだったんじゃないかな。

それ位前だった。


「交通事故だったんだ。あんなに元気だったのに、一瞬だったらしい。何かを追いかけて歩道に飛び出してそのまま。」


兄貴の話を聞いて、母さんの目には涙が浮かんでいた。

私も何か熱いものがこみ上げてきた。


「確かあの頃は、お前よく解っていないだろうからって内緒にしていたんだと思う。俺にしつこくアユちゃんは?って聞いてきたから。」


そうだったんだ、そんなことがあったんだ。


「陸もお前を見ると思い出しちゃうからって、何年もうちに来なかったしな。またうちに来るようになったのは3年位たってからだと思うから。その頃には落ち着いてお前とも遊んでたけど、内心どう思っていたんだか、それは俺にもわからない。」


兄貴は1つ1つ言葉を選ぶように慎重になって話を続けた。


「で、この前偶然お前が俺の部屋のドアを開けただろ、きっと陸はまたお前を見てアユちゃんを重ねてみたんだと思う。きっとアユが大きくなったらって。アユちゃんお前に懐いてたから。お前と遊ぶ前は陸兄、陸兄って呼んでたのに、お前が”りっくんりっくん”って呼ぶからりっくんって呼ぶようになったって話してたことあった位だし」


とうとう私の目からも涙が零れてしまった。

そうだったんだ。

だからさっき、ああ言ったんだ。


「だからって、今更気をつかうんじゃないぞ。あいつそういうの敏感だから。今まで通りにしてたらそれでいいんだぞ。」


兄貴は言ったけどこんな話を聞いて私は今まで通りにできるのだろうか?


「ほら、そんな顔しない。忘れろとは言わないけど、今まで通りが一番陸にとってもいいんだから、そうしてくれよな。」


そういって兄貴は自分の部屋に戻っていった。


そのあとは母さんと無言でコーヒーを飲んで私も自分の部屋に戻ってきた。

アユちゃんかぁ。

幼くして逝ってしまった彼女を思って眠りについた。


その晩は私と、もう一人女の子と元気に公園で遊ぶ夢をみた。

朝起きて私は

「思い出したよ、アユちゃん。」

と独り言を呟いた。




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