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追試!

追試のことが頭にあったせいかあっという間に6時間目も終了。

クラスメートはそれぞれカバンに教科書を詰め教室を出て行く。


千恵もその一人


「待ってるからねー」

なんて言って出て行った。


「まあ精々頑張れや」

馬鹿にした笑いと共に去って行こうとするのは大和。


「うるせえ」

とばかりに尻を蹴っ飛ばしてやった。


「まじ、痛いから」

本当に痛かったのだろう、うっすら涙を溜めて尻を擦って教室を出て行った。


佐藤さんが羨ましいー


ん?私が羨ましい?!後ろの方から声が聞こえた。

振り返るとばっちり本田と目が合った。


慌てて目をそらす本田。

周りにいた子達がとってつけたように違う話題を振っていた。


追試のないあんた達の方がよっぽど羨ましいって。

何だか感じ悪と思いながらも、身体を前に向き直す。

そして、一応教科書を開いてみた。


早く終わりにしたいもんだ。

校庭では部活が始まったのだろう、大きな声が聞こえてくる。


男子の声に混じって、一際大きな甲高い声。

カンナだ。


くっそー。

この暑い日、教室の窓も全開で聞きたくもないのに声が聞こえてくる。

よーく耳をすませば康太の声も、健太の声も。


まだ先生も来ていなかったので、思わず教室の窓から顔を出した。

一目で解る、あいつ。

キャッチボールをしていた。

なんで、背中向けてんだよ。

健太と交代してくれればいいのに。


健太の顔はよく見えるのに、康太は背中しか見えなかった。


顔が似てるから、見てるだけなら健太だっていいじゃん。


いつか千恵がこんな事言ってたけど。

それ違うから。

誰だってそうだろ?


不思議とこうやって離れてみているにも関わらず、どうしてだか健太がこっちを見てるように見えるんだよなぁ。

もしかしたら、あいつも目が良いのかも。

追試で一人教室にいる私を笑っていたりして。


もしそうだったら、嫌な奴だよな。


その時

「佐藤、誰みてるんだ?」


そこにいたのは花井先生だった。


「もしかして、先生が試験監督?」

だとしたら、教えてくれたりする?ちょっとにやっと笑ってしまった。


「おう、もしかしなくても俺だ。それにしてもなんだその顔は俺は監視に来たんだからな。答え教えるわけないだろ全く、知ってるか?この学年でこの教科追試受けるのお前だけだって。俺だってこんなとこいたくないんだよ。とっとと終わらせて部活行くぞ。今日のお前はスペシャルメニュー用意してやるから覚悟しとけよ。」

そういってにやっと笑った先生。


私と同じだから、その顔。


先生の

「はじめ!」

という声で始まった追試。


確かに本番のテストよりかは解ったが、半分も埋めないうちにもうギブアーップ。

先生の顔を見ると口を大きく開けて固まった。


「出来ないって聞いてはいたけど、これ程とはお前は大物だよ。」


「先生、私これ以上やっても解らないから終わりにしよう」

なんて言ってしまった。


花井先生は呆れ顔で、お前が言うのなら仕方ないか。

そういって追試はあっという間に終了した。


先生と廊下を歩いていたら、隣のクラスの担任の磯部先生が


「もう終わったんですか?まさか花井先生教えたりしてないでしょうね?」

なんて意地の悪い笑いをした。


「ちょっと先生、それは花井先生に失礼でしょう。」

ムッとした顔で先生に迫った。

磯部先生は


「冗談に決まってるじゃないですか?」

と引きつった顔。

そこで花井先生が


「これをみれば明らかでしょ。」

と今やったばかりの私の答案用紙をひらひらさせた。


近くで見るそれは”すかすかで”誰の目にもカンニングの疑いようがない答案用紙だった。

「お前ここまできたら、凄いぞ。悪ふざけして悪かったな。そして花井先生も。」

深くお辞儀をした先生。


「いやいや、監視役をすると聞いた時点で予測できるはんちゅうでしたから。」

花井先生は豪快に笑った。

つられて私も笑ってしまう。


「お前は全くもう、普通はここで恥ずかしいって思うとこだぞ!」

そういって私の頭をゴリゴリ押した。


ちょっと痛かった。















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