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家庭教師2

ふーさっぱりした。

ブルブルっと頭を振って水気を飛ばす。

前にこれを母さんに見られて、犬じゃないんだからと笑われたっけ。

バスタオルを巻いて、頭をタオルでガシガシっと拭いた。


とりあえず服着ないとか。

タオルを巻いたままクローゼットの中を見渡す。

手に取ったのは膝丈のジーンズに半そでのTシャツ。

いつもの格好だ。


次は腹ごしらえだな。

タオルを持って階段を下りようとしたら兄貴の部屋のドアが開いた。


「さぁ始めるか!」

陸君が立っていた。


何で〜。


何でもういるんだ?さっきまではいなかったのに。

ドアの隙間からちらりと兄貴の顔が見えた。


「どっち向いてんだよ。お前はこっち。」

そういって陸君は私の頭に手を置き、ぐるっと私の部屋に方向転換させられた。


「ちょい待って、お腹空いて倒れそうだから、何か食べ物食べてからでも・・・」

と言ってみるも、陸君の顔を見てフェードアウトしていく私の声。


すると兄貴が

「まあ陸、只でさえ、頭の回らないこいつの事だ。ちょっとブドウ糖足してやった方が、いいんじゃねえの?」

ブドウ糖?何のこっちゃ解らなかったが、助け船をだしてくれたのは確かだ。

ありがと、兄貴と思ったものの。


「ブドウ糖ね。考えとくよ。」

そう言って、私を部屋に押し込み、ドアをパタンと閉めた。

小さい声で

”シスコンが”

という声が聞こえた。


兄貴がシスコン?!


そう思った私の顔をみて

「聞いたぞ、この朝の忙しい時間にお前だけを自転車で学校まで送って、家に引き返したんだって?これをシスコンといわず何というんだ。」

半ば呆れ顔で陸君はそう言った。


確かに、送ってもらったけど、だからってシスコンはないだろ。

普段の兄貴見てたってそんなことは微塵もないわけで。


「ほれ、いいからお前は勉強だ。今日は辞書持ってきたんだろうな。」

意地の悪い笑顔だ。


「持ってきました。はいっ。」

スポーツバックから英語の辞書を取り出した。


私の辞書は新品のようで、兄貴のそれとは全く違いページを捲っても何枚もくっついてくるような代物だ。


陸君は私から辞書を取り上げると、ペラペラーっと辞書を捲った。

最後のページの方で一旦手が止まり


「梓、誰かに辞書貸した事あるか?」

と。突然何を言ってるんだこの人は。

とり合えず


「貸した。」

と答えた。


「なるほどね。」

と呟くと


「じゃあ、昨日の続きから。10分でここまでやって大丈夫だったら、間食許してやるよ。」

と言った。


これが、巷でいう”俺様”かもと密かに思った。


食べ物でつられる私って、思いつつ昨日の成果もあるのか私にしてはもの凄くスムーズに行ったのだけれど、陸君の出した答えは”不可”だった。


あと10分とまた区切られ、辞書に格闘中。

兄貴の辞書がいかに引き易いかが一番の発見だった。


やっとこOKを貰い束の間の休息が。


母さんからどら焼きを2つ貰い

「陸君にもあげてね。」

と言われたけど私は2階へ持っていかず、1階のリビングで2つ食べてしまった。

ささやかな反抗ってやつだ。

何となく気も晴れ、また戦場へ向かう。

自分の部屋に行くのがこんなに苦痛になるとは2日前までは思いもしなかった。


大きなため息をつき部屋のドアを開けるも、そこに陸君はいなかった。

仕方なしに机に向かい、厭味を言われる前に続きをしようと思ったのだが辞書が無かった。


まあいっか。


私はいつの間にか机に伏せていたようで、


”ごつんっ”


と後頭部に衝撃が。


「痛ってー、何すんだよ。」

振り向くと辞書を片手に陸君が立っていた。


「お前にそんな余裕はないだろ。」

と。


「しようと思ったけど、辞書なかったし。」

そこまで言うと


「梓ぁ。辞書が無くたって昨日の復習だって何だって出来るだろっ」

と厳しいお言葉が。


どうもこの人には敵わない。

まるでカンナのようだと思った。


この後、昨日の復習も兼ねて単語の発音をした。


陸君の発音は先生よりも綺麗で、同じ日本人なのかよ?と疑う程だった。

(ちょっと大げさかぁ)


そんな陸君に

「はい、次言って。」

と言われても・・・


思いっきり日本人丸出しの発音しか出せない私。

しかも合ってるかさえ解らないときもんだ。


さすがにこれは駄目だと思ったようで、そうそうに発音の発声は切り上げ、発音記号による同音の発音の暗記に切り替わった。

ひたすら、同じ発音の単語を覚えると言った勉強は、さっき中途半端に眠ってしまった私の睡魔を呼び起こすのに十分だった。


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