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疲労感

今日の朝は散々なスタートだった。

ってより昨日からか?


身体はなんてことないのだが、頭の方がパンク状態だ。

こんなに使ったことないからな。


でも自分でも驚いたことなのだが、昨日の夜、必死で辞書を捲って書いた単語を全部でないにしろ、覚えていた事だった。

勉強すると、少しは違うのかもな。


きっと、兄貴だったら、私が適当に問題見繕ってもらってそれを見て終了、ってのだったからこんな風に辞書を捲ることもなかったと思う。

出来れば、やりたく無いことだから。

だけど兄貴ではない他の誰かに見てもらう訳だから、甘えも通用しないわけで。

やりたくないのは変わらないが、追試が終わるまでの辛抱だと自分に言い聞かせた。


「よう、梓。お前なんだか疲れてるみたいだな。」

大和が寄ってきた。


「もう、頭パンクしそうだ。」


「そういや、昨日お前にしては珍しく、机のスタンド点いてたもんな。どうせ漫画でも読んでたんだろ。」


「驚くなよ。実は昨日勉強してたんだ。」

私がそういうと大和は一歩後ろに仰け反った。


「またまた、他の誰かにありえてもお前だけにはありえないだろ。テスト中だってやらなかったくせに、解り易い冗談だな。」

と。


返事をするのも面倒で、言ってろって感じで机にうつ伏せた。

今日もあれやるのかぁ。

結構しんどいな。


時間割を見ると次は、服部先生の英語だった。

またかよ。

アルファベットは家だけで十分だっつうの。

教科書を捲る手がいつもにも増して拒否反応起こしてるって。


しかし、今日はなんとなくだけど、本当になんとなくだけど、いつもより英語が耳に入ってきた気がした。

それも、先生の声は途中、昨日の陸君の声に変換されて。

おかしくなったかも。

勉強が解る方がおかしいと思う自分に笑えた。


珍しくきちんとノートもとった。

そうしないと、陸君の呆れた顔が浮かんでくるからだ。


隣の席の大和が不思議そうな顔をしていたのに気がついた。

そんな顔すんなよ、私だって不思議なんだから。


授業が終わると、服部先生が私のところにやってきた。


「初めてみたぞ、佐藤が俺の授業聞いてるの。やっとやる気になったんだな。」

そういって私の頭に手をおいた。


「はぁ。」

何だか気の抜けた返事をしてしまった。


「何が、はぁだ。見直したとこなのに。それより追試の日程決まったぞ。来週の火曜だ。反対の意味でのぶっちぎりのトップなんだ。ごぼう抜き楽しみにしてるからな。」

と豪快に笑って教室から去っていった。


それにしても、反対のぶっちぎりって。

単独ビリってのか。

解っていたけど、単独かぁ。

これは間違っても陸君には言えないな。


そんな英語の次は国語だ。

一番の楽しみな時間。

楽しみって言っても、国語じゃない。

隣のクラスの体育だ。

梅雨も終わって、男子は校庭でサッカーをする。


校庭をみていると、今日は最初っからゲームを始めるようだった。

私の自慢でもある、この2・0の視力。

父さん、母さんありがとう。こんな時は感謝の気持ちでいっぱいだ。


でも千恵に言わすと、テレビのあまり観ないし、細かい字の本も読まない、勉強もしないし、眼を酷使してないんだから、そういうもんなじゃないの、とのこと。


まあいい。

こやって離れたとこらからだってあいつがみれるのだから。


1組対2組かぁ。

康太と健太のチームだ。


康太を見る私の視線の端に向こうからの視線を感じたようなきがした。

ふとみると、健太と目が合ったきがした。

気のせいだよな。


体育のチームはクラス毎にランダムに組まれているせいか、クラス対抗であっても必ずしも康太と健太が戦うって事はなかった。

双子の対決って事で先生も楽しみにしてるみたいだけど、野球と違って、普段の体育ではあいつらが本気をだして戦うところは観られなかったのだが。


どうしてか、今日は違った。

周りのチームメートがひく程、熱くなっているように見えた。

健太の方が誘っているようにも見えたけど。


白熱した試合に夢中になっていた。

試合も終盤に近づいてきたその時


「「あっ」」


康太と山田が接触して、転倒した。


「どうしたんだ。佐藤、藤森。声をあげて。」


思わず声を出してしまったが、そういや確かに私の他にも声を出した奴がいたが藤森だったのか。

そんな事を思って、私は何も言えなかったが藤森は


「開いてる窓から、一瞬大きな蜂が入ってきて佐藤さんの頭に近づいたんです。」

そう言った。

勿論、蜂なんていないわけで。


先生は藤森の話を信じたようで

「佐藤、刺されなかったか?”さとう”だけに甘いものと間違えたのかもな。」

などど古典的なギャグをいってクラスの失笑をさそっていた。


もう一度校庭をみるともう2人は何事もなかったかのように、試合をしていた。

それにしても、藤森は何で?

そう思った瞬間この前言ってた大和と健太の話を思い出した。

山田に本気なバスケ部のマネージャー。


藤森のことだったんだ。


斜め前にある、開いたままの千恵の席。

あれから、連絡ないけどどうしたかな。


藤森のさっきの声は、まだ山田をみてる証拠だ。

いろいろ複雑だな。


ゲームが終わって休憩している山田を見つけ、微妙な気持ちになったのだった。


放課後になった。

珍しく担任の話が早く終わった、重ねて言うが本当に珍しく。

何か用事があるようで、さっさとHRを終わらせて教室を出て行った。


早かったといっても、あまり他のクラスと変わらないっていうのが悲しいとこだ。

階段と下りる時に、思い出した。

今日は”辞書持って帰ってこい”って言われたんだっけ、階段ですれ違ったカンナに部室の鍵を預けると、教室へ戻った。


教室には、まだ大和が残っていた。

そして、隣には顔を赤くした同じクラスの本田比奈がいた。


「どうした?忘れ物か?」

大和が言う。


「あぁ、英語の辞書忘れた。」

ロッカーに向かって歩いていると


「お前が、辞書持って帰るって。まさか勉強でもするわけじゃなしに。」


「だから、今朝も言っただろ。その勉強するんだよ。」

と言い放ち、辞書をスポーツバックに詰め込んだ。


「マジかよ。明日雪じゃねえの。」


「馬鹿いってんじゃねえよ。っつうかお前、部活行かないのか?」

教室で突っ立っている大和に言った。


大和は

「あぁ、少ししたら行くよ。健太に会ったら言っといて。」


「了解!じゃあ先行ってるぞ。」

そういって教室をでたものの、本田と一緒にいた大和。

もしかして。

千恵に続いて、大和もか?!

なんて悠長に考えていた。






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