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壊滅状態

テストが終わって5日も経つと大体、採点が終わって却ってくるのだけれど。

今回のテスト結果は酷いなんてもんじゃなかった。

案の定、体育と社会以外は殆ど壊滅状態だった。


「どれどれ、って梓お前これ酷すぎだろ。普通とろうと思ったってこんな点取れないぞ。」

大和談。

この会話、テストが却ってくる度にしている。

やっとこ部活が解禁それも梅雨明けになったというのに、既に私の追試スケジュールはいっぱいだった。


「梓、勉強しろとは言わないけど、授業位ちゃんと聞きなさいよね。全くあんた部長でしょ。只でさえ、千恵がいないっていうのにあんたまでいなくてどうすんのよ。」

わざわざ、隣のクラスからカンナがやってきて愚痴りにきた。


「尤もです。返す言葉もございません。」

本当にカンナには頭が上がらない。


「やれやれ」なんて年寄りじみた言葉を吐いてカンナは教室に戻って行った。


「相当怒ってるな、こりゃあ」

隣で大和が笑っている。私にとったら笑い事ではすまされない。


明後日から、毎日のように追試を受けなくてはならなかった。


「そういうあんたはどうなのよ。」

大和に詰め寄るも


「俺はセーフ。1教科も追試はありませんでした。因みに健太も康太もセーフだぞ。あぁ山田は1つ落としたみたいだけどな。あれだろ千恵ショックで落ち込んでた日。相当きてたもんなぁ。」なんて。


がーん皆追試ないってか。

あぁ、どうすっかなぁ。

仕方ない、兄貴に対策練ってもらわないとか。

今度はなんの報酬取られるんだろう。

とんでも無い事を言われそうでちょっと身震いした。


「いいじゃん、幸太郎あんちゃんに見てもらえば。梓とは頭の出来が違うんだからよ。」

面白そうにニヤリと笑った。


だからそう思ったんだって。

それにしても、こいつは私の心でも読めるのだろうか?

たまにこいつが怖くなるよ。

まるで私より私の事をしっていそうな気がして。


「それはそうと、お前今週末どうするんだ?」

大和が聞いてきた。


「今週末って?なんかあったっけ?」

と返す私に


「そういうもんだよな。お前は乗り気じゃないわけだ。」

大和の言葉で思い出した。


「花火大会か。別になあー。だって行くのはお前と健太だろ?」

そう言うと


「お前なぁ、両手に花じゃねえか。なーんてな。まあ俺もそんなに人ごみ好きじゃねえし。家でおとなしくしてるか。」


「そうかぁ?嫌いじゃないぞ。家は家族で行くと思うけど。父さんと一緒なら何でも買ってくれそうだしな。カキ氷にたこ焼きにとうもろこしだろ、それから・・・」

私が話しているのに大和は


「お前らしいよ。あんまり食いすぎるとデブっちまうぞ。」

と笑われた。

大きなお世話だっつうの。

それに、食べるものと同じ位消費してるか問題ないんだよーだ。

私はそう答えず、無言でアッカンベーをした。


「古っ」

大和にまた馬鹿にされた。


その前に追試かぁ。

英語だけは何とかしないと。

夏休みの補習だけは避けたいからな。

一番は自分が部活にでれなくなるのが嫌なのだが、それプラス、カンナにまたお説教されてしまう。

あの冷めた目でみられると恐怖なんだよ。

あー怖っ。

兄貴に頭さげて、過去問と単語のリストアップしてもらわないとだな。

今から頭が痛くなってきた。


ふと気になった。

「そういえば、山田が言ってたけど、康太用事があるんだって?お前知ってる?」


大和の視線が一瞬泳いだ。

「さあなっ。たいしたもんでもねえんじゃないの?」

ポーカーフェイスをしているつもりだろうが伊達に長年近くに居るわけではない。


こいつ知ってるな。

直感でそう思った。

隠すような事なんだろうか?

まあここで、しつこく言って突っ込まれても困るし、ここまでで止めておこう。

否、すでに突っ込まれるか?そう思って大和の顔をみるも。


大和は窓の外を見ていた。


助かったかな。単純にそう思った。

気になるかといえば気になる。

でも知ったところで来ないもんは来ないんだからしょうがないよな。


花火大会は家族で行こうそう決めた。


今日のところはまだ追試がない。

だから思いっきり部活が出来るのだが、やっぱり千恵のいない部活は寂しいもんだ。

カンナとキャッチボールをしようと思ったら、顧問の花井先生に


「たまには、やろうぜ。」

とボールを取られた。


「宜しくお願いします。」

そういって久し振りに先生と練習を始めた。


「球伸びてるじゃないか。それにちょっと前まであった癖も抜けてきたんじゃないか?」

嬉しい一言を貰った。


私は褒められて伸びるタイプなのだろうか、今日は絶好調だった。

問題はコントロールなのだが、先生は


「今の投げ方なら、心配いらないぞ。思いっきり放ってもいいぞ。」

と。


まだキャッチボールの最中なのに、先生はキャッチャーよろしくとばかりに座って構え始めた。

ちょっとだけなら、そんな気持ちでセットポジションに入りボールを投げた。

どうしてだろう?

今日は手から、といか指からボールが抜ける感覚がいつもと違った。

適度に引っかかりつつ中指の先から真っ直ぐボールが抜けたのだ。

最近で一番のボールだった。


初めに声をだしたのはカンナだった。


「梓、いつの間にそんなボール投げれるようになった?」


やっぱり、そうだよな。自分でもびっくりなんだから。

そう思って先生を見るとうんうんと頷きながら、ボールを返してきた。


「お前は気負いすぎなんだよ。闇雲にボールを投げても駄目なんだ。きっと梅雨の間のイメトレが効いたんじゃないか?ちゃんとビデオみてたんだろ?」

花井先生は言った。


確かに・・・梅雨の間校庭が使えなくて、体育館で筋トレなどで過ごしていた時。先生から貸してもらったオリンピックのビデオ、壊れるんじゃないかって程見てたのは事実だ。

そういや、この前大和も言ってたっけ。あれ、強ち冗談じゃなかったのかもな。


梅雨明け特有の強い日差しの中、思いっきりソフトボールを楽しんだ。

久し振りにみっちり動かした身体は心地よい疲労感があった。

今日はいつもよりぐっすり眠れそうだ。

そんなことを思いながら家に帰った。





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