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「梓、どうした?何かいいことでもあったか?」

父さんが私の顔を覗きこんだ。


「あったといえばあったかな?」

そういう私に今度は母さんが


「あら、テストでいい点取れたとか?」

なんていい始めた。


「母さん梓に限ってそれはないだろ。」

父さんの突っ込みが入った。

確かにそうなんだけど。

そんなことを笑っていう両親って。

私が言うのも何だけどそれでいいのだろうか?

まぁ、これで勉強しろだ何だ言われたらそっちの方が嫌なんだけどな。


それにしても千恵から電話まだかな?

そう思って電話をみると通話中のランプが点滅していた。

げっ家で使ってのか。

兄貴だな。

私が電話を見ていたのが解ったのだろう、母さんが


「梓、電話したかったの?全く、幸太郎はいつまで電話しているのやら。かれこれ30分は話してるじゃないの?」


「30分?!って事は私がお風呂に入ってる時からじゃない!ちょっといってくる。」

そういって兄貴の部屋に向かった。

私は軽くノックをして返事を待たずにドアを開けると、ひょいと振り返った兄貴。


「とうとう梓に見つかったよ。じゃあ代わるから」

そういって子機を渡された。

私は???だったが、受話器から聞こえる”梓”との呼び声に反応した。


「千恵!」

軽く兄貴を睨むと、悪い悪いといって部屋から出ていった。

私は子機を持ったまま自分の部屋に入りベットに腰掛けた。


「ごめんね、全然気がつかなかったよ。」

私が言うと


「丁度、お風呂に入っていたみたくて、お兄さんが相手してくれてたんだよ。まさか梓が出てたなんて思わなかったけど。」

と言って笑っていた。

兄貴の野郎!早く代われっつうの。


電話の向こうで一息ついたのがわかった。

「結果からいうと、彼氏ができました。」

千恵は一言そう言った。


「良かったじゃん。いつから好きだった?」

私の問いに


「もう思い出せない位前かな?」

と私の問いに答えた後、


「でもね、半分諦めてたのもあるんだ。ここ何年も話しなかったし、目だって合わなかったからさ。寂しくなるからあんまり見ないようにしてたし。でも、梓じゃないけど無意識に目で追ってることもあって。やっぱり同じ学校だと目に付くよね。」


「そうだったんだ。千恵何にも言わないから解らなかったよ。」


「ごめんね。何だかさ、想いが伝わるわけがないって思ってたから言えなかったんだ。だから、この前、梓とあいつが一緒に帰るって聞いた時、正直、梓に嫉妬したよ。あたっちゃってごめん。今日はこれが一番言いたかった」と千恵は言った。


「本当だよ。千恵、怖かったんだから。どうしようかと思ったって。」

と笑った。

今だから笑えるけどな。


「それと、あいつの背中押してくれたんだって?感謝してるっていってたよ。」


あの情けない山田の顔を思い出した。

写真に撮っておきたかったと密かに思った。


「感謝の気持ちは”いちごブリック”でいいから伝えといて」

と私がいうと


「やっぱり梓だね」

と言った後


「今度は梓の番だからね。」

といわれたのだけれど。


「私はまだいいかな。この関係が気に入ってるんだ。」

そう言った。

このままの関係でいられるのならば。


「そっかぁ。」

千恵はそういうと、


「明日からまた病院に行かなくちゃだから、また後で電話するね。」

といった。


私は

「おばあちゃん、良くなるといいね。」

と言って電話を切った。


千恵嬉しそうだったなぁ。

これでおばあちゃんもよくなると最高なのにな。

ベットに寝転びながらそう思った。


ふと来週の花火大会はどうなったのだろう?

千恵はそれどこじゃないか。

行けるとしたって山田と上手くいったんだ、2人で行きたいだろうからな。

今年も家族で見に行くんだろうな。


そんな事を考えていたら電話が鳴った。


「もしもし、佐藤ですが。」


「夜分にすみません。山田と申しますが、」


山田か。


「おう、どうした?」


「佐藤か?今日は悪かったな。ってよかありがとな。俺としては急展開だったけどな。」

と山田は言った。

確かにそうだろう。

まずは友達としてやり直してから、その後動こうとしていたのだから。

急展開かぁ。おかげで花火はなくなっちまったけどな。


「良かったじゃん。そうそう、今千恵から電話きたぞ。嬉しそうだったよ。」

そういうと。


「マジで?嬉しそうだったか?俺にはそっけなかったけどな。そっか嬉しそうだったかぁ」

電話の向こうの顔がわかりそうだった。

にやけてるんだろうな。

ってかそれを聞きたかったんじゃないのか?


「だから、千恵にも言ったんだが、報酬としていちごブリックでいいから。」

そう言ったら


「いちごのブリックかよ!そんなんでいいのか?」

なんていいやがった。

昼間のこいつとはえらい違いだよ、全く。


「一個じゃなくて、夏休みに入ったら毎日買ってもらおうか。」

そういってやると。


「毎日は勘弁だよ。せめて1週間位なら・・・」

と。


「冗談だって。1個くれればいいって。どうしても1週間買いたいって言うんなら別だけどな。」


「じゃあ、3つで宜しく。」と山田は言った。


「了解。」

なんて会話してるんだ。

すると山田が


「それでな、花火大会の話なんだが、」

山田が話始めたが私は


「いいって、元々、お前らが話す切欠で誘おうとしたんだから、いけるとしたら2人でいけばいいじゃねえか、初めてのデートになるんじゃねか?」


「それもそうなんだが、実はもう健太と大和には話しちゃったんだよね。あいつら、行くって言ってんだけど、お前どうする?」

大和の奴、私が言った時は2人で行けって言ってた癖に、山田には行くって言ったのかよ。

っていうか、肝心の康太は行かないってか?


「康太は行かないのか?」

素直に聞いてみた。


「あぁ、何か康太はその日、用があるとかでパスって言われたぞ。」


「ふーん。そうなんだ。」

用事か。


「なになに?梓ちゃんは康太がいなくちゃ、行かないのかな?」

こ・こいつ


「お前なぁ、ちょっと調子にのりすぎだよ。そんな事言ってると今日のお前の様子、千恵に話ちゃおうかな」

どうだ!


「悪い、マジそれだけは勘弁してくれ。でもさ、どうだ?暇だったらあいつらと一緒に行ったらどうだ?」

山田は別に私達が花火に行ったって関係ないだろうに。


「そうだな、考えとくよ。」

別に康太が行かないんだったら、なんて思ったのは事実だけど。

大和と健太とかぁ。


その後他愛もない話をして電話を切った。


これでブリック3個ゲットだ。


私はこの時、追試の事をすっかり忘れていた。

その事に気がつくのは次の日だったりする。

部活解禁となった私に追試の嵐が待っていたのだった。















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