デートの朝
その日の夜は、不思議とぐっすりと眠ってしまった。
大好きだったあの人が彼女を選んだ、そして婚約破棄、“悪役令嬢”のそしり。
どれもが私を傷つけるのに十分だったはずなのに、その日は夢を見る程度にぐっすりと眠れた。
疲れすぎて絶望していたなら、夢も見ずに眠ったか、眠ることするかなわなかったかもしれないのに。
「今日のデートが私が楽しみだった? ……それはないわね」
ある可能性を口にしてみたが、すぐに私は否定した。
ありえない、彼とそう約束したのはただの気まぐれだ。
ただ彼のあの話がとても驚いてしまって、その婚約破棄関連の出来事が全部頭の隅に追いやられてしまっただけだ。
そういえば今日はデートの日……らしい。
早くに目を覚ましてしまったのだから、早めに支度をしてしまおうと思う。
外でのデート。
「どんな服がいいかしら。……そうね、どうせだからあの服にしましょう」
そう思って取り出したのは、水色のストライプ柄が華やかなドレスだった。
これは今度、王子と一緒に外を出歩く時に着ようと思って購入したものだった。
その機会は永遠になくなってしまったが、このドレス自体は気に入っているのだ。
だからこれを着て行こうと私は考える。
まだ一度も袖を通していないドレス。
そう思いながら着替えて支度をし、朝食を家族ととる。
両親は婚約破棄に関しては何も話題に出さなかった。
ただ私を気遣うように時々見るのみだった。
いい両親に恵まれたと私は思う。
とりあえずは、オズワルドにデートに誘われたことを伝えると、父と母は少し黙ってから頷き、楽しんでくるといいと言ったのだった。