余興
半分やけになっていたのだと思う。
失恋もしてこのような状況になって。
だからもうすべてがどうでもよくなって、好きだと言っているオズワルドがおかしくてたまらなくて。
しかも私を抱きしめているのも、更に笑いを誘う。
この人は一体何を言っているのだろう?
だったらそう、賭けをして、遊ぶのも楽しいかもしれない。
悪役令嬢らしいわ、と自分でも笑ってしまう。
そこでオズワルドがずっと黙っているのに気づいた。
「どうしたのオズワルド」
「……いえ、今の発言はつまり、私に落とされる可能性もあるという事ですね」
「……そうとも取れるわね。出来るならやってみればいいわ」
「ええ、つまりこちらのアプローチを幾つか受けていただけると、アニス、貴方は言ったわけですね」
何やら興奮し始めたオズワルドに、何かおかしなものを私は感じる。
何故、彼はこんなに嬉しそうなのだろう?
だが、私はその理由がすぐに分かった。
「今まで私の言葉には適当にしか反応しなかったのに、そうですか。ようやく機会が私にも巡って来たと」
「……そうなるわね」
「分かりました。この機会を無駄にしないよう、全力で貴方を落とさせていただきます。これが最後のような気もしますから」
「そう」
どうでもいいわと思いながら私は答えるとそこで彼がようやく私を抱きしめるのを止めた。
今どんな顔をしているのだろうと思って見上げると、オズワルドは非常に嬉しそうだった。
それを見て私はやや困惑してしまうが、そこでオズワルドが、
「では明日の朝、8時に迎えに来ますから」
「え、ええ、そうなの?」
「そうですよ。デートの時間には遅れないようにしてくださいね」
そう言ってオズワルドは去っていった。
それを見送ってから私は、何かの違和感を感じる。
なんだろう、そう首をかしげてからすぐに気づいた。
「どうして私がデートをすることに?」
勝手に決められてしまった予定だが、どうせ暇だしと思った私は、この余興に付き合うのもいいわねと思ったのだった。