賭けをしましょう
オズワルドに突如抱きしめられた私。
いったい何が起こったのか、と自問自答してみる。
先ほどまでの会話では、彼が私の事を好きだと言っていたように思えたが、
「どういうつもりなの?」
「……全く信じられていないようですが、私は貴方が好きなのです」
「今まで腹黒といった悪口を言ってばかりでしょう」
「貴方に相手をしてほしかったのです」
「子供みたい」
「そうですよ、貴方の前だと私は子供のようになってしまう。子供のように無邪気で貪欲に、欲しいものを手に入れたくなってしまう。抑えがきかなくて、大変でしたよ。……もっとも、もう我慢できませんでしたが」
そう言って私を抱きしめる力を込めるオズワルド。
けれど、私の心には何も響かない。
今更好きだと言われても、私はこのオズワルドに何の感情もいだいていないのだ。だから、
「放していただけますか」
「……私の一世一代の告白も貴方には届かないのですね」
苦笑するような寂しげな声で私にそう、オズワルドは告げる。
よくよく考えれば、打算的に王子とは付き合っていない私を知り、彼自身も“失恋”したことになるのだろうか?
失恋した者同士。
どうしてオズワルドは私を好きになったのだろう?
もっと貴方が愛し愛されるような相手がいるだろうに。
「私以外でいいでしょう?」
「私は貴方がいいのです。本当はもしも貴方がもっと“打算的”ならば、違う手段も取れたのですが、残念です」
「諦めが悪くて強情ね。でもそうね。私も失恋してしまったわ。だから……賭けをしましょう」
「賭け、ですか?」
「ええ、私を落として見せなさいよ。そうしたら……私の誰にも話していない秘密を教えてあげる」
もう価値はない知識であり、言ったとしても信じないであろう二つの記憶。
それを私は話してあげるわと思いながら、オズワルドにそう告げたのだった。