抱きしめる
どうやらこのオズワルドは私の事が“好き”であるらしい。
そう言われた私だが、もしやこのオズワルドは今、悪趣味な冗談を言ったのだろうかと私は思った。
だからオズワルドの顔をじっと見て観察してみるが、真剣そのものだった。
けれどそれでもまだ私は、今言われた言葉が不思議なもののように感じて、
「オズワルド、今、貴方は私の事を好きだといったように聞こえたわ」
「その通りですよ。疑うのならばもう一度言いましょうか? 私が貴方を好きだと」
「……気づかなかったわ」
「そうでしょう。そうだと私も思っていましたが」
返されたオズワルドの嘆息するような言葉。
だが私にとっては予想外だったのだ。
だって今まで私に、そんな素振りを見せていただろうか?
「貴方、私に会いに来るたびに、一言悪口を付け加えていたわよね?」
「そうしないと構ってもらえませんから。貴方はいつも、周りの事にそこまで興味がないようでしたから」
「そう? そんな事はないわ。美味しいものも綺麗なものも、全部好きよ」
「けれどそこまでの情熱を、私は感じられなかったのです。何処か“義務”のように行動しているように見えましたから」
鋭いオズワルドの指摘に私は、笑ってしまった。
だって、随分と私の事をよく……見ていたようだったから。
そう、乙女ゲームの知識や町娘としての知識、貴族令嬢の知識……それらを総動員して私は動いていた。
それは全部あの王子を、婚約者を愛していたから。
今となっては意味がなかったけれど。
皮肉げに唇の端が上がるのを感じながらオズワルドに私は、
「私はあの人が、どうしても欲しかったのだもの。そのために全てを費やしてきたの。でも……失敗してしまったの」
オズワルドにそう、答えるとそこで、オズワルドが私を抱きしめたのだった。