店長のお話
向井店長は、どこを探しても見つからなかった。
店内にいないなら、外でタバコを吸っているのかな…と思った私は、外へ出てみた。
お店の裏口の特等席に、向井店長はいた。
「あっいた。向井店長?」
店長は、景色を眺めながらタバコを吸っていた。
その姿は、何か考え込んでいるみたいだった。
『あっ、星倉ちゃん?』
あっ、気付かれちゃった。ちょっと待って…。今、違和感を感じたんだけど。
「えっと…、商品の補充場所を聞こうと思って来ました。」
『あっ、ごめん。全然気付かなくて…。』
「大丈夫です。」
店長、どうしたのかな…。
今、顔を歪めているように見えたけど…。
『ちょっと、話があるっちゃけど…いいか?』
「はい。」
話って何だろう…。
辞めて欲しいって言われちゃうのかな…。
『実は…、この近くに新店が出来るっちゃけど…行ってくれん?』
私は、その言葉を聞いて一瞬訳が分からなくなってしまった。
「えっ?私がですか…?」
『そう。店舗を見回る人が、行って欲しいって…。』
まだ入社したばかりの私が…どうして?
私なんかより、仕事が出来る人はたくさんいるのに…。
『星倉ちゃんだけじゃないから。』と向井店長は、言った。
店長、そういう問題じゃないんだ。
私の気持ちは、どうなるの…?
「考えさせて下さい。」とだけ言って、私は仕事に戻った。