3月のあの日
「緊張するー。」
今日は、いよいよ私が働くお店への挨拶。
事前に連絡したから、大丈夫だと思うけど…。
緊張しながら、インターホンを鳴らした。
『はい。どちら様ですか?』と出てきたのは、女性の人だった。
何か言わなくちゃ…と思いながら、私はこう言った。
「私、先日お電話した星倉ですが…。」
『あっ、ちょっと待って下さい。』
「はい。」
ドアは閉じられてしまった。
誰が出てくるんだろう…と思いながら、待っていた。
そんな事を考えていたら、ドアが開いた。
『はい。』
「あっ…。」
この人が店長?
メガネをかけていて、身長が高い人。
『どうぞ中に入って下さい。』
「分かりました。」
『ちょっと待ってて下さい。もう少ししたら、店長が来ると思いますので…。』
「はい。」
あっ、この人が店長ではないんだ。
どんな人なんだろ?なんて考えていたら、声をかけられた。
『遅くなって、ごめん。上、行こうか。』
声がした方を振り返ってみると、小柄な男の人がいた。
「分かりました。」
この人が店長かな…と考えながら、その人について2階の部屋へ行った。
『えーと、星倉 じゅりさんだったよね?』
「はい、そうです。」
『俺、店長の向井っていうちゃわ。』
「はい。よろしくお願いします。」
自己紹介をされた後、色んなお話を聞いていた。
その時、階段を上ってくる音が聞こえた。
『失礼します。』と入ってきたのは、さっきの身長が高い人。
『はーい。』
『あっ、店長。電話番号とかは…?』
『聞いたよ。岡、何か星倉さんに言う事は?』
『はい。これから、色んな事を覚えると思いますが、頑張りましょう。』
「はい。」
何かこの2人ありそうだな…。
2人の様子を見ながら、私はそう思っていた。
『じゃ、もういいよ。下行って。』
『はい。』
「…。」
さっきの人がいなくなって、沈黙が流れた。
『あっ、星倉さん。』
店長は、私の名前を呼んだ。
「はい。」
『あいつは、副店長の岡田っていうんだ。』
「分かりました。」
その後、入社に必要な書類を貰って挨拶は終了した。
「今日は、ありがとうございました。」
『いや。じゃ、また。』
「さようなら。」
私は、頭を下げてお店を出た。
挨拶は緊張したけど、店長が優しそうな人で良かった。
私と店長の出会いは、こんな風に終わった。