水木店へ…③
「む…向井店長。」
想いを伝えたいけど、どう言ったら良いのか分からないよ…。
『星倉ちゃんも知ってたん…?』
向井店長は、そう言って私の顔を覗き込んできた。
顔が近くて、恥ずかしいよ…。
「はい…。知ってました…。」
『そうやっちゃ…。』
タバコを吸いながら、遠くを見つめる向井店長。
今から、伝えよう。
私の想いを…。
「向井店長、ちょっと話したい事があるんですけど…良いですか?」
『うん。』
「だけど、私が今から話す事は忘れて下さい。」
忘れてもらわないと、駄目なの…。
『う、うん…。』
向井店長は、少し焦ったように返事をした。
「私、向井店長の事が好きです。だけど、松井さんがいる事も分かっています。想いを伝えたくて…。」
向井店長、何て答えるかな…。
『えっ…!?星倉ちゃんが、俺の事を…。』
「はい。ずっと好きでした。」
『気付いてやれなくて、ごめん…。』
「向井店長を見ていられる事が、私の幸せでした。いつも優しくて、従業員の事を考えてくれていて…。
向井店長の色んな姿が好きでした。」
ついに言っちゃった…。
向井店長は、こんな事言われても嫌だよね…。
『ありがとう。俺も星倉 じゅりの事は好きだよ。だけど、妹みたいな感じだったな。
いつも走っていて、おっちょこちょいで可愛かったな…。』
「向井店長、ありがとうございます。」
『俺は、お礼を言われる事なんて…何も言ってないよ。』
「いえ。そんな風に言ってくれて嬉しかったです。これからも、今まで通りよろしくお願いします。」
『当たり前やろ。星倉ちゃんは、俺が一番最初に教えた奴やっちゃから…。』
本当に大好きだった。
ありがとうございます…。
「はい…。」
『向井店長、お話は…?』
あっ、青田さんだ。気を遣わせて、ごめんね…。
『んー、終わったよ。』
「今ちょうど、終わりました。」
『じゃ、僕達はこれで。』
「向井店長、お忙しいのにありがとうございました。」
『また、遊びに来いよ。』
『「はい!!」』
向井店長は、最後まで優しい人だった。
またいつか、会えますように…。
それに、こんな風に想いを伝えられたのは…青田さんのお陰。
お礼を言わなくちゃ…と私は思っていた。




