海でのお話②
何故、青田さんが海に連れてきてくれたのかを聞いてみる事にした。
「青田さん、どうして誘ってくれたんですか?それに、海の理由も…。」
『…星倉さんが辛そうだったからだよ。
今日、何かあったんでしょ…?』
何かあった…確かにそうだね。
松井さんを見て、私が悲しかっただけ…。
「今日、疲れてて…。」
私は、それしか言えなかった。
『星倉さん、僕が話を聞くので…話して下さい。』
青田さんは、どうしてそんなに優しい人なの…。
「はい…。実は…、向井店長と松井さんが付き合っていると聞いて…悲しかったんです。」
『向井店長、松井さんと付き合ってるんだ…。』
「はい。誰にも言わないで下さい。私が向井店長を好きな事…。」
『言わないですよ。ところで、向井店長のどこが好きだったんですか?』
向井店長の好きな所…たくさんあるよ。
「きっと、初めて会った時から気になっていたんです。
いつも従業員の事を考えてくれて、優しくて、ニコニコしていた店長が好きです。」
『そうなんですね。向井店長、良い店長だったもんね。』
「はい…。」
『星倉さんは、向井店長に“想い”は伝えるの?』
そんな事…無理だよ。
だって、向井店長は松井さんと付き合っているんだよ。
「想いは、伝えません…。」
『じゃあ、星倉さんはこのままでいいの?』
このままで、良い訳ない。
だけど、向井店長を忘れる他に何があるの…。
「忘れるしか、方法はありません…。」
そう答えながらも、頭に浮かぶのは向井店長の事。
『星倉さん…。泣かせて、ごめん。』
「えっ…。」
顔を触ってみると、ひんやり冷たかった。
気付かない内に、泣いていたんだ…。
『だけど、その気持ち…分かります。』
青田さんも、そんな“想い”を抱えているのかな…と思いながら、横顔を見ていた。




