11/29
大切な人
倉橋さんに指示された作業が終わり、有馬店長から渡された書類を見ながら作業していた。
その時、どこからかパートさん達の話し声が聞こえてきた。
『もう、山田さんたら~。』
あの声は、松井さんと新しいパートさんの山田さんだったんだ…と思いながら、声がした方へ顔を向けた。
『だけど、本当なの?水木店の店長と…って話。』
水木店は、私が前にいた店舗だよ。
それに、店長って向井店長の事…?
『本当です。向井店長と付き合ってるんです。』
『そうなんだ~。』
松井さん、向井店長と付き合ってるんだ…。
私も、ちらほらと噂は聞いていたけど。
向井店長は、彼女いないって言ってたのに…。
そんな事を考えていたら、泣きそうになってしまった。
だから私は、売り場に出て他の作業をする事にした。
やっと帰る時間になって、いつもの帰る道を歩きながら…私は泣いた。
家に帰るまで、我慢出来なかった…。
「向井店長…。」
向井店長には、大切な人がいたんだ。
その人が、松井さんだったなんて…知りたくなかった。
私が出来る事は、松井さんとの幸せを祈る事だけ。
お幸せに…。




