白熱のプレシーズンマッチ
~トリノダービー、シーズン前から激戦~
結果からすれば圧倒的だったのかもしれない。6-3。圧倒的大差で勝利したのはユヴェントスで、逆に屈辱的な敗戦となったのはトリノだろう。しかし、いざふたを開けてみればその印象はだいぶと変わる。
ユヴェントスは今季加入の選手を多く使ってきた。まずユース昇格組のMF、天才と名高いレン・シュタイン、セルビアの至宝ヤン・マコスキー、移籍組ではFWのブリッツ、マンUから獲得したMFジョージ・ダイアン、ブラジル人SBのドドといった新戦力テストマッチといったところだろうか。
トリノも同じように新戦力を使ってきていた。ブラジルの『ブラカール・コンドル』ルイス・ファルコ、トリノユースの至宝のDFキャンディ・ベルバーロ、ドイツ若手最優秀ヤングプレイヤーに輝いたGKフェルゼン・マオアーなど即戦力級をいきなりスタメン起用。ベンチにもレアル・マドリードのユース出身のFWジュリエ・ダビド・アーリー、ポルトで大活躍したMFサンタ・テレシアを置くなど、多くの新戦力を起用した。
試合は前半、トリノのペースで進んだ。ルイス・ファルコがファンタスティックなプレーでそのポテンシャルを大いに見せつける。キョウヤ・ヒガシの突破から生まれたチャンスで、ケイト・ズラーカの落としをルイスが素晴らしいシュートで先制すると、前半30分過ぎにはルイスのスルーパスからバッフォン・ミミングストンが抜け出し追加点を決める。
試合はトリノのペースで動くかに思われた。しかし、名将・ホムロムはここでエースストライカーを投入する。ブリッツに代わりアレクダンドロ・ディエロがピッチに入ると、試合は激変する。先ほどまで水を得た魚のように躍動していたトリノの選手たちは水を奪われたかのように動きが悪くなり、逆にユヴェントスの選手たちの動きがよくなりだしたのだ。
後半始まってすぐ、後半から出場したゴヌエスが格の違いを見せつける。お得意の超前衛守備でいきなりボールを奪ったディエロからレン、ゴヌエス、ジョージと繋ぎ、最後はレンとディエロのワン・ツーパスでフィニッシュ。トリノはこの超前衛守備に試合終盤まで苦戦を強いられる。
トリノは30分までユヴェントスという竜巻に暴威を振るわれた。30分間だけで6失点を喫した守備陣は戦意喪失寸前だった。しかし、ここでトリノの監督ブラウンが動く。リピッド・アンゴラとジュリエ・ダビド・アーリーを投入し、大胆なポジションチェンジを行うと、そこからはトリノの時間となった。
ユヴェントスのコーナーキックをしのいだトリノFCはキョウヤ・ヒガシを中心にして最後のカウンターを繰り出す。キョウヤが最後の最後でドドを二度の切り替えしで抜き、クロスを上げる。ケイトのヘディングは惜しくも弾かれるものの、そのこぼれ球を『ハイエナ』の異名を持つアーリーが決めて最後の反撃をなした。
スコア的には惨敗といった形であったが、トリノはそのポテンシャルを十分に発揮したと言えるだろう。だが、それでもやはり浮かぶ言葉は若さゆえの敗北である。平均年齢24歳、確かに若さあふれるフレッシュな面々のサッカーは素晴らしいものだろう。だが、逆に言えば危なっかしい経験のないサッカーとも言える。この試合であっても、後半のトリノの選手たちの様子は褒められたものではなかった。特に守備陣だ。リク・アレサンドロは確かに有能なCBで、キャンディ・ベルバーロやリピッド・アンンゴラも将来的にはイタリアを背負う選手になるのかもしれない。しかし、今はまだ新米の若造であり、セリエAの経験豊富な攻撃陣を前にして若さゆえの過ちを犯さないとは言い切れない。
不安と期待、その二つを一身に背負うトリノFC。今季、台風の目となるのか、はたまた残留争いを繰り広げることとなるのか、道は二つに一つといえるだろう。
著:ユー・オブル




