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四色魔導師と林檎の策

 眼が覚め、右目の眼帯を持ち上げると真っ暗な部屋に居た。その時点でわたしは不機嫌になる。当然だ、わたしにはいつも朝にカーテンを開けて起こしてくれる人物が居るからだ。

 フェリナ・アビシェンガティーブ。

 わたしの友人にして我が騎士。わたしこと、安藤梨絵とは五年の付き合いの彼女、彼女には学校に行く前にわたしを起こして共に朝食を取るように命じてある。それが生き甲斐だと言わんばかりにわたしの周りをうろちょろしてたあの子がいない、何と言う不忠なのだろう、後で闇に食わせなければ――と、考えた所でわたしはふと疑問に思ったことを口にする。

「……帰って、いない?」

 今は朝の七時、今フェリナを送り込んだ遺跡は夜の十時半過ぎと言う所か。つまり、彼女は半日以上も滞在していることになる。と、言うことはだ。

「問題に巻き込まれた?」

 そう言う結論に達するとわたしはベッドから飛び降りてネグリジェを脱ぎ捨てて――後始末は帰ったらフェリナにやらせよう、うん――クローゼットから黒のゴスロリ服を取り出し、影の使い魔を生み出して一人で着替える。ついでに冷蔵庫に置いてあるチョコレートパンを影の使い魔に手元に持ってこさせ、数分で着替えを終らせる……あ。

「ブラ付け忘れた……どうしよ」

 何時もはあの子が着替えを用意して丁寧に着せてくれるから一人でやろうにも何処か何かがずれている。チャックも上手く仕舞っていないし。

「……十歳までは一人で着れたのに、えらい劣化ね。たまには自分でやろうかしら」

 いや、止めておこう。これはあの子が余計なことをしたから起きた不祥事だ、うん。慣れてはいけない。しかし不恰好なままでたらわたしのイメージが悪くなるだろう。それはいやだ、仕方ない、服だけは……。

「……ストッキングもはき忘れた……めんどくさい……」

 しかし素足で靴を履く気にはなれなかったので、手直しだけですます筈が仕方ないので……と、気付けばやたらと息が上がっていることに気付く。と言うかノーブラなので胸も結構痛くなっている。ああ、もう。

「私の体は、何て不便なの……」

 半脱ぎ状態で床に倒れこむとただただ愚痴るだけだ。一応わたしの周りでは影の使い魔が切磋琢磨とわたしを着替えさせて行く。

「帰ったらお仕置きしてやろ……」

 一先ず、フェリナへの八つ当たりを考えながらわたしは一人で支度を終えていく。

 人と言う人が集まる空間、そこには多種多様な人間が存在する。ローブ姿人間に鎧姿の人間。彼らは整列し、指示はまだかと言わんばかりに立っている。

 と、そんな時に一人の魔導師が出っ張った岩の上に登り、垂直に立つ。その姿を表現するとするなら威風堂々、雄々しい、勇ましいと言う感じであろう。この人になら膝を折ってもいい、頭を垂れて従ってもいいいや、寧ろ導かれたい導いて欲しいと思える程の何かを纏った人物。こういうの何と言うのだろうか? あえて言うなら、これがカリスマと言うものなのかも知れない。そんな人が、口を開く。

「同志諸君! この遺跡に入った反逆者達は、愚かにも未だ抵抗を続け逃走をしている!」

 その野太い声――男の叫びは遺跡全体に響き、聞く人々の体全身にへと響き渡る。

「これは我らへの反抗意識の証明であり、我々に対する反逆だ! ともすれば、彼らは我々と敵対組織のものやも知れぬ! だが、我々は決して負けぬ! 何故なら、我々は、全魔導師、ひいては全人類の未来の為だからであるっ!」

「は――ははは、あっはははははは!」

 男の演説を切裂く様に笑い声が響く。誰もが首を回して辺りを見渡し、この演説を笑う者不届き者は何処だと。

 そして、誰かが見つける。後ろの高台。誰もがその場所に注視する。そこに立っていたのは緑髪を短く切り、カチューシャでかざった少女。

 名を、森林林檎(もりばやしりんご)。彼女はその高い所で仁王立ちをし、彼らを笑う様に見下ろしていた。

「貴様何がおかしい!?」

 誰かが叫ぶ。林檎へと向けて。対する林檎は。

「これが笑わずにいられるか、こんな戯言を聞いたのは人生初だ、礼を言うよ。くだらない茶番劇を本当にありがとう! 心の底から喝采を送ろう、お前は良い道化だとな!」

「貴様……! ただで済むと思うな!?」

「は、まだ私を笑わす気か? ただで済まないのはそっちだよこの愚か者ッ!」

 直後、林檎は爆炎の球を投げる。投げられると同時に林檎の近くに居た者達が一斉に防御術式を展開するが、それらを一気に素通りして奥に居る魔導師部隊へと直撃し極大の爆炎が炸裂し、轟音が遺跡全体に響き渡る。

「き、貴様! 何を!?」

「愚か者、少し考えれば分かるだろう? 真っ先に叩くべきは後衛、常識じゃないか」

 林檎の言葉に応えるは一斉掃射。銃声が重なりに重なり、まるで機関銃が発射されたかのような音が響くが、直後に立ち上るは硬く空しい金属音だけだ。何が起きたのか――と言うのは無粋であろう。ただ単に、林檎は無拍子で氷壁を展開しただけである。結果銃弾は分厚い氷壁に食い込み弾かれただけで終わったと言うことだ。ただそれだけに過ぎない。それに、だ。林檎は此処では終わらない、決して。

 氷壁の展開に間を置かずに落雷が降り注ぐ。遺跡の中で落雷とはありえん、などと言う話はそれこそありえない。林檎には電気を自由自在に操る才能を持ち合わせている、彼女の力量があれば落雷を室内だろうが地下だろうが落とすことくらい簡単と言うものだ。

 落雷は一つに留まらず、連続して落ち続ける雷は徐々に本数を増やし嵐の様に暴れ回り――。

「サンダァァァァァァストォォォォォォムッッ!!」

 雷の嵐が狭い遺跡の中を暴れ回り、林檎は一気に距離を詰める様に集団の中に突っ込むと兵士一人の肩を掴み取るとぶん回す様に投げる。林檎にそんな事をする腕力は無い。が、風を制御出来る彼女にとって触れた対象の重量を消し去る様に浮かす事など造作も無い。

「きっさまぁ!?」

 当然の様に襲い掛かる兵士達、林檎は続ける様に投げ飛ばした相手目掛けて氷杭を生み出し連続発射する。と同時、氷杭は空中で生み出されるが時間差で地中からも生み出され、周囲の者達も丸ごと宙へと舞い上げる。と同時、宙に舞い上がった連中は残らず次に生み出された巨大な回転する氷塊に叩きつけられて遠くの地面に叩きつけられる。林檎は風を纏って跳躍するが続くように武器を投げつけられるが林檎は風の爆発を巻き起こして弾くと両手に魔力を溜め。

「ブレイズレェェザァァァァァァッ!」

 解き放たれた炎の光線が叩き付けられた連中へと突き刺さり爆炎が舞う。林檎は地面に降り立ち、一斉に兵士が跳び掛かるが急に竜巻が立ち上り林檎は地面に手を付け、術式を起動させ。

「太陽劇! 灼熱の聖光火!」

 術式は起動して一気に広がり、数多の炎輪を生み出して続いて術式から炎の塊――太陽の様なものが生み出され、それだけだと言うのに吹き飛ばされた者達が焼かれていく。更に炎は勢いを増し、直後に吹き飛んだ者達が一気に引き寄せられる。何が起きたのかを語れば、単純に林檎が真空空間を生み出し、一気に周囲の敵を風で巻き込む様に引き寄せただけである。そして林檎は更に術式を宙に展開すると。

「耐えて見せろ――ソル・ブラストォォォォォォッッ!!」

 地上の太陽と同じタイミングで灼熱の爆発が巻き起こり、寄せられた者は無論だが遠くに居た者達も丸ごと焼き払い、吹き飛ばす。炎に巻かれた者達まで無慈悲に吹き飛ばされ、彼女の近くは焦土と化している。

 焼き焦げた大地の上に仁王立ちで彼らを蹂躙し、見下ろす林檎は正しく悪魔と呼んでもおかしくは無い存在であろう。

「魔王、か……? 奴は」

「約一年、前……この世界に現れた三人の魔王……その内の一人の後継者とでも言うのか!?」

 林檎は魔王と言う呼称に対して一人にやりと薄笑いを浮かべる。何故なら彼女には覚えがあるからだ。魔王と言う存在に、そんな奴と彼女は相対した記憶がある。

「はっ、好きに呼べよ……大魔王とでも好きに、な!」

 林檎は言うと駆け出して右腕を振るって暴風を生み出して眼前の敵を薙ぎ払い、続いて左の振るって氷壁を展開して敵を押し出して更に前に突き出る。彼女はまるで太陽みたいに輝きに輝き続け、周囲を蹂躙する様に戦う。まるで、周りの目を一点に集めるように。そもそも彼女には二名ほど連れが居た筈なのに、何処にもいないのは何故なのだろう。彼女達は何処に行ったのだろうか?

 しかし今いない人間を如何こう言ったところでどうしようもない。

 林檎は地面に拳を突き出すと地面から爆炎が巻き起こり、更に周囲から火柱が数本立ち上る。それによってお手玉の様に周りの兵士達が打ち上げられていき、更に両手の前に魔法陣を展開し、帯電を初め。

「サンダァァァァァァビィィィィィンムッッ!!」

 雷光の柱が林檎の周囲を真っ直ぐに薙ぎ払い、あるものは吹き飛ばされてはある者は電撃によって筋肉まで麻痺したようだ。

 林檎はふっと背後を見る。後ろには正しく惨状、林檎によって蹂躙された者達がうめき声を上げ、凍りづいた道を、燃え盛る地面を踏みしめて林檎の元へと走り寄って来る。林檎は彼らを鼻で笑うと前を見る。少し遠いが魔導師部隊に守られる様に立つ、指導者へと目を向ける。

「……貴様……何故だ? 何故魔導師が我らに敵対する?」

「は? 貴様、愚者だな」

「愚者はどちらか! 我らはこの世界全ての魔導師、ゆくゆくは全人類の未来の為に」

 直後、炎の砲弾いやもっと巨大な炎の塊が男の顔目掛けて飛翔し、男は裏拳で炎を弾くが直撃後に大爆発が起きるが、何かが起きた様には見えない。むしろ何かしたのかとでも言いたげなほどにだ。

 そんな林檎の元に満身創痍の状態でやって来る兵士達だが、林檎は風で巻き上げるとそれらも投げ飛ばすが、投げられた兵士達は見えない障壁にぶつかって魔導師部隊の下へと落ちる。

「貴様! 何故我々の崇高な目的を理解出来ない!?」

 そう言って誰かが林檎に斧を振り下ろす。林檎は相手を睨むと巨大な爆発を起こして吹き飛ばす。

「我らは同じ仲間の筈! 貴様とて、魔導師が蔑まれ、ぞんざいに扱われる世を嘆いているのではないのか!?」

 林檎は五月蝿いと思った誰かに眼を向けることも無く風で切り刻んで遺跡の天井近くまで飛ばす。

「魔法が使えると言うだけで化物と呼ばれるこの世界! おかしいとは思わないのか? 魔法が使えぬものが多いと言うだけで、魔法使いが忌み嫌われ、あたかも人間ではない何かと扱われる今の世界を!」

「うるせぇよ愚か者」

 林檎はやかましい誰かに向けて雷光を放って吹き飛ばす。そして林檎は敵の指揮官と思わしき人間を真っ直ぐ見る。その表情は怒りに満ちている、否定に満ちている、敵意に満ちている。林檎からすれば彼らの発言は認められない。何故なら。

「手前らさ……餓鬼一人、平気な顔で泣かせたろ」

「何?」

「魔導師の未来? 人類の未来? ふざけるなよ手前……ッ!」

 林檎は目の前の魔導師部隊に向けて特大の炎の槍を投げ込み、爆炎が巻き起こって彼らの一列を凹ませる。

「平気な顔で餓鬼一人泣かせてそれでいいなんて野郎に作られる世界何ざいらねえし、そもそもんなもん私がぶっ壊す! 人類の未来を謳うならその未来を担う奴を泣かせてんじゃねえよッッ!」

「改革には犠牲が付き物だッ! その涙も、犠牲も、後の未来の為の礎となろう!」

「糞野郎……ッ! なら手前が犠牲になれッ!」

「ああなるとも! この身が、我々の望む未来の為に捧げる所存だ!」

 林檎はぎりぎりと奥歯をかみ締めて敵を睨む。林檎はその手を赤く燃やし続ける。彼女の烈火の如き怒りを表す様に左手に炎を纏って燃やし続ける。

「終れよ、んな下らない野望!」

「終らぬ、終らせぬよ! たった一人で何が出来る!」

「幾ら戦おうと、我らには千を越える軍勢が居る! 見よ!」

 林檎は仕方なしに言われた方角へと目を向ける。そこにはぞろぞろと入り組んだ通路から増援が此処に来るのが見えてくる。

「諦めろ! 幾ら貴様が優れた魔導師であろうと、この戦力差は――」

「じゃあ、こんなのどうだ?」

 林檎は術式をポケットから取り出すと地面に放り、地面を蹴り付ける。直後、術式が鼓動を初め輝きを放ち始め、炎の巨人の手が現われ、林檎は伸びて来るその腕に捕まると巨大な炎の魔神――太陽神の肩へと舞い上がる。

「焼きつくせぇッッ!」

 林檎の言葉に呼応して太陽神の腕が振るわれ、林檎の眼下が一気に焼き払われる。

「無駄だ! 貴様のしていることはただの時間稼ぎに過ぎん! 先程の魔法といい、部下達の具合といい、貴様の魔法は手抜きだ! 何を狙ってる!?」

 指導者の男の言葉に林檎は再び口端を吊り上げる。

「じゃあはじめるか」

 そう言って林檎は指を弾き――。



「出番だぞ、紗羅、フェリナ」



 直後、密集部隊の一角で立ち上る闇の柱。その中心に立つのは黒き闇の騎士。彼女は鬱々と言いながら闇の大剣を握り締めてゆっくりと歩み寄る。彼女の目前には魔導師部隊、つまりそれはフェリナの蹂躙予告にも等しく、彼女を魔法で打倒するなら最低でもSランク魔導師が一人でも必要であろう。少なくとも此処に居る魔導師には誰一人として彼女を傷つける事は出来ない。

 続く様に降り注ぐは魔力の銃弾。それらは林檎が出て来た所辺りから撃ち込まれている。その正体は勿論、紗羅。彼女は天井裏に張り付いていたらしく、風を纏って降りてくると途端に消え去り、林檎によって蹴散らされた兵士達はあっと言う間に切り倒されていく。何度も駆け巡る斬線、切裂かれていく人々、見えぬ剣閃に弄ばれる様に斬られていく。

「き、さ、まぁぁぁ!?」

「たった三人で、どうにかなるとでも!?」

「なるさ、どうにか。片方は暗殺と撹乱を得意とし、もう片方は高い魔力抵抗を持つ剣士。一番居られたくない位置に、一番居られたくない場所に置いた……それだけだ」

 林檎は太陽神の肩の上で敵を見下ろす。今このときでもフェリナは魔法が乱舞する中、傷一つ付く事無く大剣を振り回し、紗羅は疾風となって傷付居た者達に止めをしていく。

 つまり、林檎は周囲の目線を一気に集めると言う囮役を買って出たのだ。別におかしいことはない、確かに後衛である彼女は物理防御が高いわけではないが氷や風と言う防御に向いた魔法を扱える彼女は間違いなくあの三人の中で最も防衛に向いた人間、確かにこの人選は間違っていない。彼女が遺跡中から注目を集め、適当に蹴散らした後で紗羅とフェリナが一気に叩く。防御には向いてなく、攻撃に特化した二人を手駒に持っていたからこそ出来た策だ。

 林檎は眼下の者達を薄笑いで見下ろすと言い切った。

「じゃあ、はじめようか」

 じゃ、また来週。

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