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口癖は鬱

 やたらと序盤から鬱と言う単語が飛び出るので注意。貰い鬱してしまう人は気分転換してからお読み下さい。



 主役→紗羅、ヒーロー→林檎、ヒロイン→フェリナと思って読むと良いかも。

 遺跡の中、黒い影の中から黒い髪の少女がずぞぞと這い上がって来る。彼女の周囲にはローブ姿の者達に甲冑達の者達が居る。

 少女の登場に数人が腕を胸の前に置いて腰を折ってお辞儀をする。

 少女の姿は黒い髪を結い上げてポニーテールにし、黒い兵隊の様な服装に真っ白なマントを羽織っている。その瞳は闇の様なライトパープル。

「深遠の闇姫の騎士、フェリナ此処に」

「……騎士殿、姫は何処に?」

「いえ、姫様は来ないとの事で」

「何故?」

「……えと、言わないと駄目ですか」

 フェリナは苦笑いと共に頭をかく。無論、周囲からは冷たい視線を浴びせられる。

「……はぁ、やはり闇姫はまだ十六歳の子供、こう言う事の重要性など分からんか」

「所詮は姫の称号で学院を卒業した半端者、結局の所は単なる餓鬼」

「あの」

 フェリナはそれだけ言うと闇の双剣を引き抜いて近くに居た二人に刃を向ける。

「鬱だ――私の目の前で、り姫様の悪口は止めて下さいませんか?」

 ただ静かにそう言った。見れば真っ黒な刀身には禍々しい闇のオーラが纏っている。

「……失礼した、騎士殿。以後、気をつけよう」

「鬱です……気分が悪いので、近くを散歩してきます」

 そう言ってフェリナは踵を返して歩き出す。暫く遺跡の中を歩き回ると大きな溜息を吐く。

「……やっぱり、あれかー。大人の権力争いみたいなことか……姫様、それを見越して私に行けって言ったのかなぁ……ああ、また授業さぼりか……」

 フェリナは涙目でぼやくとまた大きな溜息を吐くと。

「鬱だ……」



 遺跡の内部。そこを循環する謎の集団。影からそれを黙って見詰める二人の男女が居た。

「情報通りね」

「ああ。だが林檎、何故急に彼らを調べたい、と? まあ奴等がろくなこと考えていないことは分かるが」

 刃燈はそう言って林檎に目を向ける。対する林檎は軽く鼻で笑うと。

「ちょっと、ね。色々気になる事があるのよ」

「……林檎。その言葉、信じて良いのか」

「どういう意味」

 林檎は鋭い視線を刃燈に向ける。

「林檎、お前……いや、いいや。どうでもいい」

 そう言って謎の集団を見詰める。その中で妙な騒ぎが起きる。見れば敵襲らしい。一体誰が……そう思って見て見ると。

「何だ、こいつは!? くそ、何処へ消えた!?」

「あっちへ行ったぞ! いやそっちか!?」

 兵士の誰かが指を指して敵の場所を指し示すが、悲鳴は別の場所から響く。敵は見えない、いやそれどころか何がどうなっているのか分からない。

「首を切られた! 敵は魔力武器を持っているよう」

 叫んで報告していた誰かが不意に倒れる。斬撃でもないその攻撃は――。

「狙撃か!? 敵は銃も持っているのか!」

「気を付けろ! ちょこまかと動き回るぞ!」

「くそ、何処に居るんだ!」

 と、兵士の集団から更に悲鳴が響く。見れば今度の斬線は足元へと延びている。

「足元か! 虫みたいにちょこまかと!」

「見えんぞ!? 何の魔法だ!?」

 林檎と刃燈は物陰からその様子を見ている。林檎は嵐の中心部分、そこを見てみる。

「……風に、火? 陽炎か?」

「視覚の誤認魔法、か。凄いな、動き回りながら……」

「いや、違う。これは」

 林檎は呟いてよく見る。兵士達の頭上を空気圧を踏み込んで跳躍する何かが一つ。黒いセミロングの髪を靡かせ、長いマフラーを首に巻いて腕ほどの長さで背中に靡かせている。

「風を制御して、熱を操り、彼方此方に自分の隠れ家を示して動き回っている!? なんつーやり口だ……ってか、あれは暗殺か? にしてもやたらと」

 林檎が呟いてると少女は地面に降り立つ。と、同時に一回転して近くに居た者の首を切り裂く。音を立てて倒れる兵士に反応して誰もが少女を見た。

「こ、こんな小さな子供が、だと?」

「油断するな! 子供とい」

 言った瞬間、兵士の一人はどっと倒れる。何が起きたのかと周囲がざわついていると少女がゆらりと揺れて消え去る――即ち、今のは陽炎。熱制御で生み出した蜃気楼。何処だ何処だと兵士達が首を回して探していると、少女は林檎たちの元へと降り立つ。

「……あ」

「……ん? 誰?」

 刃燈と少女が目を合わせる。とたん、少女も武器を構えて彼女達に対峙する。

「お、お前らもあいつらの仲間!? 紗羅をどうする気!?」

「いや、あの、君は誰だい? 色々な意味で」

 刃燈は冷や汗を垂らしながら目の前の双剣使いの少女――紗羅に問いを投げる。彼女の持ってる武器はかなり特徴的だった。

 右手に持ってる刀剣はガードの付いた刀と言うか、サーベルの様なと言う感じだが、もう片手に持ってる短剣は凄くごつい形をしている。刀身が二つを並べ、鍔の部分がリボルバーの弾倉になっており、柄にトリガーが付いている。つまるところは銃短剣だ。

 と、お互いに硬直していると。

「い、居たぞ! あそこだ!」

「仲間も居るぞ!」

 言われて林檎と刃燈は自分を指差すと。

「……はい?」

「捕らえろおおおおおお!」

「は、はいいいいい!?」

 行き成りの共犯者認定に二人は驚いて叫ぶが構う事無く兵士達は林檎達に迫り、紗羅は我先にと逃げ去る。

「あ、こら待てこの餓鬼!」

「待て林檎先に」

「逃がさんぞ侵入者め!」

 その紗羅をおって林檎が走り、刃燈も追うが背後から槍を投げられては持っていた盾で防ぐしかなく。

「ほほう、乙女らを逃がす為に一人盾になろうとは。英雄気取りか、小僧」

「そんな気は一切無い!」

 叫ぶと刃燈も同じく走り去る。

 一方林檎は壁から壁へと跳躍する紗羅を追って自身も風を纏った跳躍と共に紗羅を追いかける。

「くそ、なんだあれは?」

 狭い遺跡の中を蹂躙する様に、飛び回る様に跳躍していく。その様は正に飛蝗か巣を自由に巡る蜘蛛か。その動きはもはや気味が悪く、忍者か暗殺者のソレである。この女に重力はもう関係なく、壁は全てが地面らしい。その踊る(・・)様な動きは、こいつにとって蹴り飛ばせるなら全てが地面だ、とでも言わんばかりである。

 と、突然に紗羅は遺跡の一角に跳び付くと身を屈めて下を眺める。下は吹き抜けており、更に下には何かがあるらしい。林檎は紗羅の真横に降り立つと片膝を折ってその下を覗き込む。下には何かの集団が蠢いており、紗羅は食い入る様にそれを見ている。

「……おい、そこの餓鬼」

 林檎はそれを見て紗羅に話しかける。対する紗羅は気にせず集団を食い入る様に見てる。

「お前、何の目的があって喧嘩売ってるんだ? 一人か? お前、愚者か? 一人であの集団に勝てるとでも思ったのか? 大道芸がお得意な様だがあの数を一人でなんて無謀も良い所だぞ、餓鬼。その上でもう一度聞く、お前の目的は?」

 林檎は一人で上から目線でぺらぺらと喋る。対する紗羅はじぃ~っと下を見ている。林檎は舌を打つと氷の刃を生み出して紗羅に向ける。

「おい、そこの愚者。お前人の言葉が聞けるのか?」

「――ねえ」

 そこで沈黙を貫いていた紗羅が口を開く。

「紗羅、今忙しいんだけど」

「ほぉう」

 林檎は眉を吊り上げ、僅かに笑う。愉快だからではない、返答があまりにも彼女にとってはふざけたものだからだ。故の微笑、故の笑み。この状況で自分に楯突くとは良い度胸だ、ああ、反逆が望みならば消してくれよう? と言う感じだ。

「おい、そこの愚者。お前今の状況分かってんのか?」

「……何で。どうして、紗羅の邪魔をするの」

 林檎はまた舌を打つ。こいつとは会話にならない。

「お前が何しようと私は気にせんよ。寧ろ勝手にやれ、人を巻き込むな、死ぬならかってに死ね。まず前に何をしたいのか語れよ」

「……? お姉ちゃん、何言ってるのか分かんない」

 林檎は空いてる手で頭を押さえた。どうやら相手は知能が足りてないらしい。ならばよし、相手を見た目相応の人間と見ない。本気で餓鬼として扱おう。

「餓鬼、お前は何で此処に来たんだ?」

「紗羅、餓鬼じゃないよ。紗羅は紗羅だよ」

 発言者である林檎の方へ顔を向けると紗羅はそう返す。林檎は青筋を顔に浮かべて紗羅のマフラーを掴むと持ち上げて紗羅を睨む。

「おい、餓鬼。人が下手に出てるからって調子乗ってんじゃねえぞあ?」

「え? 如何したの?」

「お、ま、え、の、目的は何だつってんだよ!」

 林檎は風のバリアによる防音処置を行ってから怒鳴る。流石にこの対応に紗羅も驚いたようで。

「ひぅ!? ど、どうしたの!? 何でお姉ちゃん怒ってるの!?」

「ああ? そりゃ自分はドMだから遠慮なくぼこって下さいって事かえぇ!?」

「な、何で!? ち、違うよ! 紗羅、人を探しに来たんだよ!」

 林檎はそれだけ聞くと紗羅を地面に叩き付ける様に手放す。

「い、痛いよ!」

「知らん。そこまで聞けりゃ十分だよ餓鬼」

「餓鬼じゃない、紗羅だよ!」

「あー分かったよ、紗羅。で、お前はこんな所で人探しか?」

 林檎はもうお前に用は無いと言わんばかりに真下に居る集団を見る。

「そ、そうだよ。ティンって人。お姉ちゃんは知らない」

「知らん。如何でもいい」

 林檎は至極興味ないと言って答える。

「そもそも、そいつが此処に居る可能性なら低いぞ。此処はうち捨てられた遺跡でな、本来は内部がボロくて立ち入り禁止指定がされてる筈だ。そんな所に居るのは何らかの目的があって居る様な奴らだけだ。そいつにそんな理由があるのか?」

 林檎は言って紗羅の反応を待つ。紗羅は唖然としてその言葉を聞き。

「う、そ。じゃあ、ティン姉ちゃん、此処に居ないの……?」

「知らん。此処に居ると思うなら好きなだけ探せ。愚行ではあると思うがな」

 林檎はそう言って周囲を見渡して近くの瓦礫に飛び移る。

「お姉ちゃん、何してるの?」

「お前には関係ない」

「あるよ。紗羅、この辺まだ調べるもん。お姉ちゃんも一緒に行こうよ」

「……はぁ? 何で私が、見ず知らずの餓鬼と同行せにゃならん」

「人数は多い方が良いってよく言うじゃん。紗羅も一緒に行くよ!」

 林檎は舌を打つ。一瞬こいつを燃やして捨て置こうかとも思ったが。

(……いや、待て。こいつの錯乱能力は意外と行けるな。広域戦闘出来る暗殺者……ふむ、囮には丁度良いか?)

 と、そこまで考えてから林檎は紗羅に振り返り。

「分かった。そこまで言うなら連れてやる。私は林檎だ、役に立たんようなら直ぐにでも燃やして連中の群れの中に放置する」

「うん、うん! 分かったよ林檎姉ちゃん!」

 林檎は本当に分かってんのかと思いながら周囲の瓦礫に飛び移って下に下りていく。

 諸事情により、来週は神剣の舞手ではなく此方の更新をさせて頂きます。あしからず。再来週に神剣の舞手を上げるので少々お待ち下さい。

 フェリナが鬱鬱喧しいのにはきちんと理由があります。作中でその理由が明かされるのでお待ち下さい。彼女は至って普通の現役女子高生なのであまり虐めないであげて。作者は無遠慮に虐めるけどね!(オイ

 ではまた来週ー。

 

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