オレの『恋人』を盗むy
君と初めて会ったのは、一週間前。
ウチに突然一通の手紙がきた。
◇◆佐野圭介クン◇◆
今夜、九時にあなたが描いた『恋人』を盗みに行きます。『恋人』は、とても素敵で、盗まずにはいられません。
ごめんなさい。こんな私を許してーー。
×絵だけを盗む、絵泥棒yヨリ×
ー今、すごくドキドキしてる。
オレの絵を好きな人がいるなんて、素敵だなんて言ってくれる人がいるなんてすごく嬉しいことだ。
だけど、盗むのは許さない。オレは携帯を手にとる。
「あぁ、親父?今夜、オレの絵を盗みにくる奴がいるらしいんだ。警察呼んでくんない?」
「わかった・・・」
結構あっさりしてるなぁ。
今は―――八時三分。それまでになんとかしなくては。
〓 〓 〓
3、
2、
1、
九時だ!来る、警察は見張っている。
窓を破ってでも来ないと、『恋人』を盗めないぜ?
「今、そちらに逃げました!佐野さん、気をつけ・・・」
声はそれから聞こえなかった。
パリーンという、ガラスのわれる音で消されたんだ。
まさか――。
窓から女の子が飛びおりてきた。
「あ・・・」
彼女は、パスワードを知らないはずなのに、簡単にロックを開けて『恋人』を盗んでいった。
ニコッとオレに笑顔を見せ、どこかへ消えてしまった。
もう、いいかな。
だって、窓から飛びおりてきたときの彼女は、とても綺麗だったから。
そして、誰かに似てると思った。
クラスメイトの――・・・上夜幸絵。