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復讐の後宮妃 この恨み絶対に忘れない  私を殺した悪徳妃に復讐を ー処刑された貴妃は、二度目の人生で牙を剥く―  作者: 島崎紗都子
第2章 後宮の頂点に登り詰めるために

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1 すべてを取り戻すための一歩

 死ぬ間際、来世では二度と後宮には来たくない、貧しくても普通の身分の女子に生まれ、好きな男性(ひと)と一生添い遂げたいと願った。


 だが私は、再び後宮(ここ)へ戻って来た。



 秀女試験で選ばれた女子たちの封号が決まった。

 雪蘭となった慧雪に与えられたのは、答応であった。

 封号は雪。雪答応だ。

 呼ばれたら常に答えるという意味で答応という。

 後宮では女たちの位を皇后、皇貴妃、貴妃、妃、貴人、常在、答応と決められている。そして、階級によって衣食住すべてにおいて、与えられるものの差が違う。

 答応はもっとも格下の位だ。

 一方、義姉の慈桂は、慧雪よりも位が二つ上の、貴人。

 封号は(イェン)

 選抜試験の時に見せた、慈桂の苛烈な行動から、炎のように激しい気性だと陛下が直々に封号を与えた。

 後宮に入ったばかりの者が貴人の封号を与えられるのは珍しい。それだけで、慈桂に対する印象が陛下にとって強かったのだろう。

 後宮に入ってたちまち、慈桂は妃嬪たちの羨望と嫉妬の的になった。

 そして慈桂の他にもう一人、貴人に選ばれた者がいるが、今はまだこの場に現れていない。

 今日は試験に合格した者がそれぞれに与えられた宮殿へ行くため、女官長に呼び出されたのだが、その者は指示された時間が過ぎても、まだやって来る気配がない。

「雪蘭さん、これからは一緒ね。仲良くしてくださると嬉しいわ」

 一人の少女が慧雪に声をかけてきた。

 人懐こい笑みを浮かべる少女。

 そう、試験当日、慧雪に声をかけてきた許明林だ。

 彼女の封号は(シン)。杏常在だ。

 常在は常に陛下の側に使えるという意味である。

「親しい人がいないから心細いと思っていたけれど、雪蘭さんがいてくれたら、後宮で暮らしていく不安もなくなりそう」

 言って、明林は遠くを見つめる。

「けれど、二度とここからは出られないのね」

 その目は、故郷にいる家族に思いを馳せているのか。

 この先の一生を後宮で過ごす。後宮を出る時は死ぬ時。その覚悟でここへ来たはず。

 明林の実家は裕福ではない。家族のために後宮にやって来た明林も、本心から望んで来たわけではないようだ。

 慧雪も最初に後宮に入った時はそうであった。愛しい人と引き離され、後宮という鳥籠、いや、牢獄に囚われた。そこからの毎日は、不安と孤独に苛まれた。

 ここは抜け出すことのできない地獄。

 落ちれば底なし。

「もう、父や母にも会えないのね。弟たちにも……」

 明林は寂しげな表情を浮かべながら言う。

 後宮で生きていくには二つの方法しかない。

 おとなしく、目立たなく生きるか。

 陛下の寵愛を得て、階級をかけあがっていくか。

 平穏に一生を過ごしていきたいなら前者だ。だが、それなりの暮らしを望み、生きているという充実感に満たされるなら、後者にならなければならない。果たして彼女はどちらを選ぶのか。

 馴れ合うつもりはないが、明林を見ると、昔の自分と重なり心がざわついた。

 慧雪はため息を落とす。

「努力しだいで、家族に会う機会はいくらでも作れるわ」

 そして、明林自身の運があれば。

「え?」

 明林は首を傾げる。

「上を目指すの」

「上……って?」

 現時点で何も持たない明林が後宮で上を狙うには、皇帝陛下に目をかけて貰うしかない。それは並大抵のことではないのは慧雪はよく知っている。

「いつか家族に会えるといいわね」

 そう呟いたと同時に、女官長がやって来て集まった試験合格者の娘たちを見渡した。

「全員集まったか」

 女官長の言葉に、側にいた太監がいいえ、と首を振る。

「まだひとり、来ておりません」

 女官長は厳しい表情で太監を叱りつける。

「いったい誰なのだ。後宮の規律を乱す者は! その者に厳重な罰を」

「それが……」

 太監は女官長の側に寄り、まだやって来ない者の名をこそりと告げる。たちまち女官長の顔色が変わった。

「ふん……まあよい」

 女官長はコホンと咳払いをし、この場にいる娘たちに言う。

「これからおまえたちは与えられた宮殿に行ってもらう。各自、そこで指示をもらうように」

「まあ、すでに集まっていたのね。ふふ、支度に時間がかかって遅れたわ」

 そこへ、慈桂と同じく貴人に選ばれた、もう一人の娘がようやく現れた。

 劉麗蓮、試験の日にひときわ目立っていた娘であった。

 遅れたことに対して悪びれた様子もみせず、謝ることもなく、麗蓮はゆっくりとした足取りでみんなの元に歩み寄る。

 周りにいる者たちの口から感嘆の声があがった。

「劉麗蓮さんよ」

「さすが貴人に選ばれるだけあって、威厳があるわ」

「それに見て。素敵な衣装! 美しいわ」

「貴人のお祝いにと陛下から贈られたそうよ」

「羨ましい」

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