37 罪人となった両親
慈桂と慧雪が皇宮へ向かう日が来た。
「慈桂や、おまえが妃に選ばれるとは、さすが徐家の娘。誇らしく思うぞ」
「ありがとうございます、父上」
黄渓は感慨深く何度も頷いた。
「ええ、こんなに喜ばしいことはないわ。離れるのは寂しいけれど、きっとおまえなら陛下に寵愛され、皇宮でも出世していくでしょう」
如琳が手巾を目元にあて、娘の旅立ちに涙する。
しかし、同じく試験に合格した雪蘭のことは見向きもしない。
身を寄せ合い、喜びと別れの悲しみで涙する三人を、慧雪は冷めた目で見つめていた。
雪蘭、あなたの義姉も後宮に行くことになったわ。
安心して、必ずあなたの恨みを晴らすから。
そして、慧雪と慈桂は馬車に乗り、皇宮へ向かった。
「ほら、もたもたしないで歩け!」
馬車の外から、怒鳴りつける男の声と悲鳴が聞こえ、慧雪は窓を開け外を窺う。
市中を見せしめのように、数名の罪人が歩かされていた。
罪人を見た慧雪は目を見開いた。
縄で縛られ、鞭を打たれながら歩いていたのは慧雪の両親であった。
役人に無理矢理引きずられる母が、足をもつれさせその場に転ぶ。
「何をやってるんだ! 立て! さっさと歩け」
役人の鞭が容赦なく母を打つ。
「ひっ!」
悲鳴をあげる母の身体をかばうように、父が覆い被さった。
「は!」
母上、と呼びかけそうになり、慧雪は慌てて口元に手をあてる。
慈桂が、不審な目でこちらを見ていた。
母上、父上と呼ぶわけにはいかない。
慈桂はふんと鼻を鳴らし、引きずられていく罪人の姿を笑いながら見ていた。
「皇帝陛下が寵愛していた妃が大罪をおかしてその家族も罪人になったんだってさ。確か雪貴妃という名の妃。愚かよね」
慧雪は唇を噛みしめた。
母上、父上、必ず助けにいきます。
だからそれまで、元気でいてください。
まもなく、私は後宮に行く。
再び、あの魔の巣窟へ。




