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復讐の後宮妃 この恨み絶対に忘れない  私を殺した悪徳妃に復讐を ー処刑された貴妃は、二度目の人生で牙を剥く―  作者: 島崎紗都子
第1章 新たな人生を生きる

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32 命をかけた秀女選抜試験

 死ねという言葉に慈桂はぐっと息の飲む。

 髪から簪を抜き、自分の喉元に突き刺そうとした、その時。

「やめよ!」

 威圧的な声がその場に響いた。

 その声にみんなが振り返る。そして、顔色を変え、全員がその場にひれ伏す。

 慧雪も唇を引き結び、その場に膝を折った。

「皇太后さま!」

 なぜ、皇太后がこんな場所にという顔だ。

「騒がしい声を聞き、何事かと思いやって来たらおもしろい娘がいるではないか」

 皇太后は側仕えの侍女に目配せをする。

 侍女は慈桂の元に歩み寄り、彼女の手を取り立たせた。

 皇太后は慈桂を見る。

「後宮にこのような気骨のある女子はいない。おまえが入宮すれば、この後宮も楽しいものとなるだろう」

 皇太后の言葉を素直に受け止めた慈桂は、目を輝かせた。だが、慧雪は嫌悪もあらわに眉根を寄せる。


 相変わらず嫌な所。


 繰り返す日常、退屈な毎日、高貴な者たちにとって慈桂は、自分たちを楽しませてくれる暇つぶしの玩具になるという意味だ。人を人と思わない上位の妃によって殺された者たちを何人も見てきた。

 皇太后は口元に笑みを浮かべ、女官に命じる。

「かまわない。その者に試験を受けさせなさい」

「ですが、規則では……」

 女官たちが揃って困惑顔で、互いに目を見合わせる。

「後宮の主たる私がよいと言ったのだ。なのにおまえたちは私に逆らうのか」

「も、申し訳ございません!」

 顔色を変え、女官たちはいっせいにひざまずく。

 皇太后の前に飛び出し、慈桂も膝を折った。

「ご温情に感謝いたします!」

 皇太后の気が変わらないうちにとばかりに、慈桂は深々と頭を下げ礼を言う。だが次の瞬間、皇太后の顔から笑みが消えた。瞳の奥に、ちらりと険しい光が過ぎる。

「試験を受けることを許そう。陛下の目にとまれば後宮に迎え入れる。だが、落ちた場合はそなたに罰を与える」

「罰……」

 皇太后はにやりと口角を吊り上げた。

「おまえの命で購え」

 慈桂はごくりと唾を飲み込んだ。

「これだけ騒ぎを起こし皇宮を乱したのだ。そのくらいの覚悟はあるのだろう」

「もちろんです」

 慧雪は表情を硬くする。

 皇太后は冗談で言っているのではない。試験に落ちた場合、本気で命を奪うつもりだ。高貴な者にとって、身分の低い者の命など虫けら同然。たかが小娘一人の命などどうってことないのだ。

「ふふふ、そなたが後宮にくるのを楽しみにしているぞ」

 皇太后は愉快だとばかりに笑い立ち去った。

「あんな約束をするなんて愚かね」

 劉麗蓮は慈桂の元に寄り、腕を組んで見下ろす。

「なによ」

「ここはそんなに甘いところではないってことがすぐに分かるわ」

「だから、何が言いたいのよ」

「おまえのような者が試験に受かるはずがないと言っているの。同じ秀女試験を受けた子が処刑されるなんて縁起が悪いわ」

 劉麗蓮はやれやれというように首を振る。

「ふん、やってみなければ分からないでしょう。そういうあなただって、受かるかどうか分からないじゃない」

 劉麗蓮は高らかに声を上げて笑った。

「おまえ、私が誰だか知らないのね」

「はあ? 何様だってのよ」

「ふ、まあいいわ、試験に落ちても受かっても、おまえが待っているのは決して巣くわれることのない地獄だということを理解するでしょう」

 大勢の娘たちが慈桂のことを嘲笑う。しかし、慈桂はおかまいなしだ。妃に選ばれなければ死罪だというのに、そこまでして後宮に入りたいと思う執念は凄まじいと思った。それどころか、皇太后を前にして物怖じしない。


 嫌な予感がする。

 もしかしたら、思っていた以上に彼女は手強い相手になるのかも。

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