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復讐の後宮妃 この恨み絶対に忘れない  私を殺した悪徳妃に復讐を ー処刑された貴妃は、二度目の人生で牙を剥く―  作者: 島崎紗都子
第1章 新たな人生を生きる

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29 あなたとは一緒になれない

 自室に戻る途中、側の植木がガサリと音が鳴った。立ち止まると、周りを見渡しながら黎飛が姿を現す。

 雪蘭を心配した彼が屋敷に忍び込んだのだ。

「雪蘭、無事か?」

「ええ」

「選抜試験を受けるために宮廷に行くと聞いた。本当か?」

 黎飛は慌てた表情であった。

「なぜだ! 宮廷に行けば、二度とそこから出られなくなる。一生、後宮で暮らすことに。そうなれば、俺たちは夫婦になれない。雪蘭を幸せにするのは俺だ!」

 黎飛の両手が雪蘭の肩を掴んで揺さぶる。

「痛いわ黎飛、離して」

「ごめん」

 黎飛はぱっと手を離した。

 切実な表情を浮かべる黎飛の顔を見て、申し訳なさに胸が痛んだ。

「安心して、試験を受けるのは慈桂お義姉さまだと父上はおっしゃったわ」

「そ、そうなのか?」

「ええ」

「それならいいんだ。よかった」

 黎飛はほっとした顔をする。

 雪蘭はにこりと笑った。


 黎飛、あの時私を助けてくれてありがとう。感謝しているわ。

 あなたは本当に雪蘭が好きだったのね。けれど、私は雪蘭ではない。

 あなたの愛した雪蘭はもういない。

 ごめんなさい。私はあなたと一緒になれない。

 復讐のために、どうしても後宮に行く。一緒に暮らそうと言ったあなたとの約束は果たせない。

 だから、あなたとはお別れ。


 黎飛は真剣な顔でこちらを見つめる。

「雪蘭、驚かないで聞いて欲しい。あの時、黒装束の男を捕まえ問い詰めた。相手は答えたよ。君を殺そうとしたのは慈桂だと。自分が宮廷に行きたいがために、慈桂はならず者を雇い、君を殺すよう依頼した」

「そう」

 慧雪は静かに答えた。

「驚かないのか……?」

「いいえ、驚いたわ」

 だが、後宮にいた慧雪にとって、自分がのし上がるために他人を蹴落とし、必要とあらば命を狙い、狙われるのは日常茶飯事であった。だから、特別驚くことではない。

「雪蘭、ここにいれば殺される。だから、いっこくもはやく屋敷を出よう。二人で幸せになるんだ」

 その時、離れた場所から人の声が聞こえてきた。

「いけない、人が来るわ。はやく行って。私が姿を消した間、父上はあなたと一緒にいたことを知り怒っているの」

「ごめん、俺のせいで」

「どうして謝るの? 黎飛は私を助けてくれたわ。感謝している。だけど、今は状況が悪いわ。落ち着いたら、また会いましょう」

「分かった。雪蘭、必ず迎えに来る」

「ええ、待っているわ」


 その時には私はもうここにはいないけれど。


 去って行く黎飛の後ろ姿を見つめる慧雪の心が痛んだ。それはこの身体である雪蘭の奥底に潜む思いか。

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