26 黎飛の決意
血に濡れた剣を手に、黎飛は暗い山の中を歩いた。ずいぶんと町から遠く離れた所へ来てしまった。
雪蘭、どこだ? どこにいる?
もう大丈夫だから。雪蘭を傷つけようとした男たちは俺が片付けた。
不意に開けた場所に抜けた。その向こうに古びた門がある。
「雪蘭!」
地面に雪蘭が倒れているのを見つけ、黎飛は急いで駆けつけた。
「大丈夫か、雪蘭」
雪蘭の身体を抱え揺らすが、反応はない。
黎飛は震える手で、雪蘭の首筋に指を当てた。
黎飛はほっと息をもらす。
脈はある。意識を失っているだけだ。
頬にかかる雪蘭の乱れた髪を、黎飛は指先ですくった。
「もう大丈夫だ。雪蘭、帰ろう」
黎飛は雪蘭を抱き上げ歩き出す。
――ザッ、ザ……。
その時、門の向こうから人がやって来る気配が見えた。黎飛は慌てて木の陰に身を隠す。
女だ。
「ふ、もしかしたら、しぶとく生き延びているのではと思って確かめに来たけれど、さすがに死んだようね」
その女は足元に転がる何かを踏みつけていた。
黎飛は目を凝らし、息を飲む。
女の足元には、一人の女性が横たわっていた。
「惨めで無様な最期だこと。いい気味だわ!」
女は高らかに声をあげ笑った。
なんだ。あの女は。
女から発せられる禍々しい気に、黎飛は背筋を震わせた。
関わらない方が無難だと、静かにその場を離れる。
雪蘭さえ無事なら他のことはどうでもいい。そして、黎飛は雪蘭を背負い山道を歩き続けた。
森をさまよっていると、前方に人の気配を感じて立ち止まる。視線をあげると黒装束の男が立っていた。
男たちは抜き身の剣を手に、無言で詰め寄って来る。
「く……っ」
黎飛はぎりっと奥歯を噛んだ。
まだ奴らの仲間がいたのだ。
ちらりと視線を横に走らせる。
そこは断崖絶壁。その下は河だ。
「くそ……」
肩越しに、背中でぐったりとしている雪蘭を見る。
雪蘭、安心しろ。
必ず俺が救う。雪蘭を絶対に死なせたりはしない。
黎飛は眉根を寄せた。その目に宿るのは強い決意。
男たちがまた一歩、詰め寄る。
黎飛は動いた。
雪蘭を抱え、黎飛は迷うことなく崖から飛び降りた。




