13 疑惑が確信へ
屋敷に戻った雪蘭は、母の膳によく魚が出ていたことを思い出す。
母は魚が好物であった。
最初は、母のために如琳が魚を用意してくれたのだと思っていた。
だがよくよく考えれば、母を嫌い排除したがっていた如琳が、わざわざ母のために好物の魚を用意し膳にあげるのはおかしい。
もしかしたら、その魚に毒が入っていたのかも。
確かめてみる必要がある。
そう思った途端、いてもたってもいられず、雪蘭は厨房に走った。
厨房に入るなり、料理人たちは見下す目で雪蘭に視線をやる。
正妻の子でありながらも、雪蘭は屋敷の使用人たちにすら低く見られているのだ。
雪蘭は側にいた料理人に近寄る。
「あの、聞きたいことがあります!」
「勘弁してくれ、忙しいんだ。邪魔をしないでくれ」
取り合わずはねつけようとする料理人に、雪蘭は銀子を握らせた。男は手の中の銀子に視線を落とし、ころっと態度を変えた。
「聞きたいことってなんだ? さっきも言ったがこの通り忙しいんだ。手短に頼むよ」
「母が亡くなって七日が経ちました。母の墓前に好物だった魚料理を供えたいと思っているのですが、お願いできないでしょうか」
「魚?」
「はい、魚料理を作ってくれたら、さらにお礼をします」
お礼という言葉にその料理人は揺れ動いたようだ。だが、すぐに肩をすくめる。
「残念だが、魚なんてないよ」
「でも、母が生きていた時は、いつも出してくれましたよね」
「そんなこと言われても知らないな。それに、正妻にお出しする魚は、如琳さま自ら仕入れていた。どうしても供えたいなら、如琳さまに言ってくれ」
やはり、と雪蘭は確信する。
わざわざ母の好物である魚を、如琳が仕入れるなど、怪しいではないか。
「如琳さまが、どこで魚を仕入れていたか教えてください」
「知らないよ。何度も言うが如琳さまに聞いてくれ」
話すことはもうないとばかりに、料理人は再び自分の仕事にとりかかり始めた。これ以上、何を聞いても望む答えは得られないと判断した雪蘭は、やむなく厨房を出た。




