表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
復讐の後宮妃 この恨み絶対に忘れない  私を殺した悪徳妃に復讐を ー処刑された貴妃は、二度目の人生で牙を剥く―  作者: 島崎紗都子
序 廃された貴妃は毒酒を賜う

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1/48

1 罠にはめられた貴妃

「後宮の妃が侍衛と密通とは、これは陛下に対する裏切り。死罪に値する!」

 御前太監の言葉に辺りがざわついた。

 雪貴妃(シュエグゥイフェイ)は否と首を振り、その場にひざまずく。隣には捕吏に捕らえられた男が、後ろ手に縛られ膝をついていた。


 この男と私が密通?

 会ったこともない男なのに。


「誤解です! 私は陛下を裏切るようなことは何もしておりません。そもそもこの者と面識もございません。信じてください陛下! 陛下!」

 しんとしたこの場に、どこからかクスリと嗤う声を耳にする。

 一気に血の気が引くのを覚えた。

 即座に罠に嵌められたのだと悟る。

 (エン)国皇帝陛下の寵妃である自分を陥れるための、何者かが仕掛けた罠。罠を仕掛けた者はおそらく――。

 風にのり、ふわりと漂う伽羅の香りが鼻孔をかすめる。

「この後に及んで言い逃れとは、見苦しいわよ雪貴妃」

 現れた人物に、殺伐としたこの場の空気がさらに緊迫する。数名の侍女と太監を従えやって来た女は、唇の端を吊り上げ笑みを刻んだ。

 紅を塗った唇が毒々しい。

 派手な装いに華美な装飾。きつめの化粧と伽羅の香を身にまとう妃。

 身位は紅妃(ホンフェイ)

 雪貴妃が皇帝陛下の寵愛を得る前まで、寵妃として後宮に君臨していた。

 紅妃の父は朝廷の重臣で、実家の勢力は皇帝ですら恐れるほど。それ故、紅妃は皇帝の寵愛と実家の威光を笠に、皇后すらも押しのけ己の思うがままに後宮を支配してきた。

 我が儘で横暴、残忍で強欲、浪費家。自分が後宮でのし上がるためにはどんな手でも使う。そんな紅妃を、周りは後宮の毒花と陰口を言っていた。それほど悪評高い女だ。

「陛下、私は本当に何も!」

 雪貴妃はすがる思いで目の前に立つ李鶯(リーイン)皇帝陛下を見上げた。

 そして、絶望を知る。

 こちらを見下ろす陛下の目には、蔑みの色しかない。どんなに無実を訴えても、陛下の心には届かない。

 16歳の時に後宮に入った雪貴妃は、見た目の可憐さに反して、凛として自分の意思を強く持った少女であった。そんな彼女を陛下は気に入り、以来彼女を寵愛した。

 それから2年近く、寵妃として陛下に仕えてきた。が、こうしてひとたび寵愛を失えば、一瞬で後宮の地獄の底に突き落とされる。

 後宮の女たちは、皇帝陛下の心一つで人生を左右されるのだ。

「どうか信じてください」

 雪貴妃の言葉を遮り、紅妃は続けて言う。

「あきらめなさい、雪貴妃。証人がいるのよ」

 ちらりと紅妃が横目で侍女を見やる。それを合図にその侍女は御前に進み出た。紅妃の側仕えの侍女、蝶児(ちょうじ)だ。

 拝礼しようとする蝶児を、李鶯陛下は右手をあげとどめる。

「礼はよい。おまえが見たことを、すべて朕に話せ」

 蝶児は頷き、捕吏に抑え込まれた男を指差す。

「お答えします、陛下。暁月(あかつき)宮の裏庭で、この者と雪貴妃さまが密会しているのを見ました」

 暁月宮は雪貴妃の住まう宮殿だ。

「嘘よっ!」

 雪貴妃に口を挟む隙を与えず、紅妃は侍女の言葉を促す。

「それで、二人は庭で何をしていたの」

「はい、愛を語らい……」

 そこまで言い、蝶児は顔を赤らめその後の言葉を濁す。

「はっきり言いなさい」

「ふ、二人は愛を語らい、抱き合っていました」

 辺りがザワついた。

「それはまことか?」

 陛下の問いに蝶児は深く頷く。

「蝶児、分かっているわね。皇帝陛下に嘘をつくことがどういうことかを」

「嘘は申しておりません。二人が親密に抱き合っているのを、この目ではっきりと見ました」

 捕吏に捕らえられた男は身を捩って反論する。

「嘘だ。その女は嘘をついている! 私は雪貴妃さまと言葉すら交わしたことはない!」

「ならばなぜ、暁月宮の庭で雪貴妃と二人きりでいたのかしら?」

 紅妃が目を細めて問い詰める。

「暁月宮に来るよう宮女に言われた。指示された場所に行ったら、雪貴妃さまがいらっしゃった。本当に私は何も知らない!」

「ではおまえに暁月宮に行くよう言づてをした宮女は誰なの?」

「宮廷にいる宮女の名前など、いちいち覚えているわけがない!」

「そんな誰とも分からない宮女の言葉に、おまえは従ったというわけね?」

 紅妃はニヤリと笑う。

 禍々しい笑みであった。

「それは……だが、俺は本当に何もしていない!」

 男は必死の形相で頭を振り否定する。けれど、彼の言葉も陛下の疑いを払うには至らなかった。

 陛下の突き刺す眼差しが、雪貴妃を射抜く。

「陛下……」

「雪貴妃を投獄しろ。男は斬首だ」

「俺は何もしていない。本当だ。信じてくれ!」

 捕らえられた男は捕吏に引きずられていく。このまま処刑所に連れられ首を刎ねられるのだ。さらに、やってきた別の捕吏が雪貴妃の両腕を取り無理矢理立たせた。

「陛下、私の話を聞いてください! あの男のことなど知りません。私は潔白です! いいえ、これは何者かが私を陥れようとした罠。陛下、陛下! 信じてください、陛下ーーーーー!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ