真珠のような美しさ
作家チームZENの、電子書籍アンソロジー「秘密、黄昏、夢の中。」に収録。
夏空の彩度の高さが目を焼く。
タクシーに乗り、勾配の高い山二つ分の道を越える。次の山の中腹にその屋敷は鎮座していた。ゴシックリバイバル様式が見て取れる。広い芝生の庭の向こうに、独立した車庫が在った。
私は運転手に料金を支払い、車を降りた。入れ違いに別の車が近づいて来る。
後部座席に乗っていた男性が、料金を支払って車のドアを開けた。
「初めまして」と、彼は軽やかな声で挨拶をしてきた。「僕は、セザーヌ・アヴリーヌと言います。貴方は?」
「トリスタン・ベイリーだ。君も招待状を?」と、私は聞いた。
「はい」と青年は頷いた。
老いた執事に迎え入れられ、応接室に通された。
玄関ホールを通る時、右手に長い直線の廊下と、一定の感覚で扉があるのが見えた。あれが客間だろう。廊下にはカーペットが敷かれていない。夜は靴音が響く事になりそうだ。
壁が厚いためか、石造りの建物の中はやけに肌寒く感じた。
「これは居心地の好い」と、呟くと、「涼しいですね」と、セザーヌも言う。
招待状を持ってくる客人は、私達を含めて七名居た。
マルガリータ・クールツィオと言う婦人の次に、私の旅の目的でもある、ユゲット・ジュアンが到着した。
想像とは違う、伏し目がちの大分若い女性だった。
彼女の通った後に、纏っている香水の香りが淡く広がる。
次に到着したのは、ジーン・ヘイワード。次の客人は、ギルバート・リーキー。
最後に到着したのは、クレア・ティペットと言う老女だった。セザーヌは彼女を知っていた。
クレアの目の前に進み出ると、握手を求めた。
「ティペット先生。お目にかかれて光栄です」
早口に彼女の執筆物に関して語る彼の手を握り返し、クレアは穏やかな声で返事をしている。
さっきの執事が応接室に顔を出した。
「お食事を用意しました。ご主人様も待っておられます」
執事に招かれ、我々は食堂に向かった。
名札の置かれている席に着き、主賓席に座るはずのジョナサン・アーカム氏を待った。
執事がその席にテープレコーダーを持って来る。
「ご主人様からの、ご挨拶です」と言って、執事はレコーダーを再生した。
一体どう言った事なのだろう。




