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第3話 初めての再開

独特な模様の入ったシャツだった。


国民の誰もが知るアニメのキャラクターだ。


異世界では火炎魔法と風魔法、水魔法の超精密コントロールでそのシャツは毎日洗浄されていた。




だからこそ気づかなかった。


子供が自身の背丈の伸びに自覚がないように。


冒険の中でシャツにできたほつれや穴に違和感を感じなかった。




「か、かあさん!ちょっとだけ部屋に戻るね!ごめん!」


「こ、康平?」


ボロボロのシャツの真相に気づいた康平はドタドタと階段を駆け上がり、部屋に戻った。




「俺、本当に異世界に行ってた、のか?」


康平はとっさにスマホで日付を確認する。


6月30日。これは異世界に行って時間が飛んでいるわけではない。


その証拠にスマホのソシャゲが連続ログイン状態になっている。


「時間が飛んでないってことは異世界とこっちでの時間の流れは一致してないってことか。それにしても……!」


康平は涙目になりながらつぶやいた。


「ステラとオルトは実在する…!本当に、本当によかった」


康平はその事実に歓喜しながらも同時に、疑問が次々に湧いてきた。


「こっちで魔法って使えるのかな」


康平はこの部屋で試すのにうってつけな魔法を考え、決めた。


「よし!やってみよう」


康平は暗い部屋の真ん中で左腕を高々と上げる。




「闇を祓え!ライトニング!」




・・・


・・・・・・


・・・・・・・・




「あれ」


康平の詠唱内容とは真逆に、康平の部屋は暗いままだった。


「な、なら!ミニフレア!」


・・・・


「あ、アクアスライサー!」


・・・・・・


他にも色々詠唱を試みたがどんな魔法も発動しなかったし、どんなチート能力も発動できなかった。


「はぁ、はぁ、ダメかぁ…。やっぱりこっちの世界で俺のスペックは常人以下、か」


康平はガッカリしながら部屋のカーテンを開ける。


窓越しに見える道路を見て康平はふと思った。


「……超ひさしぶりに散歩するか」









部屋に引きこもった期間、2ヶ月。


異世界にいた期間、大体3ヶ月。


康平にとっては実に5ヶ月ぶりの現世の外だ。


「異世界の方が空が綺麗だな」


外は梅雨明けだというのに、やたらと風が強い。


道なりに10分くらい歩いていると、スーパーを見つけた。ひきこもりになる前まで母と一緒に買い物をしていたスーパーだ。


「ちょっと買い物にで…も……!!」


康平は自分の向かい側から走ってくる自転車を見て、咄嗟に塀に隠れた。


自転車は三台くらい走っていて、それを動かすのは高校生だ。


「……そういえば登校時間だったな」


3人の高校生は何をしゃべっているかまでは分からないものの、すごく楽しそうだ。


「俺も…また友達ほしいな。早く高校に行かないと」


康平はスーパーで何か買おうと思っていたけど、気が変わった。


早く帰って不登校脱却の準備をしなければ。


康平はスーパーに背を向け、自宅へ戻ろうとした。




彼はどんどん良い方向に向かっている。


彼はどん底から成り上がれる自信がある。


異世界で使っていた魔法や能力が使えないのは少し残念だと思いつつも、それでもいいと思うほどに彼には余裕があった。




しかし、心の平穏はここで崩れる。




「……君…いや、お前、は」


康平の正面には1人の女性が立っていた。


クセのないまっすぐな黒い長髪。


眉毛に少しかかるくらいの前髪。


背丈は康平と同じくらいの、女性にしては少し高めの身長。


そして、全てを見透かすような、鋭い目。


康平はその女性を知っていた。




「あら、久しぶり」




女性は不敵な笑みで康平のもとに歩みよる。


それに合わせて康平は後ずさる。


「なんで…お前がここにいる」


女性の身につける真っ黒なワンピースが強く吹く風で大胆に揺れた。




「君に倒されて以来だね、勇者コウヘイ」




魔王レイスが、現世に姿を現わした。




次回に続く

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