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四話

「霞野くん、ちょっといいかな?」

翌日、僕に話しかけて来たのはクラスでも珍しい、僕らに嫌悪感を表面上は見せずに接するクラスの人気者、橘立花だった。たしかモデルをやっているとか言っていたな。昼食を食べないから覚えていた。

女性としては背が高いが、モデルとしては低い。

「なに」

「昨日、霞野くんと霧原さん、調子悪くなって早退しちゃったでしょ?それでその後ホームルームで文化祭実行委員を決める会があって……ほんとごめん!」

「なるほどね」

誰もやりたがらないからな。

踊る阿呆に見る阿呆。同じ阿呆なら踊らにゃ損損。

祭りだ祭りだって踊るのは好きだけど、その祭りの運営なんてまっぴらごめんなので、押し付けられたのか。

「でも、霞野くんも霧原さんも、その、具合が悪くて都合がつかない日があると思うの。だから私が立候補して、大体の仕事は片付けちゃうね」

「ありがとう」

ありがとうとごめんなさい。人間やるなら大事な言葉。

橘を中心に、人の輪が出来てきた。

「御伽、おはよう」

「おはよう、詩音。僕ら文化祭実行委員会らしいよ」

「ああ、そう」

「霧原さん、腕……」

詩音の腕には新しいリストカットの跡があった。

「試しに舐めてみたの。鉄の味」

「………へえ……」

「サプリを飲むだけで、大分血の味は変わるぜ」

「そうなの?」

「えっ!それ、本当?!」

「本当、本当。ビタミンとか、鉄分とか、上手く配合されてるサプリがあってさ、それ飲み始めてから口の中切っちゃったことがあって、なんか、サラサラしてたよ」

「おもしろーい」

「立花はそんなの無くたって健康で美人だもんね!」

取り巻きの山本彩が霧原に目配せして言う。

美人の定義を自分で決めたいのか?気の狂ったサイコスルーがクラス一の美少女として男子に人気なのが気に食わないのは日常の態度の節々から感じていた。

「いやー私は無理なダイエットしてるからさ。1日に3リットル水飲んでるってよく言ってるでしょ?ちゃんと運動してる山本の血の方が美味しそう。そう言えば、昨日の殺人事件知ってる?!犯人は血を飲んでるのかも知れないんだって!山本は美味しそうだから食べられちゃうぞ〜」

「きゃー!」

付き合い切れなくなったので、席に戻る。スポーツのせいで太く肥大した山本の腿が僕の机の上にどっしり乗っかっていて不快だ。こいつワンダーフォーゲル部だったっけ。物好きな。


その後、立花が大柄な男性と一緒に居るところを深夜にクラスメイトに目撃され、彼女の立場が危うくなったりした。立花は「マネージャーだ」と言い張っていたが、「パパ活だ」「枕営業だ」

毒にしかならない電波が教室中に電波する。

教室の雰囲気に当てられて、詩音はパニック発作を繰り返すようになった。

「あの……」

「なに?早退するんだけど」

「私が保健室に連れて行くよ、私の、せいだし……」

噂の火種は、この目の前の山本だった。顔面が蒼白だ。

「保健室でなにするの?」

「え?」

「自傷行動を力で抑えられる?精神安定剤、どれ飲ませればいいかわかる?」

「……」

うなだれる山本を置いて、僕は霧原の背中をさする。


その後も、大柄な男性が行方不明になっては、全身の血抜きをされた状態で公園に遺棄される事件が2度続いた。

三度目は、小学五年生の女児の死体が花を添えて遺棄されていた。

(味にこだわりだしてる)

これはヤバい。詩音がやられる。勘は的中かもしれない。なんせあいつは血から目を逸らさなかったからな。

ドレミ公園とソラシド公園、いろは公園、ほへと公園で死体は遺棄されていた。これらの公園を円で囲むと、高級住宅街が立ち並ぶエリアだ。

『詩音、学校を休んで引きこもれ』

『わかった』

路地裏の化け物。 

地獄で鬼狩りするサイコパス。

壊れた場所がスタートライン、最初っからクライマックスな躁鬱サイケデリック!



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