第38話 アルラウドアカデミー・トーナメント本戦開始
9月24日。10時半頃。
アルラウドアカデミー・トーナメント本戦前日。
全コース授業はなく、アルラウドアカデミー・トーナメント本戦に関わりがない生徒は休日になる。
友成は正親と仮想空間内のトレーニングフィールド・アルラウドを使い、調整を行なっていた
トレーニングフィールド・アルラウドはトレーニングルームのロクスコクーンからしかログイン出来ないようになっている。
「悪いな、ラブ。休みなのに」
「いいよ、いいよ。その代わり、進級制作のゲーム作りの時は手伝ってもらうから」
「おう、その時は任せとけ」
友成は笑顔で言った。
友達っていいな。ラブはこの学園に入って最初に出来た友達。そして、初めて出来た男友達でもある。
小学校の頃は真珠と和紗と自国に戻った女の子ぐらいしか友達居なかったし。中学校は色々あって友達出来なかったし。
マジでラブには感謝している。
「よし。それじゃ、名前探しと行きますか」
「だな。この大会でお披露目しまくってやる」
『無冥』に隠された能力をみんなの前で見せながら勝ってやる。
「それは楽しみですな」
正親は悪い笑い方をしている。
「じゃあ、構えてくれ」
「了解」
友成と正親は『無冥』を構えた。
9月25日。9時30分。
アルラウドアカデミー・トーナメントの開会式が終わった。
友成を含めた本戦出場者はアルテストラ・コロシアムに向かっていた。
なんだか、緊張よりワクワクしてきたな。強い人達と戦えるからか。きっと、そうだ。そうに違いない。
アルテストラ・コロシアムは学校内にある施設。外観はイタリアのコロッセオを近代風にしたデザイン。
友成達はアルテストラ・コロシアムのエントランスに入る。
「皆さん居ますね」
案内ロボット・サルセルが訪ねてきた。
友成達は返事をする。
「それではメインステージまで案内します。着いてきてください」
サルセルがメインホールに向かっていく。
友成達は後をついていく。
アルテストラ・コロシアム。メインステージ。
メインステージには32台のロクスコクーンが設置されている。ステージ中央には全方位から見る事が可能な立体映像出力機が設置されている。立体映像出力機の前には時任教頭が立っている。
観客席にはアルテストラコースの先生達が座っている。
他の生徒は教室からライブ映像を観る事になっている。それに際して、アルテストラコースの各教室には見張りロボット・ミテルンが設置されている。
その為、トイレなどの目的以外では出れないようになっている。
「皆さん。早速ですが、注意事項などを説明していきます。1ラウンド先取した方が勝ちです。ルールはエキスパートルールを採用しております。勝利条件は相手のHPを0にするか、武器およびアイテムによる特殊勝利、相手の降参のみです」
教頭はそれ以外にも注意事項などを話していく。
長くなりそうだ。でも、仕方ないか。学校の大事なイベントだし。
ーー10分が経った。
「それでは皆さん。ロクスコクーンに入ってください」
教頭は友成達に指示を出す。
友成達は指示通りに指定されたロクスコクーンに入る。
さて、集中していきますか。
友成はロクスコクーン内で深呼吸をした。
アルテストラ・バーチャルコロシアム。
アルテストラ・コロシアムのロクスコクーンからのみログイン可能。
円形バトルステージが一つあり、観客席が囲むように設置されている。観客席上部の壁には大型モニターがある。
友成達は円形バトルステージの場外で待機している。
「皆さん、ログイン出来ましたか」
大型モニターに映る時任教頭は訊ねてきた。
友成達は返事をする。
「それでは早速ですがAブロック一回戦を始めます。1年1組・友成遊と3年1組・御手杵槍也はバトルステージへ。他の生徒達は通路から観客席に上がって試合を観戦してください」
2・3年は観客席に向かう為に通路に向かっていく。
「勝てよ」
「負けんな」
「遊ちゃんだから心配してない」
「勝ちなさいよ」
1年1組の本戦出場者達が友成を激励する。
「おうよ。任せとけ」
友成は笑顔で答えた。
負ける気なんてさらさらない。勝つイメージしかしてない。
1年1組の本戦出場者達も観客席に向かう為に通路へ向かっていく。
友成はバトルステージに上がる。御手杵は先に上がっていた。
御手杵槍也先輩。茶髪パーマでチャラい見た目をしている。身長は180センチぐらいあるだろう。
「俺に勝つか。いいね。その心意気好きだよ。でもな。勝つのは俺だよ。1年」
御手杵は言った。
「お手柔らかにお願いしますよ。先輩」
こう言うバチバチの空気感を待ち望んでたんだ。真剣勝負ってやつを。入学するまで通ってたアルテストラ・スタジオでも真剣勝負はしてたけど年の離れた年上ばっかりだったし。
「審判の社丸がバトルステージの奈落から現れます」
バトルステージ中央の床が開き、奈落から審判AI「社丸」が現れた。
社丸。公正なジャッジを下す男性型心配AI。
社丸が友成と御手杵のもとへ向かう。
開いた床は閉じる。
「お二人共ご準備完了していますか?」
友成と御手杵は頷く。
「それではAブロック一回戦を始めていきたいと思います。ルールはエキスパートルール。制限時間は3分。1ラウンド先取した者が勝者です。お二人共礼をしてください」
友成と御手杵は頭を下げる。
「始めます。よーい、スタート」
友成は「無冥」を鞘から抜きながら、御手杵から距離を取る。
御手杵は大身槍「月鬼」を構えている。
もういきなり勝負を決めるつもりか。容赦ないな。まぁ、それがいいんだけど。
「一撃必殺『突鬼』」
当たれば相手に1000ダメージを与える。避けられたら自身に999ダメージ喰らう。
御手杵は月鬼で目の前を突く。すると、穂先が超高速で友成に向かっていく。
速い。でも、魔王ラズルメルテの攻撃速度に比べたら楽勝だ。
友成は最小限の動きで避けた。
月鬼の穂先が場外の壁紙に激突する。その反動で、御手杵は999ダメージを受ける。
御手杵のHPは残り1。
月鬼の穂先が収縮していく。
「突鬼を避けただと」
御手杵は信じらないと言わんばかりの表情を浮かべている。
「はい。避けました」
簡単に避けれます。
「まぐれだ。次は当てる」
「避けますよ。次も」
あのスピードなら余裕で避けられる。何回しても同じだ。
「ぬかせ。アイテム、ダメージ=リカバリー」
御手杵は受けたダメージが回復に変更された。その為、御手杵のHPは1000に戻る。
「ずっる。まぁ、いいっすけどね」
セット枠の一つは月鬼。そして、今使ったダメージ=リカバリーでもう一つの枠は使ってる。
あの速度的に速度を上げるアイテムを三つは使ってるはず。だとすると、残りのセット枠は二つ。そして、十中八九、ダメージ=リカバリーで間違いない。だから、回復回数はあと2回。一撃必殺『突鬼』を使えるのは最大で4回。最後の一回は俺が避ければその時点で終わり。
「一撃必殺『突鬼』」
御手杵は月鬼で突く。穂先が超高速で向かって伸びる。
友成は再度最小限の動きで避ける。
当たる気がしない。きっと、他の対戦相手なら反応出来ずに突かれているのだろう。
月鬼の穂先が場外の壁紙に激突する。その反動で、御手杵は999ダメージを受ける。
「な、なぜだ。避けられるはずがないのに」
御手杵は愕然としている。
月鬼の穂先が収縮する。
「避けれるんですよ。これが」
「次は当てる。絶対に」
「当たりませんよ。絶対に」
何回しても同じですって。当たる気がしないんですから。
「アイテム、ダメージ=リカバリー」
御手杵のHPが回復する。
これであと3回。
「じゃあ、こっちも攻撃していきます」
友成は御手杵のもとへ駆け寄って行く。
「ふ、ふげてるんのか」
御手杵は迫ってくる友成に驚き、月鬼で突く。
月鬼の穂先は友成に向かって伸びる。
「大真面目ですよ」
友成は軽く避ける。
月鬼の穂先が場外の壁に激突した。その反動で御手杵は999ダメージを受ける。
月鬼の穂先が元に戻っていく。
残り2回。
「化け物か」
御手杵は友成から逃げる。
「よく言われます」
友成は笑顔で答える。
こう言う時は笑顔で答えるのが一番効くはず。
「よく言われるのはおかしいだろ。アイテム、ダメージ=リカバリー」
御手杵は逃げながらHPを回復した。
「仕方ないじゃないっすか。言われるんですから」
友成は御手杵を追う。
御手杵は立ち止まり、月鬼の穂先を友成に向ける。
「怖いわ。一年の癖によ」
「勝負に学年は関係ないですから」
友成はその隙に距離を詰める。友成と御手杵の距離は10メートルほど。
「この距離なら外さない。一撃必殺『突鬼』」
「この距離でも避けますよ」
友成は御手杵の身体の動きと視線で突いてくる場所を即座に導き出して避けた。
月鬼は場外の壁に激突する。その反動で御手杵のHPは残り1。
伸びていた穂先が元のサイズに戻っていく。
月鬼の残り回数は一回。けど、最後の一回はさせない。
「この距離で避けるなんてありえねぇ」
「すいません。ありえちゃいました」
友成は無冥で御手杵の上半身を斬った。
御手杵のHPは0になった。
「それまで。勝者1年1組友成遊」
社丸が友成遊の勝利を宣言する。
「よし」
これで初戦突破だ。思いっきり喜びたい気持ちもあるが対戦相手が前にいる。そこは弁えないと。
「……くそ。ここで終わりかよ」
御手杵は項垂れる。
「ありがとうございました」
友成は御手杵に握手を求める。
「お、おう。ありがとうな。俺に勝ったんだから優勝目指せよ」
御手杵は友成の握手に答えた。
「はい。目指します」
友成は力強く答える。
「いい返事だ」
「ありがとうございます」
勝者が敗者に出来る最大のリスペクトは勝ち続けるだと思う。だから、俺は勝ち続ける。
次回は1月10日(金)、投稿予定です。




