第12話 想い出のカードゲーム
財櫃はダリアから話を聞いた後、なぎさラボに戻る前にコンビニに立ち寄っていた。
電界島・東区のコンビニは全て無人。搬入などもロボット達が行なっている。レジはセルフレジしかない。
財櫃は自身と千戸浦の分の昼食を選んでいる。
なぎは普段同じものばっかり食べてるけど好き嫌いがあるわけじゃないんだよね。だから、栄養があるものを選ばないと。
財櫃はカゴに食べ物や飲み物などを入れて行く。
これだけあれば充分でしょ。もし、食べきれなくても冷蔵庫とかに入れておいたら、なぎが食べると思うし。
財櫃はセルフレジに行き、カゴを荷台に置く。
さて、バーコードを読んでいくか。
財櫃の視界にセルフレジの横に置かれている「プレーンカード」が入った。
プレーンカードは何も書かれていない無地のカード。カードゲームのパックを購入して、パックの中に入っている転写用バーコードを転写機械「トランスファーマシーン」のバーコードリーダーで読み取る。
その後、プレーンカードをトランスファーマシーンにセットすると、読み込んだデータがプレーンカードに転写される。
子供達が大人達の買い占めや転売などでカードを手に入れて遊ぶ事が出来ない事を防ぐためにカード会社が合同で開発した機械らしい。
財櫃はプレーンカード10枚入りの袋を見た。
懐かしいな。あの時は遊も可愛かったのに。ふと、昔の事を思い出した。
小学一年の頃、学校では「クロスワールド・ナラティブ」のカードゲームが男女問わずに流行っていた。みんなは楽しそうに遊んでいた。しかし、私は遊んでもらえなかった。理由は実家がゲーム会社で金持ちだからいいカードをいっぱい持ってるからずるいとか大会で大人に混じり優勝を何度もしていて強いから嫌だとか色んな理由で除け者にされていた。
ある日、他のクラスの少年が私のもとへ「クロスワールド・ナラティブ」のカードデッキを持ってやってきた。
その少年は友成遊だった。
遊は「俺、友成遊。お前強いんだろ。戦ってくれよ」と言ってきた。
私は「いいよ」と返事をした。
対戦結果は私のボロ負けだった。それに遊が使ってたデッキはストラクチャーデッキ。初心者用のデッキだったのだ。
悔しかった。大人に負けても悔しくなかったのに初めて勝ちたいと思った。
遊は「強いな、お前」と言った。
「お前じゃない。財櫃真珠」と、私は言い返した。
「そっか、ごめん。じゃあ、真珠。また遊ぼうぜ」
「いいの?」
「いいに決まってるじゃん。もう遊んだから友達だろ」と、遊はニコッと笑った。
「……友達」
「嫌か?」
「嫌じゃない。嬉しい」
「真珠が嬉しいなら俺も嬉しいよ」
「……ありがとう」と何度も言いながら泣いてしまった。
初めて友達が出来て嬉しくて泣いてしまった。
今まで一人で誰からも相手にしてもらえなかった。ずっと辛くて寂しかった。そんな辛かった気持ちが一瞬で何処かに消えてしまった。
「え、ちょっと待って。俺、酷い事言った?」
遊は泣いてる私をどうにか慰めようと慌てふためいている。
「言ってないよ。嬉しいだけだよ」
私は泣きながら答えた。
「本当に? 嬉しいのに泣くの?」
遊は困惑した表情を浮かべていた。
「うん。そうだよ」
「そっか。うーん」
遊はどうにか納得しようと悩んでいた。
財櫃は想い出を思い出しながら買ったものをレジ袋に入れていた。
あの頃の遊は可愛かったのに。今は憎たらしいだけだけど。まぁ、遊のおかげで海外の友達も出来たし、なぎとも友達になれたし。感謝はしてる。けど、本当に憎たらしいのは事実。
財櫃は買ったものが入ったレジ袋を持って、コンビニを後にして、なぎラボに向かう。
それにしても、夏はやっぱり熱い。けど、150年前までに比べたら涼しいらしい。教科書とかでしか見た事がないけど猛暑日なんてあったらしいし。気温が35度以上って体温じゃんと思う。今は科学の発展のおかげで夏の記憶が30度以上を超える事はない。
科学に感謝ってやつだ。
財櫃はなぎさラボの前に着いた。
汗でちょっと気持ち悪いな。またシャワー借りようかな。まぁ、先にお昼ご飯食べないと。
財櫃はなぎさラボに入り、パソコン前の椅子に腰掛けて、作業している千戸浦のもとへ行く。
「お昼ご飯帰って来たよ」
財櫃は部屋中央にあるテーブルの上に食べ物や飲み物が入ったレジ袋を置いた。
「ありがとう。真珠ちゃん」と、千戸浦は作業を中断して、振り向いた。
「どう致しまして」
「ダリア先輩から話聞けた?」
「聞けたよ。ゲームのキャラクターAIも心が芽生えるって。心が芽生えたキャラクターAIはLBIで保護してるらしい」
「なるほど。だから、世間にはその情報が出回ってないのか。昨日、LBI全部ハッキングしてたら知る事が出来たんだ。まぁ、時間がなかったから出来なかったけど」
「……そうだね」
なぎってたまに恐ろしい事をさらっと言う。
「まぁ、いいや。これでゲームのシナリオが変わった事や真珠ちゃんを襲った奴も納得出来る」
「うん。でもさ、仮定の話だけどキャラクターAI達がゲームのシナリオ変える事が出来るならゲームのクリア条件とか変わったりしない」
クリア条件変更ならまだしもラスボスが無敵になってたりしたら洒落にならない。
「可能性は大いにあるね」
「だよね。そうだ。遊はどうなってるの」
どこまで進んでいるんだろ。遊の事だから守護獣を5体ぐらいは倒してると思うんだけど。
「6体目の守護獣を倒したよ。守護獣はあと1匹だけ」
「6体か。流石としか言いようがないわ」
「うん、流石と思うよ。それに5体目の守護獣なんて仲間にしちゃうし」
「仲間に出来るの? 魔王の守護獣を」
そんな無茶苦茶な。でも、シナリオが変わっていたら出来るかもしれないのか。
「そうみたい。無茶苦茶だよね」
「本当。無茶苦茶」
「そんな無茶苦茶のゲームを攻略している遊ちゃんも無茶苦茶すぎるけど」
「それは昔からじゃん」
遊の意味不明な快挙の数々を挙げていったら数時間はかかる。
「それは言えてる。あ、これもらっていい?」と、なぎはサラダパスタを手に取った。
「どうぞ。食べると思って買って来たし」
「ありがとう。あ、そうだ。ご飯食べたらまたお使い頼んでいい?」
「いいけど、何?」
「メモリー・パラダイスに行ってほしいの」
「下水道から?」
もう下水道は懲り懲り。臭いし汚いし。やっぱり臭いし。
「違うよ。地上から」
「よかった。ホッとした。それで目的は?」
地上からでよかった。て言うか、普通は地上からしか行かないよね。何考えてるんだろう、私。
「図書館に行って、響野祥雲のインタビューとかを調べてきてほしいの。もしかしたら、このゲームに繋がる情報があるかもしれないから」
「わかった。じゃあ、お昼ご飯食べたら行ってくる」
「お願いします」
「了解です」
財櫃と千戸浦は昼食を食べ始めた。




