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エッセイ

爪や口で開ける人が怖い

作者: 七宝

 友人が親指だけ爪を伸ばしている。理由を聞くと、「缶が開けやすいから」だと言う。


 思わず「マジ?」と声が出た。いくら親指とはいえ、爪で缶を開けるなんてそんな⋯⋯。

「やめた方がいいよ、絶対そのうち剥がれるよ」と諭したところ、「ならば見せてくれよう」と自販機でコーヒーを2つ購入し、その場で2つとも開けると言った。


 1cmほど伸びた爪をプルタブの下に差し込み、力をかける。いくら爪と指との癒着が強いとはいえ、缶コーヒーなんて開けられるのだろうか。


 5秒ほどで1つ目が開いたのだがこの5秒、私にとっては地獄だった。怖いのだ。負荷のかかった爪がいつパリンといくか、ゾベッ(剥)といくか、気が気でなかった。たった5秒の間に私は地獄を味わい、心配させられ、尋常でないほど心臓が跳ね回った。100mダッシュと同等に思えた。息切れもしかけた。


 彼女はそんな私を気にも留めず、2つ目の缶に爪をひっかけた。


「ぎゃああああああああ!」

 爪の悲鳴が聞こえてくる。

 自然と涙が出てきた。なんで目の前でこんな恐怖のアトラクションを見せられなきゃならないんだ。なんで2個も開けるんだ。これはなんの時間なんだ。と、とても悲しくなった。


 結局2つ目も普通に開いた。でも私はもうダメだ。1週間分くらい心臓が疲れた。


「缶詰も親指?」


「いや、人差し指」


 世界一つまらない会話に対して返事をしながら、彼女はコーヒーを1つ私に差し出した。


「いや俺コーヒー嫌いじゃん」


「そうだっけ?」


 10年以上の付き合いなのにそんなことも知らんのかこの爪魔人は。とまでは言わなかったが、少しショックだった。


 結局「でも買っちゃったんだから飲めよ」と無理やり渡され、目を瞑って鼻をつまんで飲み干した。職員室の味がした。


 こういった話は彼女だけではない。

 私は、歯で魚肉ソーセージの金属部分を噛み、そのまま引っ張って引きちぎるという場面をよく目にする。私の親もやる。


 おいおい、怖すぎるだろ。さっきの爪もこれも拷問シーンを見せられてるのと変わらないんだよ。やってる方はそんな無茶するつもりはないと思うんだけど、見てるこっちはいつもドキドキハラハラハラスメントなんだよ。


 そういう私もゼリーがうまく開かないときは歯でやったりもするが、まぁゼリーの蓋くらいなら許容範囲だろう。んなもんに負けるわけがない。


 ちなみに私は爪が剥がれたことがある。骨折のおまけで剥がれたので、痛かったのか痛くなかったのかよく分からなかったが、見た目は中々のものだった。爪が剥がれたという事実に絶望した記憶もある。ただ、爪がなくなると涼しくて良かった。

 本当に心臓に悪い。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 分かります! 分かりますよ、その気持ち!! 拷問見せられてる気持ちになること、あります! 「〜なっちゃったらどうしよう!」みたいな不安が、頭の中で繰り広げられる感じ…。 私の場合、健康…
[一言]  指が薄いので、プルタブは指先を突っ込んで隙間を開きつつ、指先の半分が入ったところで開けます。  爪でやるのはちょい怖いですね。  
[一言] あー分かる…よくあれに爪で行けるなと 開ける際は鍵とか薄くて硬いのを使ってますね
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