第60話『その日、異変の朝の少女』
――全ての始まりは、朝。
殺し屋との決戦の翌朝。
全ては午前6時51分から始まった。
「ふぁあああ~~!よく寝た~~。」
私は大あくびをして窓の朝風を堪能する。
イチちゃんはすでに髪をとかしている。
ラーメンの仕込みのために早起きだ。
最近、店長さんの麺も少しずつ改善されてきたし、この生活にも慣れたものだ。
昨日、取り戻した呼吸法『金魚モード』のおかげか朝から頭がすっきりする。
金魚の顔にならなくても日常生活でも多少血行が良くなって、滋養促進効果があるみたいだ。
さらに言えば昨日のトイレのおかげで、生理も消えて楽になった!
――私も登校前にお店のお掃除しよーっと。
「おはよう!イチちゃん!」
「おはよう!ヒーちゃん!」
えへへと笑うイチちゃんを見てすこし安心する。
私は昨日、あの殺し屋に勝ったのだと。
生きているのだと安心する。
ただ気がかりなのはあの言葉。
『お前はついで。
メインはもう果たされた。』
どういうことなんだろう?
もし私の襲撃の裏でとんでもないことが訪れていたりして……。
まぁいいや。
イチちゃんの髪の毛がきれいにとかし終わったことだし。
下に行って10分間くらいお店綺麗にしてから、朝ご飯を食べよう。
――それに今日は実家に帰る日だし。
しかし、今日はやけにヘリの音がするなぁ……?
何かあったのかな?
◇◇◇
お店を掃除し終わり、朝ご飯をみんなで仲良く食べた。
学校に行く準備をしていると店長さんが、手招きをしてくる。
「そういえばよ!ヒトメちゃん。
お前さんの言っていた孤児院ってあのさみだれ団子孤児院のことか?」
あの?
「え、ええ。」
「あそこの院長のばーさんは『元ここら辺を統べている3人』だ。
今では隠居して道具店のユウジさんにその席を譲ったがよ。
あの人の影響力は今でもデカイ。
地元で知らねぇ人はいなかったくらいだ。
俺らのこのラーメン屋設立する時にも世話になった。
粗相をしないようにな。これで粗品でも持っていきな!」
そういうと店長さんは1万円札をそっと私の手に忍ばせる。
「余ったら小遣いにしていいからよ!」
「あ、ありがとうございます!」
うわーうれしい。最近金欠気味だったからなぁ。
稀に現れる野良のお財布(に来た人)をぶんぶん降って小銭くらいは稼げたけど。
1万円は中学生にはありがたい。
「まぁいいもの買って会いに行きますよ!きっと私を育ててくれた人だろうし!」
おばあちゃんってことは、羊羹かな?
う~~ん、なんだかお土産のチョイス的に違う気がする。
もっと高くてなんだか効率のいいものが必要だった気がする。
ま、いっか。
「それじゃあ、そろそろ学校に行くね!」
「おう!」
「行ってらっしゃい!」
一階へと降りて、店長さんとミツおばさんたちがラーメン屋の開店準備をして。
「「いってきます!」」
私達がいつものように学校に行こうとする。
――扉を開けたその瞬間だった。
「手をあげろッッ!!貴様らは包囲されているッ!!」
拡声器でそう叫ばれ日常は秒で崩れた。
目の前にはパトカー3台。
消防車2台。
装甲車3台。
特殊懲役刑用の護送車1台。
戦車1台。
戦闘ヘリ3機。
戦闘機2機以上。
業務用ビル解体車両1台。
特殊装甲に身を包んだ警官30名。
遠距離にいるスナイパー2名以上。
火炎放射器or凍結銃を構えた特殊武装兵2名。
暗殺用の伏兵3名。
巨大アーマー兵1名。
市街地迷彩軍服の兵隊10名。
それぞれがこのラーメン屋の前の広場で厳戒態勢の武装を構えている。
どこに戦争しに行く気だと言わんばかりの装備だ。
まぁ私1人なら戦力はあちら側が劣勢だろう。
それでもよく、手早く用意したものだ。
もはや道をふさぐレベルで乗り物を用意しているとは。
――問題はイチちゃんやラーメン屋一家がある場合ならあちら側が優勢なのだ。
この場には……。
「おいおい、どーしたんだいこの騒ぎ!?」
「おぎゃーーー!!」
「おーよしよし、テキメツ。いいこだねーー!」
といった具合で向こう側が優勢だ。
ここで暴れれば、絶対にマズイ!
彼らは恐らく警察だ。
射程最大の遠距離技であるコメットで全員狙撃することはぶっちゃけできる!
だが私が暴れた後が問題だ。
もし暴れ終わった後ラーメン屋の人達が共謀罪?や公務執行妨害、借金などを負わされたらどうするんだという話。
私だけならいい。
だが無関係の彼らを巻き込むわけにはいかない。
っていうか私自身、何か悪いことやった記憶がないのにこういうことに合って理不尽な思いをしているのに彼らにまで迷惑をかけてはいけない。
おとなしく手をあげよう。
私が手をあげてイチちゃんがそれをまねした瞬間。
「確保ーーーッッ!!」
という声が朝の店前に響き渡る。
そして数十名の武装警官が私の両手を乱暴に取り押さえて、手錠を取り出し高らかに宣言する。
「7時26分!!高達ひとめ!!殺人罪の容疑で逮捕ッ!!」
――カシャンという音と共に、数十名の警察官に囲まれた私に手錠がはめられた。
「そんなのやってないッ!!」
「言い訳は署で聴く!!」
ウッザ!!
か弱い女の子を乱暴に組み伏せて、私より生命として下のくせに上から目線で偉そうと。
「イチちゃんたちに何かをしたら許さないからね!!」
私みたいに乱暴にやったら、指を一本一本ずつゆっくりへし折ってやる!!
私は無理やり起こされながら、同じように連行されていくイチちゃん達を見て、後ろにいる警官に叫ぶ!
「人殺しはやってない!
殺し屋は自害だったし!
モンスターは絶命させたけど、人は殺したことない!!」
「無駄な抵抗と言動をするな!!おとなしくしろ!!」
おとなしくしろだって!?
生意気言うんじゃない!!
国家ごときが、私の大切な人達に触れているその腕をどけろッ!!
いい加減頭に来たんで腕に力を込めて、手錠を破壊しようとする。
「やめとけやめとけ。それはやっちゃあいけないことだ。お嬢さん。」
「ですね。」
どこかで聞いたことのある声が私の脳に響き、動作を止める。
その人たちはゆっくりと私の元へ向かってくる。
二人組の顔の堀が濃い男。
紺色のスーツと、緑のジャケットの大男。
紺色のスーツの男は、朱色の模様が顔にあることから石流人っていう人種。
ピッシリしてる背筋で、大体60代後半。
青い髪に厳格そうな顔で、真面目そうな感じ。
緑の大男は筋骨隆々で、メガネをかけていて人種は人間。
白髪はあるけど、若々しく大体40代後半。
ひょうひょうそうな顔をしていて、少し軽そうな感じ。
「大変、お久しぶりでございます。ヒトメさん。」
真面目そうな男はほぼ直角に私にぴっしりとした礼をする。
私の知り合いにこんな人いたっけ?
「えっと、誰?」
「月佐さん。彼女は記憶が……。」
緑の大男がゲッサと呼んだ男にどこか引っかかりはあれど思い出せない。
「いえ、亀盟君。
記憶をなくしていても礼儀は必要でございますよ。
特に、彼女の前ではね。」
な~~んだかこのやり取りを私は知っている気がする。
けど、思い出せないな……。
「あなたにとってはお久しぶりなことなので、改めて名乗らせていただきましょう。
ワタクシは梅上 月佐。
こちらは同僚の。」
「亀盟 亜鶴です。
あ、お久しぶりです。」
こっちも私の知り合い?だったらしい。
「ワタクシたちは警視庁公安部第18課 特別文明崩壊要因未然阻止課
通称『特明』です。
昔、あなたによって葬られたモンスターなどの、危険存在の後処理を請け負っていた組織と、言った方がよろしいでしょうか?」
私の……後処理??
そういえば、葬ってきたモンスターって誰が片付けていたのか?と考えれば少ししっくりする気がする。
死骸が街中にあふれていてもおかしいのに、綺麗になくなっていることがこの時代に来てからもまれにあったのだ。
つまるところ、この人達は恐らく元協力者?ってことだよね。
ゲッサと名乗った特明の刑事は、イチちゃん達を丁重にパトカーに乗せるように周りの警察官に指示した後、私に向き直る。
「いやはや、積もる話はありますが少々厄介なことになりましてね。
詳しくは護送車にてお話いたします。
あなたが倒してしまった存在によって現在、あなたに殺人の容疑がかかっているので。
こちらへ。」
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この物語の『更新』は現状『毎週金、土、日』に各曜日1部ずつとなります。
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本日のヒトメさんによる被害/買い物
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いつもの朝ごはん:塩が効いていて旨い




