第2話『息をするように壊滅をもたらす少女』
「おじゃまーす。」
廊下を抜けて事務所のドアを破壊しながら開けると、すでに臨戦態勢?らしくみんながすでに銃を構えていた。
すごく息の合った店員さんだね!
「おい女ァ止まりやがれ!!」
でも、いい歳の大人が勤務中に銃のおもちゃで遊ぶなんて……。
しかも四人……。
マシンガンにハンドガンかー……。
「どこの組のもんだかわからねぇが殺っちまぇ!!」
私に向かって銃弾が放たれる。
玄関ドアという割と硬い盾がちょうどよく転がっているから引っ掴んで銃弾をガードしつつ、ずんずん進んでいく。
この狭い場所、銃の硝煙と音で相手は自分の五感を削ぐなんて、大丈夫かな?
私すぐそばにもういるんだけど……。
あとこういう危険なおもちゃを使うのは、ちょっと良くないので……。
ドアをこう持ち替えまして……。
「よいしょーーーー!!」
「「グァアェ!!」」
屈強な男達の汚い悲鳴を、玄関ドアのスイングでかき鳴らす。
危険なおもちゃを使う人はこうやって対処するのが一番効果的なんです。
最終的に残ったのは肉体が『く』の字に曲がりぴくぴく悶えている四人。
私はその中で一番いいスーツを着てそうな若い人へしゃがみこんで聞いてみる。
「あなたたちのボスはこの奥にいるの?」
「あが……が、がぁ」
「まったく……おきなさいよ~。そんなに強くやってないよ~。」
と軽く破砕音がするタイプのビンタをする。
口から奥歯が転がったけど、きっと乳歯か何かだろう。
「奥にいるのかな?」
「い、ぁす。」
いるっぽいね。
この奥の扉か......。
まぁ扉の先にダイナマイトとかしかけられたらいやだし。
数少ない服?であるこの布が燃えたら嫌だし。
それにこの感じで銃口を向けられるのも嫌だから~……。
近くにあるこの机を使わせてもらおう!
~ヒトメちゃんの素晴らしい交渉術講座!~
1.まず相手の大体の位置を聞きだしたら、机を掴みます。
2.そのあと机をソフトボールを投げる要領でブン投げます。
3.壁と扉を破壊したのを確認したら、机の下敷きになった相手に近寄り心地のいい笑顔を向けましょう。
この時、相手へ気持ちで負けてはいけないので机を踏みつけて、しっかりと下敷きになった相手の目を見ましょう。
4.『お金とセーラ服を貸してください♡』とちゃんとあざとく言いましょう、女子力たっぷりにね!
5.相手が可愛さに涙を流して首がもげるんじゃないか心配になるくらい、上下に振ってきたら交渉終了です!
お疲れさまでした~~。
◇◇◇
襲撃から数十分後!
かくして(社会の)ゴミ掃除とお金(4万円)と服を借り、店員さん全員が頭を地面に擦りつけ感涙しながら、私を見送ってくれた!
いや、いい店だったな~!
また来よう!
一つ文句があるとすれば借りた服の素材が薄いことだ……。
なんだか学校用のセーラー服じゃないみたい……。
まだあの布を上に羽織っておかないと寒い!
そして下着はさすがにここで借りるとキモイって気が付いたので、適当に店員さんの無事だった服を破いてお相撲さんの『まわし』の要領で作った。
あと胸にも、さらしを巻いた。これで擦れる心配はない!
服屋さんに行くまではこれで代用しなきゃな~~……。
まだ少し寒いし、こんな薄いセーラー服だと激しく動いただけで塵と化しちゃうよぉ~……。
まーー、服屋さんを探すのもいいけど……。
ここが『どこ』なのか?そして今は『いつ』なのか……。
一番重要なのは彼氏であるサイムを探すこと!
あの馬鹿にぎゅ~~っと!してもらえば『どこ』とか『いつ』とか、この世のすべてが関係ないもん!!
私の墓地スタートする以前の詳しい記憶を思い出せれば楽なんだけど……。
なんかもやがかかって思い出せない。
ただ、これだけははっきりしている。あいつにいちゃいちゃする!目的はすべてそれ!
どんなことがあっても好きは変わらないもん!
――だから探しまくらなきゃ!大好きなサイムに対する手がかりを!!
◇◇◇
まずここがどこなのかだ。
いくらどんなに離れていても愛情は揺るがないとはいえ、私は今すぐにでも会いたい。
会って抱きしめて話がしたい。
必要なのは情報だ。
こういう時は交差点とかに場所が書いているはずなんだ。
歩道橋とかに看板があるはず……まずはそこから…………。
人のいる気配を辿り入り組んだ道を歩いていく。
なんだかこういう道を私は慣れ親しんだ感じがする。
私のいた町も似た感じの道が多かったのだろうか……?
道を進んでいくと交差点に出た。
あとは看板を探し…………。
――ん?
あそこ……あそこのメガネの女の子…………。
何、道の真ん中にいるの!?
目の前にあからさまに2トンくらいあるトラック差し迫ってきてんだけどッ!?
座り込んでる!?まさか足くじいたの!?
まずい!!
トラックがあの子をひき殺すまであとちょっと!何とかしなきゃ!!
――――そう思ったら私の身体すでに動いていた。
ガードレールをアッパーで上空へ殴り飛ばし、文字通り直線距離で小さな少女へと駆け寄る。
私の耳に『キィイイイーーン』という耳鳴りが聞こえる。
――わずかな記憶を手繰り寄せる、この敵は知っている!
こういうド畜生生物トラックさんは1種類しか存在しない。
こいつは異世界トラックさんだ!急ブレーキなんて絶対にない!
捕食するとき以外はカメレオンみたいに変色して、周りに溶け込むからまず見つかるわけがない!
おまけにこの子を捕食できなかったら、しつこく追い回し確実に食おうとする!
異世界トラックさんとはそういう『生き物』だ!!
つまりここでそのトラックさんの生命活動を終わらせて、確実に仕留めなければいけないッ!!
私はトラックさんの前に出て左手で2トンの身体を受け止める。
「ーーッ!?」
あれ?トラックさんってこんなに強かったっけ!?
私が後ずさった!?
おかしいぞ!?
私の身体が困惑してる!?
こんなに強いわけがない!
何とかなるのか!?
「むにゃ…………ここからこの世界はアタシの物だ~……。」
この子、超音波にやられてるな……。
「んな、都合のいい展開はあるわけないでしょ。」
私もあまり長時間ここにいるべきじゃないなぁ……。
でも私の声に反応して後ろの子も気づいてくれたみたいだ。
「大丈夫?怪我ない?」
うわ、顔可愛い~ッ!あとじっくり堪能しよ~!
「な、な、なに??これ......??」
「ん?あーーー確か……これは異世界トラックさんだね。
トラックに擬態している金属モンスターだよ。」
実際の種別的にはミミックさんに近いけどね。
「こいつはモンスターで人は乗っていない。
道路に迂闊に飛び出した若者を好物としているの。」
とりあえずこれを押し返しながら説明を続ける。
何なのかちゃんと教えて安心させなきゃ……。
私がいる限り危険なのものじゃないよ~って!
「トラックさんは車輪から出る特殊な音波を当て、異世界転生の幻想を見せて注意を逸らし人を轢き殺しながら捕食すること目的としたモンスターだよ。」
しかし~……2トンってこんなに重かったっけ……思った以上に重いなぁ~。
片手で持てるぎりぎりって感じだなぁ……。
そろそろ決めないとマズイかなぁ~~……。
「ああ、ごめんごめん。
いつまでもトラックさんが目の前にあるのは怖いよね。」
ぱっぱと叩きのめす方法……。
こういう時の、ぶちのめす方法を思い出すんだ!
深呼吸をして、肉体へ酸素を供給する。
やるしかないんだ!気合い入れろぉ!!
「さぁって!やっちゃいますか!腕は落ちてるかもしれないけど。」
思い出せ思い出せ!2トンの鉄塊ちゃんを一発かつ最小の動きで叩き潰す方法を思い出すんだッ!!
まず、左手をトラックさんから一瞬離し右腕をねじる!
この時左足でトラックで蹴り少し押し返し一瞬距離を作る!
一発に筋肉のすべてを込めるんだ!
技を放つまでのわずかな間、腰を落とししっかり構えるんだ!!
あと筋肉をばねの様にねじるんだ!
この動き……体が思い出してきた!!
全てをねじ伏せぶっ潰す!この技の名前!!
「…………高達流闘術!
壱匹目ッ!」
体中から蒸気みたいな汗がほとばしる!!
拳に力が宿っていく!!
まだぎこちないが、トラックさんを貫通させ破壊するのには十分!!
「奥義………………デメキンッッ!!」
私の拳から放たれた右ストレートは金魚が餌を食い破るようにトラックさんを食いつくし破壊していく。
この技術の名前は『高達流闘術』。
私が開発した最上、確殺の拳法。
自称この世の生態系の頂点の拳法。
トラックさんのような『青春の邪魔をするもの達』をぶちのめすため。
私の大切な人達を守るために開発した私の技術!
――――ただ結果として確か私は……。
「あ、あ、あ…………『赤金魚』だ。
『血濡れセーラー服の赤金魚』だ!!」
通行中のおじさんが叫んだ。
あーそうそう、こういう風に言われてたね~。
懐かし~~。
でも血濡れは余計だよ~その言い方可愛くないし、殴り飛ばされたいのかなぁ~?
とりあえずだ。
空の彼方にトラックさんが爆散したのを確認する。
死滅したことを確認するのマジ大事!女子の基礎テクニックだし!
「おー、飛んだ飛んだ。所詮はただの鉄塊ちゃんだね。
そして私は、敵の存在を鮮やかに処理し、対象は絶命した。
…………なんてね。」
手を空に伸ばし指さしでトラックさんだった鉄塊ちゃんを確認。
なんとなく頭に浮かんだ決め台詞を吐く。
――青空が私を照らす中、この決め台詞は可愛くないけど心のどこかが、ちょっとすっきりした!
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この物語の『更新』は現状『毎週金、土、日』に各曜日1部ずつとなります。
ですが初回の9話まで8月6日まで一気に投稿します!
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本日のヒトメさんによる被害/買い物
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ヤ○ザの皆さん:内臓破裂や複雑骨折など
ヤ○ザの事務所:半壊