第22話『なんかいつの間にか敵を倒している少女』
私達が教室を出ると新聞部3人が休み時間なのか、待ち構えていた。
私はここいらで帰宅なのだが……。
「ナオっち!!昨日の朝の人だれ!?」
「……え?」
「あの赤い人誰なんですか?」
「すげー美人さんだったよ!!だったよ!!」
「写真撮ったっス!!隅に置けないスケコマシ教師とは思っていたっスが……。」
なんだか切迫した雰囲気だぞ?おお?
新聞部部長のヤヤさんの手には、何やら写真が握られている。
「ちょ八宝仙!!その写真見せなさい!!」
ナオト先生が取り上げた写真を私ものぞき込む。
そこに移っているのは赤い羽織とワンピースを着たネックレスをした茶色の長髪の女性だ。
普通に美人で、移っている先は喫茶店だろうか?
ナオト先生はその女性に対して非常に屈託のない笑顔だ。
どうやら昨日撮られた写真らしい。
「…………あれ……だれなんですか……。」
…………ん?ヤヤさんのこの反応。
何だろう?乙女センサーがピピンピンしてくる!
ナオト先生が明らかにあ、やばいって顔している!
顔が引きつっていて相当な事態だ!恐らく恋の!
「あ~~あれはぁ。」
この感じ、この新聞部部長のヤヤさんの少しだけ泣きそうなのをこらえるこの声の質の感じ。
男にはわからないわずかな機微!!
「……あ~さ、詐欺師だよ。昔から僕を騙そうとしてくる厄介な奴だけど?」
そしてこのナオト先生の若干、一見すると脈ありなのかわからないしゃべり方!
恐らく過去に好きだったとかそう言うのだ!
恋に嘘!昼ドラで見た!!
つまり、この感じ!!
ヤヤさんはナオト先生に『片思いぞっこんラヴきゅんきゅんきゅん状態』で、そこに昔好きだったあるいは何らかを理由に破局してしまった女が現れて、今まさにすさまじい世紀の一幕がここで繰り広げられているってことね!!
詐欺師っていうことは恐らく、彼女さんが約束を破ってそれを理由に破局!!
負い目を感じつつ、どーしようも進んでいない恋と引きずってしまった片思いで禁断な恋の教え子!!
クール系の片思い生徒と昔の女と鈍感教師、いびつな三角関係から盛り上がるこの感じ!!
――こーーーーんな面白い展開!!楽しまなければ損でしょ!!
と、心の中で反則級のガッツポーズしつつ、ほおが緩んでいくのを抑えきれない!!
野次馬根性!恋愛脳フルに回して考える!
手が出そうになる!駄目だ早まるな私!
「だから何ともないから気にしないでくれ。
あいつとは関わるべきではないから。」
「あ、そ、そうなんですか……?」
あああーーー頑張ってくれヤヤさん!
そういう禁断の恋が勝つ展開!私キュンキュンして好きなの!!
そんなに男にはわからないような顔で、泣きそうになってちゃダメ!!
うわーーーめっちゃ応援したいの!!
出しゃばりそうになる自分を腕力で押さえるッ!!
あとナオト先生その、『あいつと僕はもう赤の他人だし……でも……。』みたいな顔何!?
意味深すぎるでしょ!!
「ああ、本当にかかわるべきではない。
ヒトメさん、君もね。」
あ、やべ。明らかに出しゃばろうとしているのバレてる。
「あ、あはは。はーい。」
「この話はいったん無視して……。
ヒトメさんを校門まで送っていくよ。
あとで新聞部のみんなには話しするから……。」
「「はーい!」」
「……はい。」
ヤヤさんガンバレー!!フレー!フレー!ヤ・ヤさん!!
――――そうヤヤさんを心の中で応援しつつ、明日の説明をされつつ学校から追い出されるように、校門まで案内されて激動の半日は終わる。
帰宅途中、案の定例の鳥が私を捕食しようと落下してきたので高達流闘術壱匹目でその生涯に引導を渡し、もも肉をもぎ取り唐揚げにしてやった。
そして私は、敵の存在を鮮やかに処理し、対象は絶命した。
美味しかった。
◇◇◇
少し後、ナオトの視点
◇◇◇
どう伝えようか……。
僕が昨日の朝。
喫茶店で出会ったのは非常に危険な人物だ。
――――本気で危険な詐欺師なのだ。
騙そうと思えば世界中を騙す。
『嘘に溺れた人しか愛せない』という本当に嫌な性癖で、ありとあらゆる存在を利用し欺く。
――――色々とあって内容は省くが、奴と僕には因縁がある。
僕の初恋の相手でもあるが。
僕の仇敵でもある。
これから新聞部で話し合わなければならないが、しっかり情報を伝えないと命に関わる。
それにもともと新聞部の顧問になった理由が、師の1人である『堀岡大臣』と相談した結果、奴から守るための防衛手段。
情報を集め、組織として異能力者を集め、あの忌々しく愛おしい詐欺師への対抗手段として僕はあの部活の顧問になったのだ。
詐欺師の名前は第Ⅸ大罪『虚飾』。
正真正銘、僕を突け狙う詐欺を極めぬいた犯罪者だ。
生徒を巻き込みたくないが、下手に扱うと舞台装置とか手ごまにされかねない。
何よりもこのままだと『彼女』が危ない。
新聞部には協力してもらわないと……。
――厄介なことに奴の狙いは……おそらくは先ほどの少女、『高達ひとめ』だ。
奴らの狙いを僕は昨日、聞きだした。
最もどこまでが本当かはわからないけども。
堀岡大臣やリュフォー昔の仲間に軽く注意喚起を促しつつ、彼女と新聞部を守るため、少し協力体制を取る必要性がありそうだ。
僕も、うかうかはしていられない。
教師として、生徒を守るために策を練らなければ……。
今おそらくあの少女の周りには、少なくとも『警視庁公安部』、犯罪者『13の大罪』、諸外国の何らかの大物、内閣府、スパイ、街の大物、知恵を持ったモンスター、過去に恨みを抱くものなど多くの個人や組織がすでに罠や策謀を張り巡らせているのはずだ。
彼女自身はそんなの知ったこっちゃあないだろけど。
僕は…………いや僕と新聞部もその渦中にいるんだ。
あの少女のプロフィールを見た感じ、規格外すぎる故にそれに魅入られたもの達が光に集まる蛾のように群がって逝ってるのだ。
僕らもできることしないと、雪だるま式に増えていくこの大きな影響力に飲まれてしまう。
それが彼女の面談に出てきた『世界の危機』ってやつなんだと思う。
新聞部に自衛の準備をさせておかなければ。
マロンは特に注意しておかないと。
――そして高達ひとめ、本人にも…………。
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