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第177話『一抹の不安と祝福少女』

 

 

 私達が抱き合って喜びで泣いてる中、今まで手に入れたカードたちが突如、このベランダの宙へと舞う。

「え、なに?」

「これは……。」

 そこからカードは1つの文章を作り出す。




 

 ――そして、パン!パン!というクラッカーの音色があたりから鳴り響く。





「せーーーの!!」

「「「「「「『Happy Wedding!』

ニッちゃん、ヒトメちゃん、サイム!!

3人共、ご結婚おめでとうございます!!」」」」」」

「Huーーー!!」「おめでとー!!」「よかったねぇ~!」




 

 どこから見ていたのか?いつから見ていたのかわからないけど、みんなが拍手と笑顔と主にボロボロの姿で、祝いに来てくれたのだった。

 屋根の上や、窓や庭園の方から笑い顔でただこれを言うためだけに来たのだった。

「結構大変だったんだよ~!

ニッちゃん達の指のサイズを測るの!

ほんとにおめでとおー!」

「ムッチー……。」

 ムッチーさんが笑いながら言う。


 

「やれやれだなぁ~ガッハッハ!!」

「ほんと、人騒がせなプロポーズであります。」

 万歳ストームの2人がそう言うと彼らの嫁である蒲公英姉妹の2人が肩を持って、睨む。

 よく考えればこの2組も夫婦だ。

「あんたもボクにあれぐらいかっこつけたプロポーズしたでしょー?何、やれやれって。」

「ちょ、ケムリ……。」

「プロポーズの時のことストレージに記録しているけど、ここで再生した方が言い?」

「あの、ヒバナさん……やめてください……どうか……。

家事変わりますから、どうか。」

 微笑ましい夫婦のやりとりを見て、私たちもここまできたという実感ができる。

 


 ナオト先生と新聞部も笑いかける。

「まぁ学校は卒業してもらうがな、社会人として……。」

「せんせはとりあえず色々と鈍感さを卒業したほうがいいと思うっスけどね。」

「だねだね。」

「どゆこと?」

「……。」

 ナオト先生、後ろですごい表情でヤヤさん睨んでるけど?

 見なかったことにしよう。

 いずれあっちの恋の手助けを今度は私がしよう。

 うん。



 皆が祝う中、屋根の上からマチルダさんがベランダにおりてサイムに何か紙切れを手渡す。

「おめでとうサイム。

空気読めなくてごめんなさいね。

ひと段落したらでいいからそこにある領収証のお金払ってね。」

「え。」

「この子たちが破壊した街の修繕費。

旦那であるあなた持ちってことで、じゃあおめでとう。

頑張って稼いでね。」

「え。」

 マチルダさんはそれ以上は何も言わず、スッと通り過ぎて魔王城内へと入っていった。

 何事にも動じず、クレバーだ。

 そしてサイムはちらっと領収証をめくって、ポケットにしまう。

 一瞬真顔になってすぐデレデレした表情になる。



 


 ――……家計簿の付け方覚えようかな。





 


 ん?あそこにいるのは……みーさんだ!

 …………なんであんなに浮かない顔してるんだろ?

「お久しぶり……み。」

「みーさんどしたの?」

「ちょっと問題があって……。」

「問題?」

「詳しくは義兄に聞いてほしいんだけども……すこし困ったみ。」

 みーさんはそう言うとアルさんの後ろに隠れてしまう。



 

 



「よ!おめでとさん!

サイム、ヒトメさん、ニッちゃん。」

「アルさん!」

「アル!マジで今回、助かった!ほんと助かった!」

 おそらくこの創造主アルゴニックさんがプロポーズまでの功労者の1人だ。

「大変だったんだぜ。重婚オッケーなこの国へ導くためにみんなを配置したり、ニッちゃん達の位置を探るためにカードにGPS取り付けたり、起床時刻とかのバイタルチェックをこっそりやったりとか、みんなに現在位置を教えて試練与えたりとか。

けっこー俺、頑張ったよ!

その点を認めてくれよ!読者さん!!」

 その読者さんってのはわからないけど、本当になんだかありがたい。

 ニチと仲良くさせるために、サイムと共に今後の結婚生活のためにここまで頑張ってくれたのだ。

「まぁ、問題はあったがな……。」

「だな……。」




 

 ――あれ?





 イチちゃんがいなくない?

 こういう場面で一番祝ってくれそうなイチちゃんがいない?

 


 ――イチちゃんはどこだろう?

 

 

「アルさん、問題って何ですか?」

「イチちゃんがいないんだけど。」

 その言葉を聞いて、サイムとアルゴニックさんは困ったように顔を見合わせる。

「ヒトメ、ニッちゃん。実は一つ、事故があってな。」

「サイム、俺が言う。

どっちにしろ、その事故の落とし前を付けるのは俺だからな。」

「アル……。」



 アルゴニックさんはゆっくりと私の方を見る。



「イチジクさんに関して、ヒトメさん。

あんたに言わなきゃならんことがある。」

 声のトーンを落とし、眉間にしわを寄せる。





 


「落ちた。」

「へ?」



 


 


「……イチジクさんは、かつてのサイムと同じように『次元世界線改変装置』の中に落ちた。

恐らく未来か、過去か。

わからないけど、どこかの時空のどこかの場所にタイムスリップしてしまっている。」

 え?ええ??

 待って待って。


 

 ――どういうこと?


 

「あんたたちが最初にあった時の戦いで気絶した後。

あの装置が突如起動して一番近くにいたイチジクさんが、足を滑らして落ちたんだ。」

「え、今イチちゃんは……。」

「未来も過去を見ていたがなぜか俺の歯車で探知できなかった。

というよりかはイチジクさんが落ちた瞬間から、過去も未来もすさまじい勢いで不鮮明になってしまった。

この世界の時空が捻じれてノイズがかっている。

あの装置は、世界を創りだした俺の歯車の数段強力な装置で、イチジクさんがどこにいったかわからない。

サイムが出てきた実例があるからどこかにはいるはずだと思う。」


 

 ――わけがわからない。



 ――いや、わかりたくない。


 


 

 ――イチちゃんがそんな……。



 


「これでもあんたらが色々とやってる裏で総動員で探してきたんだ。

だが、どこにも見つからなかった。

さらにやばいのがあの装置、下手にいじくると多大な不可逆性が含まれた『パラドックス』が発生する可能性がある。

そうなったら、この次元を含む何百ものの次元が一斉に壊れる。

イチジクさん1人で、宇宙ごと壊れる危険性がある。」



 映画とかで見たことがある。


 

 パラドックス……矛盾。

 そういえば、サイムがさっき言っていた。

 この世界線に干渉してしまうって。

 もし過去に行って自分自身を殺してしまうと、本当に宇宙が壊れてしまうかもってことね。

 『親殺しのパラドックス』ってやつね。

 それが起こる可能性があるからうかつにイチちゃんを探せずにいたんだ。



 ――だから私たちの福音騒動を推し進めるしかなかった。

 


 

「本当に場所も時間もわからないんですか!?」

「わからん!だが探っている。

人が揃ってるし、結婚式の前に一度エイドスドアルームに戻って調べなければならない。

慎重にな。」

 ……一応、結婚式やってくれるんだ。



 ――納得なんてしたくない。


 

 でも創造主さんのいうことはある意味得策に見える。

 冒険社、大手電機機メーカー、鑑定士。

 確かに人はそろってる。

 できることができる今、必死に探すっていうことね。

「本当はお前さんたちがここに来るまでに見つけられると、慢心していた俺の油断だ。

本当にすまない。

心配させまいと裏で必死にみんなで探し回ったんだが、現状難しかった。

このことは俺がけじめをつける。」

 本来、怒ったり激情したりするべきなんだろうけど。

 ……告白によって幸せとどうしようもなさで、なんだか呆れの感情が表に出る。

 だが首を横に振って、創造主さんをにらみつける。

「私もイチちゃんを探しに行きます!」

「……これは全員で何とかする問題だ。

そこにいくら最上の生命体であるヒトメさんでも、手負いの状態でそこら辺をうろつかれるとはっきり言うと迷惑だ。

まず、体力を回復がてら病室に入っててくれ!」

「でも!」

「でももへったくれもあるか!迷惑や!

ええか!俺の『医』の歯車が休め、寝ろっていうレベルで筋繊維ズタズタ、骨も何本か折れている奴がそこらへんフラフラすんな!

寝てろ!あんたらに立ち向かった俺らを信じろや!」

 創造主さんが私に指をさし医務室を指差す。

 



 


 ――みんなと協力してエイドスドアルームを攻略してイチちゃんを探す。



 


 いきなりすごい剣幕で、創造主さんがそういう中。

 サイムも遠くを見つめて、息を整える音が聞こえる。

「まぁ休んでいる間に病室でできる結婚式の準備をしていけばいいさ。

俺はアル達を信じる。ヒトメ、お前も信じてくれ。

俺らの『ダチ達』をさ。」

「……わ、わかった。」

 少し不甲斐ないけどね……。

 

 

「というわけで俺達は第二エイドスドアルームの本格調査をしてイチジクさんとやらを連れ帰って結婚式に移る。

すんなり見つかるかわからないが、そういうところをしっかりこなすのが武山冒険社ってやつだからな。

見つからなかったらまた行動を考えればいい。

話し合えるうちに話うべきことを順序良くやっておく。」

「どこまでも人情深くってやつだ。

今、ユウジに頼んで救出作戦を組んでいる最中だ。

ヒトメさん、不安なのはわかるが、人命救助に関しては俺達が何とかしておく。

みーもいるし、こういう細かいことをやるのが俺達の仕事だ。

お前らはお前ららしく、幸せへの段取りを進めてくれないとこっちも仕事に手がつかねぇからよ。」

 創造主さんも胸を叩いて、空間を切り裂きその中へ入っていく。

「バイバイみ。

みーくんもイチジクさんを探すみ!」

 みーさんも本体(ぬいぐるみ)の手を振りつつ、創造主さんをおいかけて空間の隙間へと入っていく。

「私も休んでやることやったらそっちに行きます!」

「みー!」

 空間の中からみーさんの手がひらひらと降って裂け目は閉じる。




 

「イチちゃん……。」

 内心、不安がある。

 でもサイムからの告白を無下にはできない。

 式までの準備をある程度進めたら私も探そう。

 そして再開できたら驚かせてやるんだ。

 結婚したよって!



 

 ――待っててね!私も探し出すから。



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この物語の『更新』は現状『毎週金、土、日』に各曜日1部ずつとなります。

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