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第174話『最高少女と彼氏と最上少女』



 サイムッ!!

 サイムだッ!!

 今目の前にいるのは間違いなく私の彼氏であり、ニチにとっても彼氏!!

 サイムだ!!



「ずっと!!ずっと!!探し続けてきたんだ!!」



「う、嘘じゃないよね?」

「嘘だったらお前がくれた技は使えねーだろうがよ。」

 もう顔さえ忘れるほど、遠い遠い時代からこいつのために私はここまでやってきたのだ!!

 長かった長かった!!

 本当にほんとに長かった!!

 ずっと会いたかった!ずっと会いたかった!ずっと……ずっとずっと!!

「サイムに会いたかったんだよ!!」

「私だって会いたかったですよ!!なんで……。」

「へへ……、まぁ俺だって再会の感動にうちしがれたいところだけどよぉ……。」


 

 ?

 


 サイムはハルバードを構えなおす。




 

「まだ戦闘中だぜ。お二人さん?」



 


「「へ?」」

 サイムは私達へ近づく。

 肩と体をゆっくりと引いて溜めている、ハルバードを大きく振って足をばねのように折り曲げる!

 なんで!?

 なんで大好きな人と争い合うの!?

 それにこの技は!?

「武山流槍術!!参合目!!」

 この技は己の力をばねのように瞬発して打ち出す突撃の槍技!

 刺突能力が狂気的な能力だ!

 敵に囲まれたときとかに逃げ道を作るために利用する技!っていうか私がそういう目的でサイムに教えた技!!

阿曽(アソ)ッ!!」

 なんとか体をねじる!

 背筋を全力に使用し肩を強引にねじらないと回避はできない!

 それに圧倒的に中学のころより威力が高い!

 キレがあからさまにおかしい!


 

「やっぱ避けるよなぁ!」

 サイムは何がしたいんだ!?

 豪快に笑ってるし。

「サイム!やめて!争う理由なんてないじゃない!」

「そうですよ!やめましょうよ!サイム君!!」

「やめない!俺にはお前達と戦う理由がある!

それにここで俺が戦うことをやめれば、お前たちに倒されていたみんなに申し訳が立たなくなるッ!

俺は逃げるわけにはいかねーんだ!」

 何がしたいんだ!私の彼氏は!

 いつも!いつもこういう馬鹿な顔でとんでもないことをしだす!

「ほら!!かかってこいよ!!」

「いえ!なぜ傷つけ合う必要が……。」

「それも勝ったら教えてやる!

いいからかかってこいよッ!!

俺の方が強えーからよッ!!」


 

 ――なんだかせっかく再会したのにこんなバカなこと言う彼氏を見てさすがに、乙女としてイラっと来た。


 

 だってこういうのって感動する場面じゃん。

 なのにこの馬鹿はひょうひょうと『戦え』と言ってくる。

 デリカシーは中学の頃からない男だって思ってたけど、大人になってもこれなんだからさすがに、腹立つウウウ!!

「おーけーおーけー……。

わかったわ、サイム。」

「ヒ、ヒトメ?」

「お?やっとやる気に……。」

 サイムの顔が昔と同じように一瞬青ざめる。

 それでも笑顔の表情は崩さない。


 

「孤児院でやってきたみたいに、私があんたをボコボコのボコボコにしてあげる!!

私に1回たりとも喧嘩で、勝てなかったってことを思い出させてやる!!

屈服した結果、昔みたいにション便まき散らして恥をかく、その覚悟をとっととしなさいッ!!」




 

 私の様子にニチも息をのむ。

 歯ぎしりの音が響き渡り、拳を重ねる。

「私だって、サイム君をここで、ぶちのめしヒーヒー言わせて見せます!!

いつだって守られているとか思われるのは結構腹立ちますからね!!

いい加減な給料を決められ続けあなたのプレゼントを買えなかったうっぷんは、晴らさせてもらいましょうッ!!」



 


「お~、怖い怖い。

じゃあ()()ではなく()()と行こうか。

勝ってみせるぜ!2人いっぺんにかかってこい!」



 ◆◆◆



 サイムの技は基本中距離だ。

 だがなめてかかると数少ない長距離技でぶち抜いてくる。

 一番楽なのは近距離に入ることだろう。

 槍の独壇場は中距離までだ。

 そうなったらインファイトで決めれる。

 なぁに、こっちは2人。

 サイムを一方的に殴れる!

 こいつを泣かしたことは何度だってある!

 そして、無意識的に行う癖も彼女だから知ってる!

 と、思う......。

 とにかく懐に入ったらデメキンでノックアウトできる。

 だがアレは元々自衛を目的とした技だ。


 

「ニチ!!」

「わかってる!!」

 ダメージを与えるためには完全な()を作らないと!

 ()()だけども倒す!

 ニチが闘技場を駆け回る。

「高達流闘術!トサキンッ!!」

 まずは範囲攻撃で足場を潰す!!

 サイムが一気に飛び上がり、ハルバードを構え攻撃の体制を取る。

 私も飛び上がる。

 あと必要なのは、硬直!

 頭蓋の奥まで響き渡らせて見せる!

「高達流!捌匹目!オランダガシラ!!」

 一気に一丁締めでサイムの脳内の神経細胞を一瞬麻痺させる。

 あとは殴ればいい!!

 


「ヒトメ!!止まってください!!」



 下からのニチの叫び声で、何か異様なことが起こってることに気が付く。

 サイムは今脳内が麻痺され、硬直している。

 あの一瞬の隙を縫って、いつのまにかハルバードを背中に担いでいる?

 いや、それよりもさっきと同じような体勢で手を私の前にかざしている。

 その手の前、異様な感じがする。

 空間がねじ曲がっている。

 まるで何か見えないエネルギーの流れが乱回転を起こし、そしてコンマ数秒も経たない間に原子の種類が変わっているような不思議なことが起こってる。



 ――直感でわかる。



 ――この空間は圧倒的なまでに危険なものだとわかる!



 すでに拳の筋肉はサイムへ伸びている!

 反応が遅れた!

 サイムのその手の空間に触れた瞬間。

 思わず身じろいでしまう。

「う、うわぁああ!?」



 手がおかしい方向にねじ曲がっている!

 右の上腕が無茶苦茶な方向へ曲がってる!

 腕が伸びているみたいに見えるし、紐のように柔らかく空間内をゆがんで進んでいる!

 それだけじゃない!

 手の痛覚細胞が何も感じない!

 これは何!?

 


「え!?」



 気が付いたら乱回転した空間に突っ込んだ私の右手に私自身が殴られていた。

 私が私自身の攻撃を受けていたことに驚愕してサイムの顔を見る。

 


「なに……?この攻撃……。」



 サイムが意識を取り戻したのか、私を見て笑う。



01(ザ・ワン)Idアビリティ!カオスミックス!!

これが俺の能力さ!!」



 サイムが背中に担いでいたハルバードを回転するように手に持ち直し、ニチへ矛先を構える。

「武山流槍術!陸合目!六甲!!」

 まずい!ニチの攻撃、あれは横の攻撃は強いけど縦の攻撃に弱い!

 六甲はジャンプをして重力と瞬発力を利用した縦の攻撃!

 サイムの技史上、最も破壊、貫通、攻撃力そのどれもが高い!!

 落ちる横目でとらえたのはニチへ六甲が当たるところだった!

「きゃあッ!?」

「うぐ!?」





 私も地面へ叩きつけられ、転がる。

 サイムがあまりにもトリッキーな攻撃をしてきて困惑しかない。

 さらに気が付いたことがある。

 


 ――成長してる。



 技だけではなく戦術としても成長している。

 彼女としての喜びもあるけど、『師』としても成長していて少しうれしい。

 でも私も負けたくない。

 気を抜く必要はない、思い切りをぶつける。

 少なくとも今までサイムと戦闘経験からの勝利のパターンは捨てろ。

 あの感じでインファイトはダメだ。

 遠距離もダメだ。

 中距離同士が得策だけども、接近すると距離を取られかねない。



「あえて教えてやる!

俺の能力は物質を混ぜる能力。

その能力の特性上、乱回転した空間を発生させて原子同士を結合し混ぜ合わせることができる!

両手で行う能力がこれ。

そして片手でこれを行うと純粋な渦のみを発生させることができる!」

 周りからちょくちょく聞いていたけども、さっきのはそれか!

 空間を捻じ曲げて全て混ぜる厄介な能力。



 ……いや、待てよ。

 


 

 

 最適解は恐らくこれだ!



「いくよ、サイム!高達流闘術!」

「甘いぜヒトメ!武山流槍術!」


 

 わざとサイムの攻撃を誘発する!

 技を使った後は隙ががら空きなんだよ!

 その一瞬のスキを作り出すこの技!

「拾匹目!ピンポンパール」

 このハルバードを振りかざそうっていうこの動き!

 ピンチの時になったら相手の脳天を勝ち割るっていう緊急事態用の動き!

 このまま突き進む気ね!

「玖合目!浅間!」


 

 サイム、それは悪手。



「ニチ!!今よ!!」

「私も行きますよ!高達流闘術!」

 こっちは2人いる。

 浅間の攻撃は力がいるために両手を使う。

 サイムの能力は手を使う。

 それも見越して反撃とニチとの連携の()()

「高達流!リュウキン!」

 ほぼ後ろからニチの手刀がサイムへと迫る!



「まだまだやってやるぜ!!カオスミックス!!」



 私と攻撃が交差しあったハルバードが突然、火炎を渦を巻いて纏っていく!

 その炎がサイムにも伝播していき、私の拳を包むように防御をする。

 炎の鎧は全身を包む。

「あっつ!?」

 ニチの手刀も私のパンチも両方とも力をそがれた!

 なんとか別の手でサイムの浅間をガードする。

「やはり力比べだと負けるなぁ……。」

 サイムの言葉から自身が燃えているっていうのを感じない。

 まるで自らが炎だと言わんばかりだ。

「距離を取りますよ!」

「ええ!」

 瞬間的に地面を蹴りサイムの間合いから離れる。






 

 改めてまじまじと見ていると炎は全身から出ているようにも見える。

「カオスミックス解除!」

 サイムは自身にまとわりついていた炎を解除して先ほどの攻撃中の種明かしと言わんばかりに手の中に握っていたものを、見せつける。

「じゃじゃじゃじゃーーん!

あらかじめジッポー買っておいたんだよなぁ~~!

この手の中にあるジッポーを点火させて、ハルバード伝いに肉体ごとカオスミックスしておけばいい。」

「自分の身体を炎と混ぜたの!?」

「自分の身体をぐちゃぐちゃに混ぜ合わせるのは、何度もやってきたんでな。

おかげでわけあって、片目の色が青色になったり髪色が変わったり、神っぽい力とか手に入れたりしたけど問題はない!」

 勝つとか負けるとかじゃない、とりあえずやれると思った事ならどんな手段でも利用してくる……。

 っていうか神っぽい力って何よ。

 あいつ何と混ざってんの?

 そもそも炎と肉体を混ぜるっていう危険な行為を何食わぬ顔でやってんじゃないわよ。

 愛してるけども恐ろしいよ。


 


 

 ――…………私の彼氏ながら戦闘中の発想が……今まででの敵の中でぶっちぎりで狂ってる。


 


 


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この物語の『更新』は現状『毎週金、土、日』に各曜日1部ずつとなります。

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