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第172話『昔と変わらない彼らと少女』

 

「お、おにいちゃん。ご、ごめんねぇ~……。」

「い、いいってことヨ……ケホ……。」

 ソライは髪の毛をチリチリにして、倒れ込む。


 

 問題は残り4人だが、創造主と連携されると大ピンチだ!



「ヒトメ、提案があります。」

「なに?」

 ニチが後ろから、ユウジを指差す。

「アルさんを叩くためには確実に参謀であるユウジさんを倒さなければ勝てません。」

「わかってる。ユウジは昔から何かと機転がきいた。

倒さなければならない。

ニチ、私がユミさんとハナビさんを抑えとくからユウジを殴ってくれない?」

「いえ、逆の方がいいです。

私が女性陣とアルさんをひきつけます。

あなたのスイホウガンならユウジさんの知略を打ち破れるはずです。

身体的スペックからユウジさんに素早さはありません。」

「了解。

背中は任せて!」





 ◆◆◆

 ニチの視点。

 ◆◆◆


 

 ユウジさんはユミさんに守られている。

 だがユミさんの武器、あのキャノンガンは速攻でエネルギーをチャージできるようなものじゃない。

 つまり最も抑えなければならないのは、ハナビちゃんになる。



 だが肝心のハナビちゃんは背中からうねうねの触手が生えていて、雷を纏っている。

 むやみやたらに近づいたら黒焦げになる。

「高達流!コメット!」

 瓦礫を拾い指で弾く、遠距離技でとりあえずの牽制をしてみよう。

「甘いよ!ニッちゃんさん!」

 雷を纏った触手ではじき落される。

 遠距離はダメだ。

 拳で倒そうにもあの雷の中だと、難しい。

 昔よりも高電圧になってる。

 それにハナビちゃんの背中から生えている触手、正確には電気のコードだけども。

 あれは想像以上に器用かつ力がある。

 普通に脅威だ。

 思考していると、触手が一方向へと伸びていく。

 

 

 ハナビちゃんの電気触手が私へと向かう!

 ならばガードしてタックルをかます!!



「雷撃!」

「高達流!セイブンギョ!!」

 雷に撃たれて私はスーパーボールのように勢いよくはじけ飛ぶ!

 ハナビちゃん!悪いけど私はあなたを倒します!

 天井にぶつかり壁にぶつかり、乱反射にぶつかって勢いは増していく!

 問題はハナビちゃんは機械人、ロボットだ。

「もらった!迅雷光ッ!!」

 物理演算的にこの乱反射を予測している。


 

 それを踏まえた上で......。



「配合種!!」

「まず!?」

 タックルの体制を解く!

 だが反射によって生まれた勢いはそのままだ!!

「ぶっ飛ばす!!セイブンギョ+デメキン!!」

 決まった!

 ぶん殴ってノックアウトよ!


 

()()()()()!!」

「!?」

 ハナビちゃんの手に握られているのは、小刀!?

 正確に言うと任侠映画で見る『ドス』か!?

 それこの空中回転斬りの構えは!?

「桜!」

 ソライさんの奥義だ!

 ハナビちゃんもなぜ使えるの!?

 模倣とかの一朝一夕の鋭さじゃない!

 空中回転斬りと突然この鋭さの技が使われたことによって、威力が大幅に落とされた挙句、ドスの(みね)でいなされた!?

 しかもソライさんのより低い位置で技を行なって対処がしづらい!

「ハナビだってお兄ちゃんの背中を追いかけて、修行したんだから!

ハナビだって強くなったんだよ!ニッちゃんさん!!」

 や……やるじゃないですか……。

「次行きますよ!」

「ほな、俺の番やな!」

 アルさんが背後に!?

 この素早さ!間違いない!

「『速』の歯車。そして......。」


 

 アルさんが突如、私に向かってボールペンを投げつける。

 なんの変哲もないボールペンだ。





 ――何がしたい?





 ハナビちゃんは、なぜかすでに逃げている。

 まてこのボールペン、ひょっとして……。

「『巨』の歯車!ボールペンよ、大きくなあれ!」

 私の目の前にあったボールペンがコンマ数秒立たないうちに、廊下を覆い尽くさんばかりに大きくなっていく!

「デメキン!!」

 大きくなったとはいえプラスチックの塊!何も問題は……。

「『変』の歯車!

ボールペンを粘性の高い害虫駆除用のシートにコンバート!」

 うっゲェ!!

 手や身体がぬちゃぬちゃする!?

 殴ったものが、害虫をホイホイする時みたいな感じのシートに変わってる!

「『重』の歯車!過重刑!」

「ぐぉ!?」

 突然、身体が10倍くらい重くなった!?

 思わず地に伏せてしまう!

 何とか、立ち上がるが気を抜くと動けなくなる!

 私にかかる重力を重くさせられた!



「ナイス!アルさん!!

あとはハナビに任せて!!

応木流と雷撃を加えたスペシャルな技でやってやるから!」

「よし!いっちまえハナビ!!」

 ハナビちゃんがドスを片手に私へと迫る。

 身体が重力と粘性で、肉体が地面から動かない!

 このままだとやばい!





「くらえ!奥義!疾風じ」

「そこまでです!」

 すぐそこまできていたハナビちゃんを強引に体を動かし羽交締めにする!

「え!?うわああああ!!お、重いいいいいい!!」

 ハナビちゃんは機械人(ロボット)

 何が言いたいかっていうと、肉体は金属とプラスチックでできている。

 とどのつまり、素の状態で『ウルトラヘビーな体重』なのだ。

 特にハナビちゃんは姉妹達に比べると、汎用性が高く高性能すぎるがゆえに格段に重い!

 子供の頃の時点で水に入れたら沈んでしまい、私とソライさんとサイムくんが3人がかりでやっと持ち上がるレベルだった。

 あまり素早く動けられないからあらかじめ高いところに昇って、自重による位置エネルギーを利用しないと、私達に追いつけられない。

「重い!!ニッちゃんさん!やめて!ギブ!ギッッブ!!」

 この状態で『重』の歯車で重くなった私の寝技に勝てるわけがない!

 サイム君と私がいなくなっただけで、この会社はぐずぐずになる!



 いっつもそうなんだから!!

 多少強くなっても、この会社のことは誰よりも知ってる!!

 私たちがいなくちゃ、なにもできやしないんだって!!

「拘束を解いてあげる!

ソライさんと同じく部屋の隅に行きなさい!」

「は、はひぃい!」

 ハナビちゃんの拘束を解くと同時にアルさんの重力攻撃も解ける。



 ――残り3人。一気に倒す!!



 そして今もっとも叩きたいのがユウジさん。

 さらにそれを守るユミさん。



 ユミさんのキャノン砲ははっきり言うと対策なしで挑んだら一番厄介だ。

 だが隙が大きく、一発撃てばインターバルの間にユウジさんも撃ち抜くことができる。

 互いが庇いあっているなら、一番やらなくてはならないのが、同時攻撃だ。



 距離として10~15メートル前後。

 アルさんも接近してくるならアレが使える。

 私が開発した最後の高達流闘術。

「ヒトメ!私の技が発動するのと同時にユウジさんへ突っ込んで!!」

「わかった!」

 私たちがそう話す中、ユウジさんとユミさんも頷きあう。

「アル!!オレらの防御は任せた!!」

「あいよー!」

 



 アルさんが突っ込んでくる!

 相当な速度だ!

 この感じは歯車を2つ()()()()()()使ってる!

「『力』の歯車!必殺!」

 


「高達流闘術……。」



 これは最も小細工のある攻撃だ。

 そして相手が早くて力がある分だけ、効果が高い!



「弐拾匹目 ブリストル。」



 アルさんが大振りをかます。



 ここだ。



「次元極…………。

……。

……。

ん?」



 アルさんはすでに地面に情けなく倒れている。

 これが最も小細工のある技。

 相手がこちらへ向かってきた場合にできる最大限の小細工。



 簡単に言うと相撲の『うっちゃり』に近い技だ。

 


 それを高速かつ相手を地面にこかすと同時に埋めてすりつぶす。

 相手が力を引き出した同時に、肩を押し、足をかける。

 私は自分の力を抜きながら体をひねり、肘で相手の背中を小突きこけたと同時に、相手を地面へと殴りすりつぶす。

 それを目にもとまらぬ速さで行うだけの技。

 これがブリストル。

 相手の重心を目にもとまらぬ速さで奪い急所をすり潰す。




 

 アルさんが地面に伏せた間に、壁を蹴り上げてユミさんに接敵!

「させるかよ!トリオバレッツ!!」

 銃弾が迫る。それを靴を飛ばして軌道を修正する!

「私に注目している場合ですかユウジさん?」

「やべ!?」

 ヒトメもユウジさんへスイホウガンを構え終えている。

 プラズマを手のひらの中へチャージは完了したようだ。

 


 それと同時に私もユミさんへ接敵する。


 

「これは……負けたわ。」

「はは、サイコーかよ。

いやサイジョーか。」


 

「「高達流闘術!!」」



 これで終わりだ!

「拾壱匹目 スイホウガン!」

「拾玖匹目 アズマ!」

 


 ヒトメのプラズマのエネルギー弾が、私の掌底が!

 ユウジさんと、ユミさんの武器に直撃する。



 


 ――バラバラに巨大なキャノン砲と銃がぶっ壊れて、両手をあげる。





「これで勝ったのでしょうか?」

「まだ俺は負けを宣言してねーぜ?」

 アルさん!?ブリストルで完全に気絶……。

 あ!

「『医』の歯車で回復させてもらった。わりぃな。」

 だけど近づいてくれたなら!

 いや、待て!

 床に転がってるこれ!アルさんじゃない!

 呼吸をしていない!土人形だ!技を出した瞬間、すり替えられた!

 『土』の歯車の力を使って人形を作り出し、『変』の歯車で軟らかい物質へ変換し自分自身に見立てたのか!

 本体はまだ回復中……。

 どこだ!?



「出てきてください、アルさん。」

「どこですか?創造主さん。」

 私達は再び背中合わせになる。

 ぼろくなった魔王城の廊下の中。

 背中合わせでインチキ能力者の出現に感覚を研ぎ澄ます。

 アルさんも呼吸をしている。

 金魚モードでどこかにいる、その呼吸を探知しないと。




 いた!花瓶の裏!ダメージでやけに荒い呼吸音!



 「そこだ!!」





 アルさんが現れる。


 

 これで全滅だ!




 そして両手をあげて……。

「降参!」

「へ?」

「参った!やることはやったんで、別のタスクに戻らにゃならん!」

「やることはやった?

どゆことですか?」

 アルさんは仮面をニヘらと笑う。

「うーーん、まあ詳しくはおいおいわかるから言わへんけど。

君らがさっき行動で示してくれた通りって感じやな。

俺らはやることはやった。」

 そう言って、アルさんは『W』のカードを差し出す。

「これが最後のカードだ。

意味は後でわかる。

今は闘技場へ向かってやりな!」

 カードを受け取る。

 アルさんはその様子を見てうんうんとうなずき、仲間達へ肩を貸す。

 その様は19年前とまるで変っていない。



「じゃ、俺らはここで。

また後でな。」

 アルさんが笑う。

「がんばれよ!ニッちゃん!ヒトメ!」

 ユウジさんが親指を突き立てる。

「負けないでよ~!」

 ユミさんが腰に手を当ててにっかりとする。

「ここからは根気なんだよ!気張っていってね!」

 ハナビちゃんが子供のころと変わらない表情をする。

「僕らはこれからだらだらさせてもらうとするか~。

この奥をまっすぐ進んだ先の別館に闘技場があるよ。」

 ソライさんがフラフラと玄関へと向かう。

 私達もそろそろ向かわなきゃ。



「んじゃ、お二人さん!」

「「「「いってらっしゃい!」」」」

「「いってきます!」」

 魔王城の奥へと進む。

 隣にいるのはヒトメ。

 最上の少女。

 

 






 

 いざ、決戦の土地へってやつね。

 

 






 ◆◆◆

 創造主アルゴニック、ようは筆者である俺の視点。

 ◆◆◆



「すいません。ほんまにすいません。」

「なーーーに、玄関をズタズタにしてくれたんですか?

ここ来客のための玄関口ですよ?

国賓を迎えるような場所!

こういうところで暴れられては困ると散々にわたって言いましたよね?」

「ほんまにすいません!」

 俺達5人はクレイさんに正座で怒られていた。

 めちゃくちゃ、玄関をボコボコにしたことにお怒りだ。

「いや~これには色々とあるんすよ~。」

 ユウジ、その顔で言っても無駄だ。

 言い逃れ満点の胡散臭い顔だもん。

 ソライじゃなくてもわかる、変にごまかす場合じゃないって。

 だからお前はユミ以外にモテなかったんだ。

「言い訳無用です。修繕してください。」

「へい!直させていただきやす!」

 『操』『土』諸々の歯車を使って直していく。

 あ~~あれだ、『絵』の歯車がねぇ……。

 ムッチーに持たせたまんまだ。

 『時』の歯車で修復しようにも、『時空の仕組み』によって元に戻しきれねぇ。

 仕組み的に()()()()()()()()()

「ちょ、調度品は後で直すんで……。」

「いいですよ~。」



 よかった……この人をこれ以上怒らすのは怖いんだよ。





「さて、彼女たちは行ってしまわれましたが、あなた方はどうするつもりですか?」

 クレイさんもそりゃ予定が気になるだろう。

「僕らは準備。

ただしアルだけはちょっと別の予定があったんだけど、先にここの片づけした方がいい?」

「それは人命にかかわるもんでしょうか?」

 クレイさんの言葉にみな、そのことに関して俯く。

 そりゃそうやな……。

「ああ、ちょっとばかり、約1名。

第二のエイドスドアルームからどこかへ消えちまったんだ。」

「ほぅ……行方不明者ですか……。

一応、捜索隊を派遣いたしますが。

創造主であるあなたが見つけられないなら相当なものですね。」

「ああ、ヒトメさんとニッちゃん達の方も進めなきゃならねぇんで、見つかるだろうとタカをくくっていたんだが、なかなか見当たらねぇ。

『情』『知』、時空系ほぼ全ての歯車を使ってみたが無理だった。

だが行方不明になったやつが出てきた事例が存在する。」

「ふむ......エイドスドアルームですか。」

 ハナビもサッと手を上げる。

「それに関して言えばハナビのお母さんがショーワ町のエイドスドアルーム出身のロボットなんだけど。

お母さんを参考にしてハナビ達を作った第0大罪『原罪』も、何かあの事故の原因について、知ってるんじゃないかって捜索しているんだけど......。」

「だけど?」

「ヒトメちゃんにビビって感知されないように方々の街を転々としてるみたいで尻尾が掴めないの。」

「なるほど、どん詰まりですね。

と、なれば……。」

 ハナビがそう言うと、クレイさんが城内へと入っていく。

 


 


「あなたたちはあなたたちのなすべきことをしてください。

ボクもそれに関して思い当たることがあります。

ボクは禁書庫に行ってきます。

暇があれば、天空図書館の引きこもりをこちらへ呼び寄せてください。

とある書物と照らし合わせたいことがあると言えば、きっと食いつきます。

彼女にはかつて大戦時にあった、エギレシア王国の動向に関する本、とくにアーリー・ミキウス氏に関する物を中心に持ってきてもらいたいです。」

「あい、わかった。」

 さてこっちも進めるか……。



「お前らも活動開始だ。準備を進めよう。」

「「「おー!」」」

 こいつらはこいつらで何とかしてる隙に俺も捜索をしよう。

 大事になってないといいけど……。

 

 


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