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第168話『荒波の家と少女』

 


 クノレお嬢様が起きて、私達は当初の予定通り教会から魔王城へ向かうことになった。



「こちらがカードデス。」

 私達はカードを受け取る。

 カードの文字は『app』。

 あいかわらずなんなんだ?この文字は?

「あと呪いは解除しておきましたのでご安心クダサイ。」

「よっしゃああーー!!」

「解放ですね〜!」

 クノレお嬢様が鍵のようなものを懐から取り出し、私達の額に弾くように当てる。

 すると心からスッと重荷が取れる感覚がする。

 これで金魚モードが自由に使える!!


 

「あらためておめでとうござイマス。

では先で待っておりマスネ。」

「この先にサイムはいるの?」

「ええ、しっかり魔王城の闘技場の先。

牢屋にオリマス。」

 ようやく会える希望がすぐそこに。

「ただ残りの刺客は2組。

そして『福音の大罪』本人との闘い、合計で3回のbattleが待ち構えております。」

 残り3回の戦い……。

 おそらく1組はわかる。

 冒険社だろう。

 もう1組はなんだ?活劇隊か?

「それではさよならでございます、そこの神父様。

後はよろしくお願いいたします。」

「エギレシアの人達にボクの心配をされてほしくはないなぁ。

この国はボクの庭だよ?庭を荒らす前に所定の位置に戻り給え。」

 ムケイさんの言葉にクレイさんは皮肉でも言っているのだろうか?

 なんだかかっこい言い回ししたね。

 顔を隠した状態だが、ニヒルに笑っているがわかる声だ。



「では改めて、congratulation!

お祝いいたシマス。」

「お祝いいたします。」

 そう言い残して消えてしまった。



 



「さて、行きましょう。」

 私達はクレイさんと共に3人で、魔王城へと旅立つことになった。

 と言っても距離はすぐ近くだし。

 気持ちが昂りながら向かう散歩道みたいなものだ。



 

 

 ◆◆◆

 


 町は魔王城に近づくにつれて、賑わいを増していく。

 ここは大きな市場らしくいろいろなものが売っている。

「おいしそうなものが売っていますね。」

「確かに甘くていいにおい。」

 フルーツのような甘いにおいが私の花の中にスッと入ってくる。

「何か、欲しいものはございませんか?おごってあげますよ。」

「「いいんですか!?」」

 実は今無性に甘味が欲しくてたまらなかったのだ。

 クレイさんのこの発言はありがたい。

 クレイさんは甘いにおいのしている屋台の1つに行き、何か棒状のものと逆三角錐の容器を持って2つずつもってやってくる。

「クレイさん、これは何ですか?なんだかぬとぬとしてますけど……。」

「これは簡単に言ってしまえば果物をゼリー状にするまで砕いて砂糖を入れた『水あめ』です。

こっちは果汁と小麦粉を練り込んで記事を重ねて棒状にしたものです。

水あめを付けて召し上がってください。

一応こちらの水あめの容器もパリッとしていて食べることができるので、あとでどうぞ。」

 受け取ってみてにおいを嗅いでみる。

 香ばしい菓子パンみたいな感じだ。

 おいしそうだ。

「「いただきます。」」



 早速水あめに棒状の菓子を突っ込んで食べてみる。



 そしてこの棒状の菓子が何なのかようやく理解する。

 バームクーヘンだこれ!

 切り取っていないミニバームクーヘンなんだ。

 そういえばバームクーヘンは切り取っていない時棒状になってるってテレビでやっていたけど、これはそれをミニミニサイズでお手頃にやってるって感じなんだなぁ。

 水あめと合わせることにより、濃厚なうまさと香ばしさがかみ合ってる!

 それを包むように甘さが口を包むから素敵な感じがする。

 今まで食べたことのない新触感なかなり美味しい!気に入った!

「これ美味しいですね!」

「わかる!」

「ははは、これは庶民でも買えるお菓子ですよ。

もっとも甘いものが苦手なボクは、あまり食べられないんですけどね。」

 普通においしい!

 これを食べるためだけに、ここに住んでもいい!

 そう感じるくらいに私はお気に入りだ。

 それに言われていた通り水あめの入ってる逆三角錐はいわゆるモナカになっていてぱりぱりしておいしい~!

 

 

 ミニバウム棒と水あめとモナカを食べつくしたころ。

 城下町でとにかく大きな広場にやってきた。

「……ん?」

「クレイさん?どうされました?」

「いえ、ここでは祭りの時期に色々な催物(もよおしもの)の会場になることが多々あるのですが。

広場に珍しくリングが置かれてますねぇ。」

 リング?

 そう言えば石畳の広場の中心にボクシングのリングが置かれている。

「基本的に祭り以外では置かれないのですが、誰が一体……。」

 私達がリングにいぶかしんでいると、そのリングにあがる見たことがある人物達がいた。



 それは冒険社でも活劇隊でもない。



「レディーーースエンドジェントエルメン!!

高達ひとめ!草島日!とうとうここまでたどり着いたなぁ!!

俺様達の挑戦を豪快に受け入れやがれ!!」

 そこにいたのは。

 マイクを持った豪快な看守と担任の先生だった。

 そう、一本角の鬼人タクローさんとナオト先生だ。

「リングに上がってくれ。2人とも。」

 私達は言われるがまま、リングへと上がる。

「クレイ神父はリング外で待ってください。」

「了解。」

 

 

 ◆◆◆



 リングの大きさは結構大きめのリングコートだ。

 私達がリングへ登ると同時に、やじ馬が集まりだす。

 久しぶりに見たナオト先生たちは、どこか無邪気にそして大人として尊敬できるような顔つきで笑っていた。

挿絵(By みてみん)

「初めまして、そして久しぶり。

僕はナオト。高達の担任の教師だ。」

挿絵(By みてみん)

「俺様は、タクロー!かつて白野ユウジの入っていた独房の看守だ!」

「「そして我々はとあるゲームのクラン『荒波の家』!

君達に立ちふさがるものだ。」」




 また濃い登場をしたなぁ……。

 若干恥ずかしがっているのが顔でわかるぞー先生。

「え~っと……ちょっと教えてほしいんですけど、またユウジさん捕まったんですか?」

「……ええ。

私が脱獄させたわ。なんだか創造主を救出するためとか。」

「……なんだか諸々のいや~~な記憶がフラッシュバックしています……。

武山冒険社らしいっちゃらしいですけど、いつも雑に馬鹿な展開ばかりで……!

なんというか…………はぁ~~~っ……。

ため息しかでませんよ……。」

 語彙力が散漫になったニチが頭を押さえて溜息出るのもよくわかる。

 周りに馬鹿しかいないとため息を吐きたくなるよね。

 非常にわかる。

 

 

「それで聞くけど、今回は先生たちが相手になってくれるの?」

「まぁ、そう言うわけだな。」

「だがここで豪快に倒されねぇのが俺様達よ。」

 呪いも解けたし、これで思う存分ぶん殴れる!

 教師に手をあげるってのは癪だけども、私達の恋路に立ち塞がるからには全力を出す。

 だけども私がギリギリの関係がある程度で、ニチに至っては無関係だし、なんでこの2人が戦うことになったんだろ?

「なんで、先生達が相手なんですか?」

「君らにとっては特に理由はない。

だけど、僕には福音さんに協力するだけの恩がある。」

「恩?」

「僕がここまで生きてこれたっていう恩。」

 え?何その激重な恩。

 ナオト先生、一応、大罪名乗ってるやつに対してそんな思い持ってたの?

「そういえば高達はId持ちだったな?」

「そうですけど……。」

「じゃあ僕も本気でIdを使用する。

前みたいな手加減はしない。

Id持ちは『人格破綻者』ばかりだからね。

こっちも手加減はできない。」

 監獄でのことか。

「ニチさんにはあらかじめ言っておく、高達には改めて言うけど僕の能力は『ラプラスの悪魔』。

全知あるいは、因果操作の能力。

新聞部の生徒たちを倒したんだ。

ボクの能力を打ち破ることはないだろうけど期待しているよ。」

 ナオト先生から相当な気迫を感じる。

 説明をするってことは『公平・フェア』で行こうということではない。

 知らせたうえで圧倒的な力であるがゆえに、屈服させるという宣言に他ならない。

「また厄介そうな能力ですね……。」

「気合入れるよ、ニチ。」

「ええ、言われずとも。」

 


 タクローさんがマイクを持ち息を吸い込む。

「豪快に福音の名のもとに置いて!」

「デバック開始だッ!!」

「「ぶっ潰す!!」」





 ◆◆◆

 

 



 周りの観客がリングを取り囲む。

 だがボクシングって感じではない。

 なにせ、軍人、特殊能力持ちの高校教師、20歳冒険者、女子中学生。

 対戦者がこの4人だからだ。

「タクロー!前線頼む!」

「いつも通りだな!相棒!」

 タクローさんが右手で妙な構えをして銃を握りしめ、ナオト先生の盾になるように、立ちはだかる。

 その右手の構えは、まるでボクシングのグローブを握りしめるように握っている。

 そして問題は左手……緑いろのパイナップル状の物体。

 どう見ても手りゅう弾が左手に握りしめられている。

 なんだ?あの独特な戦闘ポーズは?

 あと気が付いたのだが、よく見ると2人共耳にインカムを付けている。

 誰かのサポートを受けている可能性がある。



 ――気合を入れよう。



 この2人は恐らく今まであったことのない戦闘をしてくる敵な気がする。






 

 ◆◆◆

 ナオトの視点。

 ◆◆◆

 


 ニチさん、高達……お前は知らないだろう。

 過去に僕は福音さんに救われた。

 だから全力を出す。

 僕らのチーム荒波の家はゲームで結ばれている。

 ここにはいないタクローの奥さんと、僕、そしてとある詐欺師。

 あと……。



『聞こえるかい?ナオト、タクロー。』

 インカムからの声を聴き、小さくうなずき、屋根に上った猫へ合図を送る。

 この猫は、リュフォー。

挿絵(By みてみん)

 こいつが僕らの現オペレーター。

 こいつの指示の元、僕らはゲームの要領で高達と戦う。

 教師である前にゲーマーとして攻略して見せる。

 僕らが昔の遊んでいたのはVRゲームだったけどどこまで再現できるかな……。

『ナオト、ヒトメさんが左からくる。

タクロー、ニチさんの攻撃を受け流して。』

 リュフォーの言葉通り、タクローをすり抜けてボクの左に移動した高達をロックオンする。

「高達流!」

02(ラプラス)Idアビリティ!」

 




 ――リュフォーの指示で見えているんだよ。






 高達を親指と人差し指で指差す。

 因果を操作!

 高達の死角となる頭上に操作した因果通り隕石が唐突に降ってくる。

「まず!?」

 すでに金魚モードだからか、摩擦熱を感じ取って上を向いて攻撃目標を移す。

 それと同時にタクローがニチさんの攻撃を反らす、大きな音が聞こえる。



 ここだ。



「え!?」

「な!?」

 2人を衝突させる。

 因果は変えられない。



「ファウストミラクル。

0.56秒後、隕石が落ちてくる。」



 隕石を破壊しようとして振り上げた高達のこぶしは、攻撃を反らされ勢いよく突っ込んできたニチさんへ偶然当たる。

 そしてわずかに気が動転されるとともに、隕石が高達の肩へ当たる。

「「いったぁああ~~。」」

 


 1つのとんでもない『偶然』を引き出し、確実なダメージを当たる。

 そして『偶然』を『必然』になるまでに因果を操作する。

 世界をデバックする『マンチデバッカー』と呼ばれた僕の能力だ。



 ――ひるんでいる間に、距離を取る。



 ここからだ。手の内を見せたことを考慮して……。

「おいおいどうしたもんだ!?豪快にかかってこい!!」

「「言われずとも!」」

 ヒトメさんとニチさんがタクローへ突っ込んでくる。

 タクロー、ナイスタンク。

 ヘイト稼ぎはお前の十八番だ。

 時間稼ぎができている時点で、お前が一番だ。



「高達流!リュウキン!」

 高達の手刀がタクローへ迫る!

「高達流!ニシキ!」

 側面からはニチさんのキック!





 ここだな。





「ファウストミラクル。

0.07秒後、落雷が落ちてくる。」

 素早い高達の攻撃へ対処するためには自然界の中でも相当素早い天候。

 『落雷』をぶつける!

「ッ!!?」

 落雷にビビり回避した高達は、大きく後退する。

 そしてその光と音が伝わると同時に蹴りを繰り出そうとしていた、ニチさんの攻撃も鈍る。

 チャンスは作ったぞ。

「ぬん!!」

 よし。

 そこへすかさず、タクローが拳銃でニチさんを薙ぎ払う!

『タクロー、お前隙ができてるぞ。ヒトメさんへ発砲。』

 俯瞰してみているリュフォーからの指示で、高達が足をばねのように曲げて突っ込もうとしているのに気が付く!

「あいよ!」

「パンダチョ……きゃぁ!?」

 弾丸が高達の左脚をかすめて出血した!

 さすが軍人だなタクロー!

 今の様を見たら、先生がほめてくれるぞ!

 

 

 


 まだまだいくぞ!

 高校生以来の大勝負!

 生徒と言えども容赦なく絶対に勝利する!



 それがゲーマーだ!

 

 

※ブックマーク、評価、レビュー、いいね、やさしい感想待ってます!

この物語の『更新』は現状『毎週金、土、日』に各曜日1部ずつとなります。



 ■■■ ■■■

本日のヒトメさんによる被害/買い物

 ■■■ ■■■

ミニバウム棒:結構しっとり重いタイプ、お昼ご飯として出されても文句が言えない(値段不明)

モナカと水あめ:甘さが抜群!

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