第166話『神父とバチバチの少女』
ドソウ魔国、城下町の宿。
時刻は夕方。
夕方だったので本格的な捜索は明日以降にして宿を探し、今はその宿のベットの上。
食事は今運んでいるからいったん保留で2人でベットの上であぐらをかき、今まで集めたカードを見ていた。
「まず、万歳ストームさんから『H』のカード。マチルダさん達から『in』のカード。」
「蒲公英姉妹から『ed』と、新聞部&白野トラッパーズから『y 』のカード。」
「そしてムッチーから『g!』のカード……。」
「ナニコレ?」
『H』『in』『ed』『y 』『g!』
続けて読むと『Hinedy g!』??
なんかわからない文章だ。
「これどういう意味?」
「さぁ……?」
とにかくこの町に潜伏している福音を探さなきゃ。
となれば。
「明日からのことなんだけども。
どこから探す?」
「この城下町は魔王城が中心からやや北に位置し、さらに北に山脈と教会がある作りになってるようですね。
私達が今いるのが南側。
入り組んでいますので、ここからちょっとしたところにいるらしい図書館で紹介されてもらった『クレイさん』を尋ねましょう。
この町で隠れられそうな場所を教えてもらいましょう。」
「でも民家とかにいたらどうする?」
「それはあり得ません、あったとしても不自然な出入りが必ずあります。」
ニチは手帳に何かを書きだす。
「私達が倒したのは万歳ストームさん、マチルダさん達、蒲公英姉妹、新聞部&白野トラッパーズ。
彼らの人数的にどうしても大きめの場所にいないとダメなんです。
倒された後元の場所に返されたとしても、私達が通りがかるまでに待機していた場合、不自然な引っ越しなどで足が付きますし。
アルさんがテレポートして食材などの補給を行っていたとしても、人が引っ越してずっと姿を見せないのはあまりにも不自然すぎます。」
な、なるほど。
福音の発言から、私達の喧嘩が終わった時点にはすでにみんな招集されていた。
と、なればその待機までの間ここにいたと考えればいいね。
「じゃあ、クレイさんに会いに協会の分社まで行きましょう」
「了解。」
「明日は忙しくなります。サイム君に合わなきゃダメです。
決着を付けましょうヒトメ。」
「ええ!」
いよいよ明日だ。福音を倒す。
――サイムに会うんだ。
そう思い、眠りにつく。
◆◆◆
――?
これは夢?
いつもの夢の感じがしない……。
誰かが泣いてる。
嗚咽を漏らすように。
何も見えない。
あれ?でもここを知ってる気がする。
「こ、これが真実だったんだ……。」
泣いてる誰かの声だ。
目が見えてるようで見えてない。
なんだ?この夢は……。
「……が……を……。」
誰の声だ?
「すべてはあるべくして、あるべきこと、だった。」
あれ?この人を私は知ってる気がする。
「すべては、……が始まりだったんだ。
……が原因で……創ったんだ……。」
なんだ?所々聞き取りづらいような……。
そういえば私の身体が動かない……?
いつもの夢みたいにマルさんも出てこない。
あれ?なんだろう……あそこにあるのは何だ?
目が見えないのに何かを感じ取れる。
あれは……私?私の身体??
ん?なんで私が私の身体があるのを感じ取っているんだ?
待って。
なんだ?
なんだか、胸がざわめいてる。
「ああ……。
全部、全部『予定調和』だったんだ。
最初っから……これが……。」
何かが体にまとっていくような感覚が……。
これはいったい?
いや、違う。
私は忘れている。
そしてこれは忘れている何かだ。
何か。
あれ?この目の前にある物……ここってもしかして……。
……墓所?
見えるこれは『高達家之墓』?
◆◆◆
なんだか寝つきが非常に悪い翌日。
夢を見ていた気がするけどなんだか思い出せない。
すでに朝ご飯を食べ終わり分社に向けて歩き始めていた。
再会へのドキドキと決着へのドキドキを胸に、言葉も交わさず歩いていた。
周りはレンガ造りの建物が多くあるが、まれに石造りや木の作りなど雑多な文化が融合しているように見える。
人も多く、喧騒が絶えない。
あと通行人がマッチョな人などが多く喧嘩などが、つようそうな人が多そうな国だ。
しばらく歩くと背の高い建物が見えてきた。
魔王城や向こうの本社ほどじゃないけどそこそこ立派な建物だ。
大きな扉を開けて、中へ入る。
とても開けており荘厳なステンドグラスに照らされた教会内は、参拝者の長椅子や中央には何かを祭っているのか神聖そうな像が置いてある。
大理石の床その像の手前には神父様がぽつんと立っている。
教壇に近づき、神父様へ頭を軽く下げる。
「◆■、▽▽?」
な、なに言ってるのかわからない……。
「なに言っているのかわからないんですけど……。
ニ、ニチ!なんて言っているの?」
「え、えっと……。
うまく聞き取れなくて……。」
「『祈りに来ましたか?』と言いました。」
「ああ、そうそう。そういう……。
あれ?私達の言語ですね。」
そういえば、そうだ。
「キョクガ国からのお客様ですね。
意地悪してすいません。
ようこそ、移民国家ドソウ魔国へ。」
神父さんは顔を隠していて、赤い服に緑の模様の神官服を着ていた。
帽子が異様に大きく長い杖を持っていて、ゲームとかに出てくるような感じだ。
落ち着いた口調でどこか威厳がある感じだ。
「それで祈りに来ましたか?それともお布施しに来てくれましたか?」
「いえ、私達はクレイさんという肩を探しに来ました。」
「おやおや、それはそれは…‥。
クレイはボクです。
どのような御用でしょうか?」
この人がクレイさんか!
そう言えばネイビーさんが、顔を隠した人だって合致するなぁ。
「天空図書館のネイビーさんからの紹介で来たんですけど、街の案内をお願いしてほしいです。」
「ああ、あの頭でっかちの引きこもりさんですか。
いつもふざけやがりますねぇ。」
なんか互いによくない印象だなぁ。
向こうは『生臭坊主』呼ばわりだし。
私はネイビーさんからの紹介状をクレイさんに渡す。
「相変わらず無駄に達筆で読みづらいですねぇ……。
これだからトパーズ家は……。」
なんかバチバチだなぁ。
クレイさんが軽く紹介状に目を通す。
「……なるほど、謎の福音と呼ばれる罪人をお探しなのですねぇ。」
「ええ。そうなんです。」
「ふむ、では少し多い当たる所があります。」
あるんだ……。
「最近魔王城に勤めている近衛兵たちが話していたのですが、夜間に魔王城内の闘技場付近にて不審な人物を見たという話を、知り合いから聞きしましてねぇ。」
「魔王城の闘技場!?」
「あくまで噂の範疇ですが。
本来、人がいないところのはずなのに人の出入りが多いように感じるらしかったです。
不思議ですねぇ。」
確信はないけど多分これだろう。
お城っていうくらいだから、設計図にない秘密の部屋的なのがきっとあるはず。
「案内してください!」
「いいですよ。
ちょうど外に出てサボ……ではなく休息をとる必要があったので。」
一瞬本音が聞こえたが聞き間違いだろう。
「Skip out?Really?
神父様がサボってよろしいのデスカ?」
「お嬢様、彼はまじめではないようです。」
この声は……!?
教会の入口をみる。
立っていたのは2人。
クノレお嬢様と、ムケイ執事。
そう、私達に離れられない金魚モード制限時間、そして喧嘩不可能の呪いをかけた張本人たちだ。
「Hello!
お久しぶりデス。
本当はこのような場所で会いたくはなかったのデスガ、仕方ないデスネ。」
クノレお嬢様はため息を吐き、一歩前へ出る。
クレイさんも少しため息を吐き、一歩前へ出る。
「そのイントネーション。
エギレシア王国の方ですね。
その節はどうも。」
クレイさんの口から出たのはなんだか明らかに怒っている風な言葉だ。
「ええ、コチラコソ。
大変な被害が出たのではらわたがHOTな感じデスね。」
「お嬢様、『はらわたが煮えくり返る。』でございます。」
な、なんだか私達を挟んで明らかにバチバチな雰囲気を教会内でしてるんだけど……。
「なにがあったんですか?この状況……。」
「かつてエギレシア王国はドソウ魔国と戦争し、両国ともに大変な犠牲を出した過去がございます。」
「What?あれはアナタ方が侵略戦争を仕掛けたのが始まりデスヨ?
アナタ方のせいではありませんか?」
「もともとはと言えばエギレシア王国によって滅んだ国の住民が奴隷となり、ここへ移民してきた禍根が始まりですよ?
歴史の教科書も読めないのでしょうかぁ?」
「デハ、移民がどうこう言うなら北の植民地にしたあの島を返してもらいましょうカ!
あそこはエギレシアの領土デス!
Bad!アナタ方は地図を読めないのでしたネ!」
「やはりエギレシア人は苦手ですねぇ。
強情で。」
「ドソウ人はやはり細かすぎマスネ。」
なんか、国際的かつ暴動が起きそうな煽りあいをしてる……。
この国民達の関係ドロドロ過ぎない?
こういうものなの?
クノレお嬢様はがこちらをにらみ、背中からハンマーを取り出す。
「本当ハ、ここまでたどり着いたご褒美に2人の呪いを解除する予定デシタガ、気が変わりマシタ。
そこの神父を地面に埋めマス!」
「お嬢様、お供いたします。
福音の名のもとに埋まりなさい。」
「ボクは何も間違ったことは言ってないんですけどねぇ。
選民思想国は仕方がないようですねぇ。」
…………なんか私達そっちのけで、戦闘はじまろうとしているけど……なんでこうなるの……?
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