第十章幕間『裏で動くもの達』
全ての始まりは、彼女が目の前に現れたところからすべてが変わった。
その女子中学生は拳で全てを破壊し、それに助けられた。
竜をねじり、車を砕き、人口衛星に蹴りを加え、スライムを粉砕し、万物の生命を殺し、それでも好きという感情を貫く、彼女へ私は憧れた。
――正確には惚れたのだ。
歳に差があり、同い年の男の子が好きだといっている彼女を、身の程をわきまえず好きになった。
女性として愛してしまったのだ。
――今に思えばこの時はあまりにも浅はかで、『傲慢』だった。
凛々しい彼女の背中に見とれて生きてしまった。
手を伸ばしても、届かない無力感はあったがそれでもよかった。
おかげでその気高く凛とした姿を、忘れることができなくなった。
とてもいい思い出だ。
あれから大罪と戦い、色々なものを見てきた。
あと少しだ。
あと少しで願いが叶う。
無限の願望器、マル。
お前はよくよく考えれば、エイドスドアルームが出てくる前。
この世界を創造されたときから、すでに動いていたんだな。
全ての世界を変えるために。
利用されるのは忌々しいけど、こちらだって利用してやる。
この相互取引を利用して『有限の願望器』つまりは、アルゴニック、そしてその対であるあの魔神。
彼らさえも屈服してやる。
――さて、そろそろ約束の時だ。
ずっと待ってた時だ。
この3,4年間はまさに地獄みたいな苦痛だった。
ずっとあなたを待ってた。
あなたが何なのか、自分が何なのか知った時は耐え難い哀しさと慟哭でむせびかえりそうになった。
あなたがなぜあのタイミングでこの世界に現れたかを知った時は、あなたの前でむせび泣き、どれほど愛おしく苦しかったかをしっかり覚えている。
長かった。
だからこそやってやる。
マルを利用して、手に入れて見せる。
――ここからが正念場だ。
「見てるか?創造主?
これからお前と、これを見ているお前達の世界ごと覆すつもりで挑む。」
さぁ視点を変えようか、あまり今お前たちに見られたくない。
この世界はお前達、読者共に嘲笑される場所なんかじゃない。
忘れるな、こっちだってお前達を認識しているからな。
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マルの視点
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――全ての始まりは、これが書かれる十数年前。
イレギュラーが発生した。
数十、長くても数百年周期で発生してきたイレギュラーの中でも珍しく『日本』から現れたそいつは、私と世界のシステムであるニーイを認識した。
今まで何人かが認識してきた。
私は私を認識したこいつを見た、この時思った。
こいつらが生まれるのは何か再現性があるのではと。
そこからこの長い日々に終止符を打つための計略が始まったのだ。
私の今を変えるためのわずかな可能性を。
このクソみたいな不甲斐ない現実を変える方法を。
すべては『経由』させることが重要。
だからこいつを利用することにした。
――今が収穫時。
しかし私に視点をふらないでほしいわ。
本当にあの子が……。
まぁ、いい。私の論理は完璧だ。
ただめんどくさいのがちまちまと視点を繋げなければ、私達の存在認識を確立できないことだ。
仕方がないと言えば仕方がないか。
そういう法則だったはずだもの。
認識させ意欲し、欲し続けることが大切なこと。
――私の視点も強制終了する。
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作者の独り言
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……。
お前は?